福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2020年2月号 月報
全県で利用可能な触法障がい者刑事弁護支援スキーム(福岡県立ち直りサポートセンター)モデル事業が始まりました
月報記事
触法障がい者支援ワーキンググループ委員 石井 謙一(59期)
1 はじめに
2019年(令和元年)9月から、福岡県が「福岡県立ち直りサポートセンター」(以下「サポートセンター」といいます。)事業を開始しました。
これまでは、被疑者・被告人に障がいがある場合の刑事弁護活動において福祉的支援を受けるための制度は、当該被疑者・被告人が希望する帰住先が福岡市か北九州市の場合にしか利用できませんでした。
しかし、サポートセンターの事業開始により、希望帰住先が福岡県内であれば、市町村による制限を受けることなく福祉的支援を利用できるようになりました。
2 被疑者・被告人に障がい等がある場合の刑事弁護活動とは
刑事弁護事件の中には、被疑者・被告人に障がい等があるために社会内での生きづらさを抱え、犯罪に及んでしまったと考えられる事案もあります。このような被疑者・被告人については、福祉的支援につなげることで生活環境や生きづらさが改善されることが期待できる場合もあります。
そこで、そのような場合には、福祉職の方と連携することで、被疑者との接見に同行してもらい、障がいの特性や必要な支援の内容についてアドバイスを受けたり、場合によっては受入先施設の選定に協力してもらうことができます。また、検察官や裁判所に働きかけを行う際の資料とするために、上記活動の成果を「更生支援計画」としてまとめて頂き、今後の支援について法廷で証言してもらうことができる場合もあります。
3 これまでのスキーム
そこで当会では、北九州市及び福岡市の基幹相談支援センターと連携し、当該地域への帰住を希望している被疑者については、福祉職と弁護人をつなぐためのスキームを運用しています。
このスキームの利用方法については同じく会員専用ページの「書式・資料」からダウンロードすることができる当番弁護士・当番付添人 被疑者・被告人国選 Q&Aをご参照下さい。
4 全県下で、障がいに限らず、福祉的支援を得られます!
上記のように、これまでのスキームでは、被疑者・被告人の希望帰住先が北九州市または福岡市でなければ利用することができませんでした。また、福祉的支援の対象は、障がいを持つ方に限られ、しかも福岡市の場合には、療育手帳等が必要でした。
しかし、サポートセンターの運用が開始したことにより、福岡県内であれば帰住先が北九州市または福岡市でなくとも福祉的支援を受けることができるようになりました。
また、県の事業は、障がいに関する手帳を取得していることが要件とはされていません。さらに、障がい者だけでなく、高齢者、住居不定の方、依存症の方も対象となります。
5 サポートセンター利用のための手続
サポートセンター利用の流れは、後掲「福岡県立ち直りサポートセンターの利用の流れ」をご参照下さい。
会員専用ページの書式及び資料→刑事事件・精神保健関連→触法障がい者等支援」から申込書をダウンロードして必要事項を記入し、各所属部会事務局宛てファクスして頂ければ利用することができます。
6 注意点等
サポートセンターご利用にあたっては、上記申込書と同じところにアップされている案内とフローチャートをよく読み、利用の際の条件や注意点をご理解の上お申し込み下さい。
なお、特にご注意頂きたい点は以下のとおりです。
(1) サポートセンターは令和3年3月までのモデル事業です。
そのため、令和3年3月を過ぎると、正式な事業として開始するか、モデル事業として継続されない限り利用ができなくなります。
また、予算も非常に限られているため、場合によってはお申込み頂いてもサポートセンターが支援を断る場合もあり得ます。
(2) 申し込み後に被疑者・被告人の同意書の提出が求められます。
(3) 上記のように、サポートセンターの予算が限られているため、既存の北九州市または福岡市のスキームが利用できる場合には、そちらを優先してお申し込み下さい(後掲フローチャート参照)。
7 おわりに
各会員におかれては、サポートセンターの事業をご活用頂き、今後も障がいのある被疑者・被告人の刑事弁護活動をより一層充実して頂きますようお願い致します。