福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2022年4月号 月報
トラブル多発! 安易な投資話に注意! 全国一斉投資被害110番(2月26日実施)のご報告
月報記事
消費者委員会 委員 内田 鴻二(73期)
1 実施概要
令和4年2月26日(7)10:00~16:00に「全国一斉投資被害110番」として、消費者委員会の有志が相談担当として、電話相談会を行いました。
特に、今回は、令和3年12月8日付、東京地方裁判所より、業務停止命令等が発令された、「SKYPREMIUM INTERNATIONAL PTE.LTD.(スカイプレミアムインターナショナル社)の被害相談に対応することを主な目的として行いました。
2 投資詐欺被害
スカイプレミアム投資詐欺被害とは、シンガポールに拠点を置く「SKY PREMIUM INTERNATIONAL」という会社が、日本国内で金融商品取引業の登録がないにもかかわらず、海外口座に送金をしたうえでFX取引を運用すると謳い、およそ2万2000人の投資家から1200億円を集めていた事案です。
昨年秋ごろから被害相談が増え始めたため、何らかの責任追及ができないかと考え、情報収集も兼ねて、電話相談会が実施されました。
3 実施結果
電話相談の結果としては、スカイプレミアムに関する被害相談が10件、その他の投資被害相談が8件と、事前の広報(毎日新聞と読売新聞への記事掲載)が功を奏したと結果となりました。相談者の所在は、福岡県内はもちろんのこと、沖縄や他県からの相談もありました。
4 110番で得られた情報
被害者の多くは、身近にいるエージェントと呼ばれる人物から、『元本が割れることはほとんどない』、『利回りは30%程度』、『大損はしない』などと勧誘を受け、投資を決断。海外の送金業者を通しての入金を指示され、運用を見守っていたところ、令和3年秋頃から出金が遅延しがちになり、現時点で全く出金ができない状態に至っているというものでした。被害者それぞれの投資額(被害金額)はおおよそ数十万円から2000万円と幅がありました。
エージェントとは、現時点でも連絡を取れていることが多く、エージェントの多くは、『我々も被害者だ』、『何を焦っているんですか、投資なんだから当たり前のことですよ!』と開き直っているとのことでした。
5 今後の対応方針
まず、エージェントに対する責任追及の可能性としては、金融商品取引法違反や不法行為を理由に損害賠償請求できないか検討されるところ、仲介役であるエージェントに責任が生じるか、どこまでスカイプレミアムと関与しているか、そもそも回収可能性があるか等がハードルになるのではないかと考えています。
次に、スカイプレミアム社に対して、金融商品取引法違反を理由に損害賠償請求できないかも検討されるところ、海外に拠点を置く会社であるため、全く実態が掴めていないことや国際法の問題も生じるため、こちらもなかなかハードルが高そうです。
送金業者に対する債務不履行責任も考えられるところ、被害者の多くが送金業者とどういった契約関係にあるかが判然としておらず、こちらもまだまだ情報不足の感が否めません。
6 まとめ
電話相談の中で、弁護士との個別相談を希望する被害者もいたため、担当者を決め、各々の事務所で個別相談にも応じました。
資料やエージェントの名刺、エージェントとのLINE履歴など、徐々にではありますが、有用な情報が集まってきている実感はあります。
被害に遭われた方の沈痛な面持ちを目の当たりにすると、何とか力になりたいと思う一方、すぐには動き出せない状況にあるため、弁護士として悩ましく感じました。ただ、弁護士会全体として、積極的に助言・対応をしていければ望ましいと思っています。今後も消費者被害に遭われた方の法的支援のために有益な情報提供に努めてまいります。