福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2022年6月号 月報
手錠・腰縄PT 2021年度活動報告
月報記事
手錠・腰縄問題に関するPT 田上 雅之(69期)
1 はじめに
2020年10月、日弁連手錠・腰縄PT座長(田中俊弁護士)を講師にお招きした学習会を開催した後、当会の人権擁護委員会及び刑事弁護等委員会が共同で準備を進め、2021年8月、当会の手錠・腰縄PTが設置されました。当PTでは、勾留中の被疑者・被告人の個人の尊厳・人格権を保障すべく、刑事公判廷における入退廷の際、手錠・腰縄姿を傍聴人や訴訟関係人の目に晒さないように弁護人から裁判所に求めていくという運動を行っております。
2021年9月までは日弁連PTの雛形を当会MLで紹介して当会での申入活動をお願いしておりましたが、2021年10月からは当PTにおいて、当会独自の申入書雛形・申入結果報告書を作成し、当会HPに掲載するとともに、国選弁護人選任時の法テラスからのFAXにも案内文書を添付し始めました。
この度、会員の皆様から2022年3月末日までにご報告いただいた申入結果報告書を集約し、分析しておりますので、この場でご報告させていただきます。
2 申入件数・措置件数
(1) 日弁連雛形を用いてご報告のあった申入件数は合計6件で(2021年2月~9月)、そのうち、裁判所によって何らかの対応(措置)がなされたものが2件でした。
当PT独自の申入結果報告書作成後の2021年10月から2022年3月までの6か月間(2021年度下半期)にご報告のあった申入件数は15件で、そのうち、裁判官によって何らかの対応(措置)がとられたものが合計3件でした。
当PTの活動開始前6件から開始後15件に申入件数が倍増しており、申入活動が活性化している状況です。このうち2件は起訴前(勾留理由開示期日)における申入れであり、被疑者段階での活動としても行われています。
(2) 申入先は福岡地裁(支部を含む)16件、高裁5件であり、申入件数21件のうち会員の期別の内訳は、20期代が2件、41期から50期までが3件、51期から60期までが2件、61期から70期までが10件、71期から73期までが4件となっており、ベテランから若手まで幅広く申入活動に協力して頂いています。
3 対応(措置)が行われた事例(5件)の概要
(1) 実際に対応(措置)が行われた事例5件のうち、「傍聴人がいない法廷で解錠・施錠」が行われたものが3件、「裁判官が予定時刻より早く入廷し傍聴人の入廷前に法廷での解錠・施錠」が行われたものが1件、その他の対応として「裁判官から傍聴人の有無について確認」されたものが1件でした。
(2) 実際に対応(措置)が行われた事例の罪名は、暴行、覚醒剤取締法違反(自己使用)、恐喝未遂、大麻取締法違反(共同所持)、大麻取締法違反となっています。
(3) 「傍聴人がいない法廷で解錠・施錠」が行われた事案や裁判官自ら弁護人に傍聴人の有無を確認する連絡があることから、傍聴人に手錠腰縄姿を晒さないようにする申入れへの意義が裁判官にも理解されつつあることが窺えます。
4 終わりに
2022年度も弁護人から裁判所に対する積極的な手錠腰縄に関する申入れを行っていただき、是非当PTまで申入結果報告のご提出をお願い致します。今年度からは、Googleフォーム(URL https://forms.gle/KBpgnLbEytyeC4mi7)によるご報告も可能となりましたので、報告しやすい方法で随時ご報告ください。
運動の趣旨・目的、実際の活動例については、当会月報599号(2021年12月号)37頁から39頁において、当PT富永悠太委員が詳細に報告しておりますので、本記事と合わせて是非ご参照ください。今後も当PTの運動に皆様のご協力を賜りますようお願い致します。