福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)
2021年1月号 月報
来たれ、リーガル女子! in福岡2020
月報記事
両性の平等に関する委員会 山之内 明(72期)
1 はじめに
令和2年11月15日、福岡県弁護士会館において「来たれ、リーガル女子!in福岡2020」が開催されましたのでご報告いたします。本イベントは、昨年までは内閣府・日弁連主催のものでしたが、本年は、当委員会が企画・立案し、日弁連、九弁連及び鹿児島大学司法政策教育研究センターと共催し、執り行いました。主に女子中高生(もちろん男子中高生も大歓迎!)を対象として、進路選択をする上で法曹三者という選択肢の幅を広げてもらうべく、女性の弁護士・裁判官・検察官それぞれの魅力を知ってもらうためのイベントです。
2 今年ならではのZOOM開催
本イベントの企画立案を開始したのは、7月頃でしたが、当初は例年通り福岡県弁護士会館に女子中高生を集めて対面でのイベント開催を予定しておりました。しかし、本年全世界で猛威を奮っている新型コロナウイルスの影響で泣く泣くZOOM開催に変更となりました。当会のイベントとしてZOOMでのイベント開催というのは初であり、当日の講師側の機材の準備設置、参加者へのミーティングルームのお知らせ方法、参加者の入室管理方法等々事前に整理をしておかなければならない事が山ほどありました。事前には、鹿児島大学の米田教授よりZOOMの操作方法をレクチャーしていただいたり、当日の入室管理をスムーズに行うために参加者にも協力していただき、リハーサルを2回行いました。そして、初のZOOM開催に若干の不安を抱きながらもイベント成功の期待を胸に当日を迎えました。
3 当日の様子
当日は、本イベントは今年で3回目の開催になるにもかかわらず、47名(生徒42名、保護者3名、教員2名)もの方が参加してくださいました。中にはリピーターの生徒も複数いらっしゃり、驚きと共に本イベントを毎年楽しみにしていただいている事を嬉しく思いました。オンラインということもあり福岡県内からだけでなく、鹿児島、大分、長崎、熊本、宮崎からの参加がありました。参加者は主に女子中高校生が多い印象でしたが、中には女子大学生や男子学生も参加しており、本イベントの関心の高さがうかがえました。
(1) 第一部~対談「弁護士になってよかった!」~
第一部の対談では、内田敬子弁護士より「弁護士になってよかった!」とのタイトルで、ご自身の経験を踏まえ、弁護士になって良かったと感じたときのことや、女性ならではの結婚・育児のこと、弁護士として働くことの魅力についてお話をしていただきました。まだ法曹の女性人口が少なかった頃に弁護士となり、幅広くご活躍されている内田弁護士のお話は、(私達女性弁護士はもちろん)女子中高生にとっても非常に興味を引くものだったと思います。自然体でいながら、努力を惜しまない生き方にこんな人になれたらと憧れを抱きました。内田弁護士、貴重なお話をありがとうございました。
(2) 第二部~法曹になるための進路説明会~
第二部の「法曹になるための進路説明会」では宇加治恭子弁護士より、法科大学院、(2020年度から法学部に新設された)法曹コース、司法試験、予備試験の仕組み等、法曹になるまでのプロセスの説明をしていただきました。また、弁護士と検察官・裁判官とのライフスタイルの違いについても説明していただき、参加者達は興味津々に耳を傾けていました。
(3) 第三部~グループセッション~
第三部のグループセッションでは、弁護士・裁判官グループを2組、弁護士・検察官グループを2組の計4組を作り、生徒達をそれぞれ5~8名にグループ分けした上で、自由に質疑応答を行いました。私は、そのうちの弁護士・検察官グループ(主に刑事事件)において、司会進行を務めさせていただきました。事前に生徒達から出ていた質問をもとに私の方から講師に質問をし、お話してもらうという形で進めていきました。オンラインという生徒達にとっては質問をし辛い環境であったにもかかわらず、「質問が浮かんだら随時チャットで質問を送ってください」と呼びかけると、次々と質問が飛んできて60分では足りないほど充実した時間を過ごすことができたと思います。生徒からは「生活の中でどのような事に着目すれば法律をより面白いと感じる事ができますか?」との質問が飛び出し、法律を学ぶ事への意欲と楽しみたいという姿勢に私自身も刺激を受けました。
4 おわりに
