福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2019年10月号 月報
弁護士と商工会職員との勉強会
月報記事
会員 寺尾 功(71期)
1 勉強会の開催
令和元年8月23日、福岡県商工会連合会研修室にて、「事業承継の相談で何を聞いたらいいの?」というテーマで弁護士と商工会職員との勉強会を開催しました。勉強会では、弁護士を代表して舛谷隆輔先生が講師として事業承継の相談を受ける際に留意すべき事項等を講演されました。
2 事業承継とは
本講演は、そもそも事業承継とは何か、というところから遡って始まりました。以下、本講演の内容を箇条書きにて要約してお伝え致します。
(1) 「事業承継」、「事業承継対策」とは何か
事業承継とは、「経営(社長のイス)と所有(自社株)の承継」である。
(2) 事業承継の必要性
事業承継対策をしていないと、①後継者や相続人の間で内紛が起こる可能性、②取引先や銀行からの信用が失墜する可能性、③会社の資金繰りへの影響がでる可能性、④後継者に大きな負担を与える、などのリスクが生じる。
(3) 事業承継で検討すべきこと
事業承継にあたっては、①経営権を渡す相手と渡す時期、②後継者の育成、③関係者の理解、④経営体制の構築、⑤株主構成の検討、⑥自社株を後継者に渡す方法など検討しなければならないことが多岐にわたる。
(4) 事業承継の相談で行うべきこと
事業承継の相談では、まず、経営者に事業承継の話を切り出していいのか確認する必要がある。経営者によっては、事業承継の話はイコール自身の引退の話であると肝に銘じ、言葉遣いに慎重にならなければならない。
次に、事業承継の必要性を認識してもらう必要がある。経営者の中には、自分はまだ現役でやれるので事業承継など必要ないと感じている方も多く、弁護士として、そのような経営者に対し、事業承継が経営者の引退を意味するものではないことや事業承継には長期間を要することなどを説明し、その必要性を認識してもらう必要がある。
また、相談に臨む側としては、経営者の話を聞くことも重要である。
(5) 経営者のあるある発言とその対応
その他、勉強会では、①「事業承継はまだ早い」、②「まだまだやりたいことがたくさんあって引退なんて考えられない」、③「事業承継は顧問税理士に頼んでいる」、④親族でない役員に継がせるから大丈夫」、⑤「潔く辞める(会社をたたむ)つもりだよ」、といった発言が経営者からあった場合の対応について、弁護士と商工会職員とディスカッションを行い、議論しました。
3 勉強会後の懇親会
勉強会後には懇親会を開催しました。商工会職員の方は気さくな方が多く、懇親会も勉強会以上に盛り上がり、会の終盤では、今後、弁護士会と商工会がどのように連携していけるかなどについても議論がされていました。
4 おわりに
この勉強会も今年で10年目を迎えるとのことで、当センターとしては、今後とも、商工会及びその他の各連携先との関係を深めつつ、会員の皆様に有益な情報提供を行うことができるよう、活動を続けてまいりたいと考えております。