福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2019年10月号 月報

福岡銀行産業金融部「事例に基づいたM&Aセミナー」

月報記事

会員 原 隆(68期)

1 福岡銀行産業金融部「事例に基づいたM&Aセミナー」の開催について

中小企業法律支援センターは、福岡銀行の方に以前海外進出に関する講演をお願いした経緯がありますが、今回は産業金融部ファイナンシャルアドバイザリーグループ部長代理の武重太郎様に令和元年9月4日(水)17時から「事例に基づいたM&Aセミナー」と題してM&Aセミナーに関する銀行実務についてご講演頂きました。

2 M&Aについて
(1) マーケット動向

全国のM&A件数は増加の一途たどり、平成26年には合計で1400件だったのが平成30年には2180件に大幅に増加しています。また、九州においても平成26年には買い56件、売り80件であったのが、平成30年には買い84件、売り108件に増え、増加基調にあります。

(2) M&Aの流れ・企業価値算定について

M&Aの一般的な流れとしては、スキーム等の条件検討、アドバイザー契約締結、価格分析、譲渡先選定、アプローチ・交渉、意向表明・基本合意、買収監査・条件調整、最終契約締結、クロージング、引継ぎ経営統合という流れを経ます。

買収価格決定のための企業価値算定手法としてはインカムアプローチ(DCF法・収益力をベースに評価する方法)、マーケットアプローチ(株価倍率法・市場価格をベースに評価する方法)、コストアプローチ(修正純資産法・純資産をベースに評価する方法)が検討され、最も適切と思われるアプローチを選択あるいは組み合わせることにより評価を行うことが一般的です。

(3) 買い側の人気業種について

全体として、現在のM&A市場においては売りを希望する側よりも買いを希望する側の方が大幅に多いようですが 特に買い手が多い(売り手が少ない)市場としては、ソフトウェア開発・IT関連、ビルメンテナンス・マンション管理、調剤薬局・ドラッグストア、人材派遣、業務請負等があるようです。また、他にも買い手候補が多い業種としては飲食チェーン、食品スーパー、医療関連、介護関連、学習塾・専門学校、通信販売、Eコマース、物流・運送会社、健康食品・化粧品関連、建設業、ホテル業等があり具体的なシナジーが出やすい業種の買いM&Aニーズが多いようです。

(4) 売り側の主な売却理由について

売り手が事業を売却したいと考える理由には、①後継者不在企業型(後継者が不在で外部売却を検討)、②ハッピーリタイア型(株式譲渡で多額のキャッシュを得る)、③カーブアウト型(グループ関連会社の売却。選択と集中を実施し、経営資源を割り振る)、④オーナー経営の限界(資本面、技術面、商圏などを理由に自力での成長に限界を感じており、大手グループ傘下入やファンドによる経営参画を検討)、⑤アライアンス型(業界先行きが不透明な中、単独での事業運営について不安を感じている。売却まではいかないが、他社と資本業務提携を検討)、等に分類できるようです。

3 おわりに

ここではご紹介が難しいのですが、当日の講演では、福岡銀行で実際に扱った11件のM&A案件について具体的な背景事情、苦労した点、後日談等を詳細に生々しくご紹介頂き、聴講者にとって非常にわかりやすい形でご説明いただきました。

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