私は、法科大学院運営協力委員会の委員として、両性の平等に関する委員会のメンバーからなる本イベントの実行委員会に加えていただき、お手伝いさせていただきました。私にとって、本イベントに携わるのは初めてでしたので、右も左もわからない上、初のZOOM開催ということで不安もありましたが、実行委員の先生方がみなさん親切でフォローしていただいたので、私自身も楽しんで本イベントに参加することができました。本イベントに講師としてお越しいただいた先生方、検察官、裁判官、実行委員の先生方に改めて感謝申し上げます。目を輝かせて弁護士達のお話を聞く生徒達を見ることができ、オンライン開催とはなりましたが、本イベントを開催できてよかったと思いました。
今後も本イベントのような法曹人口の女性割合を拡大するためのイベントを開催し、女性弁護士(裁判官・検察官)の仕事の魅力を多くの人に知っていただくために尽力していきたいと思います。来年は本イベントをオンラインではなく対面で開催できることを祈ってます。
法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告
月報記事
法律相談センター運営委員会 委員長 池田 耕一郎(50期)
北九州部会法律相談センター運営委員会 委員長 田篭 亮博(60期)
筑後部会法律相談センター運営委員会 委員 田中 文(65期)
第1 はじめに
令和2年11月に、福岡、北九州、筑後の3会場で福岡県法律相談合同研修会が開催されました。同研修会は、自治体等の相談窓口担当者の法律知識や相談の技術・知識の習得を目指しています。
研修会を主催する「福岡県法律相談連絡協議会」は、1997年(平成9年)、福岡県弁護士会、福岡県、福岡市、各自治体、社会福祉協議会が呼びかけ人となり、設立されました。設立趣旨には、「各相談機関が連携を取りながら、より早く、より適切に助言し、問題の解決まで住民を導くことができるトータルなシステムづくりを行い、相談機関同志の相互協力によって一層充実した相談サービスを提供すること」とあります。その目的を達成するための重要な活動として、毎年、県内4地区において、研修会を開催しているものです。
以下、福岡、北九州、筑後の各研修会について報告します(筑豊地区については地元自治体の意見もふまえ本年度は開催を見送りました。)。
第2 福岡会場(池田)
1 概要
11月19日に福岡県弁護士会館(2階大ホール)にて福岡県法律相談合同研修会(福岡地区)が開催されました(司会進行:弓幸子業務事務局長)。
福岡地区では、日常の弁護士業務でDV被害相談に精通しておられる石本恵会員(福岡部会)に「DV被害者の法律相談を受ける際の工夫・留意点」と題して講演をお願いしました。当日は、DV被害の相談を受けることの多い相談窓口の担当職員をはじめ約40名にご出席いただきました。
2 講演の内容
講演の内容は、基本的な概念の整理から始まり、相談を受ける際の留意点、手続に関する説明に及ぶ実践的なものでした。石本会員の人柄を表すようなわかりやすく語りかけるようなお話ぶりに、参加された皆さんも、1時間半の講演の最後まで集中して聴講されていました。
まず、DVの代表的な類型(身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力、社会的暴力)と内容(具体例)の説明があり、その後、実際に相談を受ける際の留意点の教示がなされました。DV相談の場合、事案によって緊急性が異なり、緊急性の度合いによって対応が異なることを理解してもらいたいとの指摘がありました(緊急性が高い事案の場合は安全の確保が優先、緊急性が中程度の事案の場合は安全性の確保とともに今後の生活再建の準備、緊急性が低い事案の場合は今後の生活再建準備を中心に助言する。)。
ヒアリングすべき事項としては、(1)暴力の類型と内容、時期、頻度、原因、(2)家族構成、婚姻生活のライフイベント、(3)職歴、収入、生活費の支払状況、(4)財産、(5)相談者の意思(別居するか否か、離婚するか否か、その時期等)があげられました。留意点として、DV被害者は、被害を受けていることを第三者に申告しない(隠す)ことや、そもそも被害を受けているという自覚を持っていないことがあるので、事実と異なる説明がなされないよう配慮したり、暴力の類型と例を示して確認したりすることが有益であるとの指摘がありました。ある事実が発生した時期が思い出せない場合には婚姻生活のライフイベントと関連づけて質問することも有益であるとのお話があり、この点は通常の離婚事件の場合にも参考になる点でした。
その他、DV被害者のための法制度の概要(一時保護、警察との連携、保護命令申立て)、離婚に関する流れ(離婚協議、調停、訴訟)の説明とポイントが示されました。
会場からは、証拠の収集にあたって考慮すべき点について質問がなされ、石本会員からは、ご自身の経験に即した実効的な証拠収集方法について回答がなされました(たとえば、SNS関連の証拠については、相談を受ける側がデータとして受信して証拠化するのではなく、スマートフォンの画面を撮影して証拠化することが、より正確な記録となり得るなど)。
