福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2020年9月号 月報
あさかぜ基金だより ~あさかぜ基金法律事務所のご紹介~
月報記事
弁護士法人あさかぜ基金法律事務所
社員弁護士 田中 秀憲(69期)
私が所属する弁護士法人あさかぜ基金法律事務所について、あさかぜが都市型公設事務所であり、所属弁護士は養成を受けた後、弁護士過疎地に赴任することは知られていると思いますが、あさかぜがどのように運営されているのか現況を紹介させていただきます。
あさかぜについて
あさかぜは現在、弁護士5人と事務局2人の7人体制です。入所後は、およそ2年間の養成を受けたあと、九弁連管内の弁護士過疎地に赴任しています。弁護士は司法修習を終えて間もない者のみで構成されていて、いわゆるボス弁はいません。あさかぜの弁護士はみな、弁護士が少ない地域で困っている人の手助けをしたいとの志を持って入所しました。同じ志を持った弁護士同士、切磋琢磨しながら良い刺激を受けつつ弁護士活動に励んでいます。
事件の受任経緯の主なものとして、法律相談、当会の執行部経験者を中心に構成されているあさかぜ応援団の弁護士や指導担当弁護士との共同受任、これらの弁護士からの事件紹介が挙げられます。法律相談経由での受任は、当会での法律相談からの受任もありますが、法テラスの法律相談からの受任が多いように思います。
あさかぜでの養成について
あさかぜの弁護士は、当会所属の弁護士複数に指導担当としてついてもらい、事件を共同受任させてもらうなどして、指導を受けています。また、指導担当以外の弁護士と共同受任させてもらう機会もあります。事件の共同受任により指導してくださる弁護士は経験豊富であり、委任契約の仕方や事件の進め方まで、幅広く学ばせてもらえます。仕事のやり方は共同受任させてもらう弁護士ごとに千差万別であり、いろいろな方法を学べるという点でとても勉強になります。私が共同受任しているある事件では、所与の事実から法律構成を検討する際に、私が全く考えが及んでいなかった法律構成を指摘され、目が開かれる思いをしたことが強く印象に残っています。
また、さまざまな法律事務所の弁護士と共同受任させてもらうおかげで、あさかぜで取り扱う事件の種類も多種多様です。弁護士過疎地では、弁護士の数が少ないため、赴任した弁護士はあらゆる種類の事件の解決を担うことになることから、養成期間中に多種多様な事件を受任することは貴重な経験となります。
あさかぜの弁護士は事務所運営にも取り組んでいます。とはいえ、司法修習を終えたばかりの若手弁護士だけで構成されている事務所ですので、あさかぜの弁護士のみで事務所運営をすることは困難です。そこで、あさかぜでは、当会のあさかぜ基金法律事務所運営委員会と九弁連のあさかぜ基金管理委員会から指導を受けながら運営に取り組んでいます。
事務所運営と一口で言っても、検討しなければならないことはたくさんあります。毎月のキャッシュフローデータにもとづいて事務所の資金繰りやどのような営業をすれば売り上げが増やせるのかなどを考えたり、広報活動、新人弁護士・事務員の採用活動、事務員の労務管理など、いろんなことについて両委員会の指導を受けています。あさかぜでの養成期間中に、このような指導を受けられることは、将来的には弁護士過疎地に赴任し、経営者として事務所を運営していかなければならない私たちにとって、今後の弁護士人生の中でも得難い経験です。
これからもよろしくお願いします
当会会員、九弁連管内の会員の皆様をはじめとするたくさんの方々が、あさかぜで養成を受けた弁護士が弁護士過疎地に赴任して、あまねくリーガルサービスを提供することで法の支配に貢献し、ひいては国民の権利擁護を図ることを期待してくださっているものと考えます。このような期待に応えられるよう、あさかぜで引き続きしっかりと研鑽に励みます。