福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2021年8月号 月報

学校で弁護士が楽しく授業をする時代に 法教育・いじめ予防授業研修報告

月報記事

法教育委員会 委員長 本江 嘉将(59期)

1 はじめに

6月25日に法教育センター登録研修を兼ねた法教育・いじめ予防授業研修を開催しました。

2 研修の目的

法教育センターは、法教育の普及を図る目的で平成23年に設置、主に法教育を実施する講師のあっせんを業務として、法教育委員会の委員が主体となって運営されています。法教育センターでは、講師として派遣される担当弁護士・通称GT(ゲスト・ティーチャー)の名簿が作成され、毎年、名簿登載のために登録研修を行っています。

現在、GTの名簿登録者数は、今回の受講者22名含めて、福岡部会127名、北九州部会31名、筑後部会29名、筑豊部会8名、合計195名に達しています。

法教育委員会では、部会ごとにセンターの運営委員が学校からの申込みを受けると講師選定・打診をしています。年間100件前後のクラス数を対応していると、GT登録者数はまだまだ足りていません。

3 研修の内容
(1)研修の流れ
  • 委員長挨拶
    まず委員長の私からセンター設立の経緯・趣旨と併せて、法教育とは何かを簡単に説明しました。「法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につけるための教育」が法教育です。単なる知識教育ではなく、より良い社会を作るための紛争解決・予防に何が必要かを考え、自分や他者の権利や責任を理解する力を伸ばすことが求められます。その普及に弁護士が携わることは自然なことで、学校現場のニーズも高いです。
    ただ、近年のスマホ普及に伴い、実際の学校からの派遣要請の大半はネットトラブル防止の授業です。福岡県教育委員会の「保護者と学校児童生徒の規範意識育成事業」の一環として、県内各地から多数の申込みがあります。
  • DVDの視聴と授業内容の説明
    続いて、数年前に鍋島先生に担当していただいた「救急車の有料化」をテーマに主権者教育を取り扱った出前授業のDVDを視聴してもらい、実際の授業の模様を感じてもらい、続けて、鍋島先生からは、授業実施の流れや、注意点など実践の場で得た経験を語っていただきました。
  • いじめ予防授業の説明
    更に、森俊輔先生から、いじめ予防授業について、教材解説、授業実施の際の注意点を語っていただきました。重要なのは子どもに考えさせ、気づかせることだと改めて感じました。
  • 手続の流れ
    最後に、佐渡先生から、出前授業派遣の手続や学校との打合せなどの流れについて、フローチャートを踏まえた説明がありました。法教育センターでは、1クラス1名のGTが派遣され、リーガルアクセスセンターから報酬が支給されます。教材等は、アレンジされたものも含めて多くのストックがあり、今もストックが増え続けています。
(2)授業内容について

実際に弁護士がGTとして授業に出向くだけでも、学校現場では子どもたちにとって新鮮で刺激的な経験として喜ばれます。

法教育の出前授業は、さらに一歩進んで、生徒たちのアクティブラーニングを意識しています。双方向的な構成での授業(進行はプロである教諭に任せられます。)を盛り上げるため、冒頭のアイスブレーク(体を動かすゲームなど)で発言しやすい雰囲気を作るなど、充実した学びの時間にする工夫が大切です。

子どもたちには、正解がないテーマについて積極的に意見を出してもらい、主体的に取り組んでもらうことが重要です。そのためには、誰よりもGT自身が楽しんで授業をしていただくことが大事だと感じます。GTに選ばれた先生方が、普段の業務とは程遠いストレスフリーな空間で授業に臨んでいただくことは、多くの未来あふれる市民にとって、弁護士のポジティブな面を見るいい機会になるはず。引き続き、教材開発や授業方法の研究を通じ、GTの先生方をバックアップできるよう励んで参ります。

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