3 法律相談事業の現状に関する報告
石本会員の講演の後、法律相談センター運営委員会副委員長(福岡部会小委員会委員長)の井手上治隆会員より、主として福岡地区における法律相談事業の現状(特に新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急事態宣言発出以降の対応、豪雨災害への対応等)について報告があり、派遣相談先を中心とした行政機関等と弁護士会との連携の必要性について共通認識の重要性をあらためて申し上げました。
第3 北九州会場(田篭)
1 はじめに
11月12日、北九州のウェル戸畑にて法律相談合同研修会が開催され、平尾真吾会員(北九州部会)に「身寄りのない高齢者に対する支援」をテーマに、柴田裕之会員(北九州部会)に「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」をテーマに講演をして頂きました。今年は各役所から23名の方に参加いただきました。
2 「身寄りのない高齢者に対する支援」
平尾会員は成年後見について部会きってのエキスパートになりますが、手持ち成年後見事件が40件を超えていると聞き驚きました。平尾会員からは身寄りのない高齢者の問題として、(1)緊急連絡先の確保、(2)入院費・施設利用料の支払い(特に保証人の問題)、(3)医療同意の問題(特に意識不明の医療的な同意)、(4)死亡時の遺品引き取りや葬儀の問題について話をしていただきました。私は知りませんでしたが、この分野については「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」山梨大学・山縣教授の研究が参考になると紹介をされました。身寄りのない高齢者の場合、どうしたらよいか実務上困るケースが多いと思います。困った場合はまず、この山縣研究を見てみるとヒントがあるかもしれません。もっとも、まだ答えが定まっていない分野でもあるので平尾会員も手探りで対応しないといけないケースもあるということでした。また、平尾会員が経験された具体的な事例に基づいたケース紹介もされましたが、大変勉強になりました。
3 「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」
柴田会員は北九州部会の高齢者・障がい者の分野で中心的な役割を担ってくれています。柴田会員からは、刑事事件において知的障害がある方の累犯率・再犯率は高い、これまでの弁護活動では弁護士も知的障害があることに気づかずに福祉的支援につなげることができていないケースが多いとの話がありました。知的障がいがある方は、捜査官の言うことに迎合してしまったり、自分の言いたいことがうまく伝えられない、刑務所でも罪を償っているという認識がないなどの特性があるとのことでした。知的障がいがある方が再犯を繰り返さないよう私たち弁護人が気づくこと、そして、福祉職と協力して環境を整えることが大切だと学びました。また、実際のケースをもとに事例紹介もあり、研修を受けている方も興味をもって聞いていました。
4 アンケート結果も好評で有意義な研修になったのではないかと思っています。来年も新たなテーマで開催したいと思います。
第4 筑後会場(田中)
11月27日、筑後部会で開催しました法律相談合同研修会についてご報告します。コロナ対策のため、久留米シティプラザ大会議室という従来よりも広い会場を確保の上、受付で手指消毒・体温測定を行い、会議室の扉や窓は開放したままでの実施となりました。
第1部は白水由布子会員(筑後部会)に「DVにまつわる法的問題」というテーマでご講演いただき、第2部として参加者の方々と弁護士の意見交換の場を設けました。
まず第1部ですが、DVの定義にはじまり、DVの構造、つまり、力で相手の嫌がることをして相手がこれを避けるだろうことを見越して加害者にとって都合の良いことをさせるコントロールであることを押さえた上で、相談を受ける際の心構えについて説明がされました。DV事件は被害者の安全第一であることや、住所の秘匿に留意すること、被害者にとって相談しやすい雰囲気を作ること等に加え、「助けてあげるという気持ちにならない(助けてあげているというのは上下関係であって、対等な関係ではない)」「解決は本人の意思で(当事者ではないのだから代わって決めてあげることはできない)」という点には、参加者の多くがうなずいておられました。また、被害者の行動のタイミングを制限せず、なにごとも自分で決めていいんですよ、という場面を繰り返すことが重要である、という点については、被害者を再びエンパワーメントしていくことへつながると感じました。
