福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2020年8月号 月報
紛争解決センターだより コロナ対応(災害)ADRのご案内
月報記事
紛争解決センター運営委員会
委員 松村 達紀(65期)
1 コロナ対応(災害)ADRを立ち上げました
本原稿執筆時点(7月14日)においては、東京での新型コロナウイルス感染者が連日200名を超える旨の報道がなされており、いわゆる第2波が懸念されるところです。
そのような中、当センターは、令和2年6月8日、新型コロナウイルス感染拡大に関連する法的紛争解決のために「コロナ対応(災害)ADR」を立ち上げました。
災害ADRは、東日本大震災や熊本地震の際にも立ち上げられ、紛争当事者の方々の法律問題の解決に大きく貢献している制度です。
なお、コロナ対応(災害)ADRについては、既に申立てを受け付けた事案もございます。
2 コロナ対応(災害)ADRの内容
(1) 対象事件
新型コロナウイルス感染拡大に関連する民事紛争であれば、何でも申し立ていただいて構いません。
事業者の方であれば、
- 休業に伴い従業員の給与の取扱いに関してトラブルになっている
- 売上の減少や休業期間の長期化に伴いテナント家賃の減免を求めたい
- イベントが中止になったため主催者に損失補償を求めたい
消費者・労働者等の方であれば、
- 会社の休業や業績不振に伴い雇止めをされたり給与をカットされた
- 旅行や結婚式の取りやめに伴い多額のキャンセル料の支払いを求められている
といった紛争があり得ると想定しております。
特にこれらの紛争に関しては、裁判所における訴訟をするにはコストが合わない、時間がかかるといった面が見られると思いますので、積極的に弁護士会のADRの活用をご検討ください。
(2) 申立て方法
一般のADRでは、法律相談を受けた民事事件について、申立書や証拠の書類等を添えて申立てをしてもらっていますが、コロナ対応(災害)ADRでは、法律相談を受けていない事件も受け付けます。
また、申立てが簡単にできるよう、広報チラシの裏面にある申込書に必要事項を記入して頂いて、天神弁護士センターに郵送またはファックスしていただくか、申込書の郵送やファックスが出来ない方は、電話やメールによって申込みをしていただければ、後日担当弁護士が申立てをサポートするという制度もあります。
(3) 費用
申立て費用は、無料です。
紛争が解決した場合には、原則として、チラシ記載の基準に従い、成立手数料を当事者で折半にて負担いただきますが、事案によっては、成立手数料を減免することもあります。
3 最後に
現在、政府主導の政策により、事業者に対する積極的な融資、資金援助等が図られていますが、想定以上に新型コロナウイルスの影響は長期化しそうであり、今後、ますます法律問題が顕在化してくるのではないかと懸念されます。
また、現状、裁判所の期日も入りにくい状況が続いていますので、紛争の迅速な解決という観点からは、弁護士会のADRが果たすことのできる役割も大きいと考えております。
先生方におかれましては、法律相談に来られた当事者の方に、ぜひ、紛争解決のための選択肢の一つとして、コロナ対応(災害)ADRをご案内いただければと思います。