続いて第2部の意見交換会ですが、最初こそ参加者の方々は遠慮されている様子でしたが、徐々に場が温まり、「(1)客観的にはDVを受けていると思われるが、相談する気のない人に対し何ができるか」「(2)成人男性がその父親から暴力を受けている場合どうしたらよいか」といった質問が次々と飛び出しました。まず(1)については、その気になったときに相談できる制度等についての情報はきちんと示し、機が熟すのを待つしかないのではないか、といった回答のほか、無理やり引き離した場合には元に戻ってしまうこともある、といった経験談も聞かれました。(2)については悩ましい質問でしたが、被害者が何を望んでいるのか、家を出られないのであればその理由はどこにあるのかを探りつつ必要な支援を具体化していくのが良いのではないか、という回答がされました。
そのほかにも多数の質問が出され(紙面の都合上、ほんの一部しかお伝え出来ないのが残念です)、盛況のうちに終了となりました。
第5 最後に
弁護士会にとって、各地域の自治体等の皆様と交流することは、市民への法的サービスの拡充に必須の協同作業と考えます。今後も、ニーズに応える充実した研修会を企画・実行するとともに、日常的な情報交換についても意識的に取り組んでいきたいと思います。
あさかぜ基金だより
月報記事
あさかぜ基金法律事務所 石井 智裕(72期)
福岡に来て1年たちました
あけましておめでとうございます。
私が福岡に転居し、あさかぜ基金法律事務所に入所してから1年がたちました。
新型コロナウイルスの影響で研修が行われる時期や方法が変わり、破産手続の進行が遅かったり、依頼者との打合せも電話やメールで行ったりと大変な1年でした。すでに修習や就職活動が終わっていてよかったと思っています(いま修習中の人、就活中の人ごめんなさい)。
福岡に来てよかったと思ったことは、大きい書店・図書館が近くにあることです。私の出身地では書店に行くには隣町まで行く必要があり、その本屋も小さく法律書は取り寄せなければなりませんでした。福岡に来て、歩いていける距離に大型書店があることに幸せを感じております。また、大きな図書館も近くにあり、個人で購入することが難しい全集なども読むことができ、頻繁に通っています。
福岡に転居して苦労したことは、言葉が違うことです。日本語では文末がとても大切なのに、福岡の言葉は語尾が地元である千葉の言葉と異なっていて、依頼者や共同受任の先輩弁護士の言葉がよくわからなかったことです。また、同じ言葉でも意味合いが少し違うと感じることがありました。
所員の入れ替わり
私があさかぜ基金法律事務所に入所したときは弁護士は6名いました。けれども、今は4名となりました。
昨年6月には小林弁護士が飛鸞ひまわり基金法律事務所(平戸)に赴任しました。小林弁護士は依頼者への対応が丁寧で、たくさんの依頼者から信頼を集めていました。私も早くそうなれるように心がけています。
昨年12月には西原弁護士が壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任しました。私は入所して以来、西原先生の隣の席に座って執務をしていましたので、疑問点があると西原弁護士とよく相談して事件を進めていました。この原稿を書いているときは、まだ西原弁護士が退所してから間がないので、なかなか西原弁護士がいないという実感がわいてきません。
そのうえ、あさかぜ基金法律事務所に長く勤めていた事務員さんが辞め、事務員さんが入れ替わりました。事務所の機材が不調になっても、どこに問い合わせてよいのかわからなくなったりと、事務員さんの存在の重要性をあらためて感じました。
今月からは新しい弁護士があさかぜ基金法律事務所に加わる予定で、いま原稿を書いているときは、新しく入ってくる所員が使うロッカーを空けるため、過去の弁護士の事件記録をロッカーから出し、別の場所に移動させたり、法人登記の仕方の説明書をつくったりしています。次回のあさかぜ基金だよりは新しく加入する弁護士の自己紹介の予定となっています。ご期待ください。
今年の抱負
気がつくとすでにあさかぜ基金法律事務所で養成を受けられる期間が半分も過ぎてしまっています。
いまだに事件の処理に悩み、先輩に相談しつつ事件を進めているので、あと1年たったとき、本当に弁護士過疎地にて一人で事務所の運営ができるか不安ではあります。
けれども、日々の積み重ねでしか成長はできないのですから、日々の業務から少しでも多く学べるよう努めていくつもりです。
本年も引き続きのご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。