福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2019年7月号 月報

養育費・ひとり親110番 ―本年度から毎月開催になりました

月報記事

会員 井澤 わかな(71期)


去る5月15日13時~16時、第2回「養育費・ひとり親110番」が開催されました。

福岡県ひとり親サポートセンターと福岡県弁護士会の協定に基づき、平成30年度に始まった「養育費110番」ですが、本年度から毎月開催へとバージョンアップされ、電話3台、弁護士3名体勢で対応しています。

昨年度から前回まで全て土曜日開催だったのですが、今回は初の試みで平日の昼間に開催ということで、福岡県の担当課長が「件数が伸びるか心配」と語る中でのスタートでした。

TVQの取材

5月10日に民事執行法の改正があり、利用実績が低調だった財産開示手続に関して「第三者からの情報取得手続」という制度が新設されました。これは、裁判所から、金融機関・市町村・日本年金機構等に照会をして、預貯金債権や給与債権(勤務先)に関する情報が取得されるというものです。

離婚後相手との連絡が途絶え、預貯金口座が変えられていたり、転職で勤務先が分からなくなったりして、養育費の不払いに対する強制執行を諦めていたひとり親にとって光明となることが期待される制度改正ということで、メディアの関心も高く、急遽「養育費・ひとり親110番」にもTVQの取材が入りました。

ひとり親サポートセンターのポスターなども掲示、リポーターやカメラマンの方も合流と、俄然にぎやかな雰囲気の相談室となりました。

相談結果の集計

この日の相談件数は、11件でした。

相談者のお住まいの地域も県内各所、年代もばらばら、属性も離婚前、離婚後、未婚と、あらゆる点で幅広い層からのご相談でした。養育費・ひとり親110番を知ったルートも、福岡県ひとり親サポートセンター経由の方から市報で知った方まで、様々な媒体での広報効果が出ているようです。

今回のご相談内容(複数回答あり)は、

  • 離婚問題
    親権 1件
    養育費の取り決め方法 5件
    養育費の金額 4件
  • 離婚後の問題
    養育費の金額 1件
    養育費の不払い 2件
  • その他
    未婚・認知なし 2件
    不貞や財産分与 1件
    面会交流 1件
    DV 1件

など、養育費単体のテーマから、ひとり親が抱える様々なトラブルまで、ご相談内容の幅も広くなってきているように感じます。

相談担当をやってみて

今回は、未婚・認知なしのご相談が2件あったことが印象的でした。電話の合間、福岡県の担当課長と担当者間の雑談で、未婚での妊娠・出産においては特に、認知請求にしても養育費請求にしても、相手の住所特定・調査に繋がる情報を入手しておくことが不可欠という点から、女子高生/女子大生等にそういう視点での啓蒙も必要ではないかというような話が出ました。

確かに、相手が偽名や経歴詐称であったというご相談は私も受けたことがありますが、リアルな社会生活をよく知らない、SNSやLINEといった手段でしか繋がっていない相手に対する認知/養育費請求という、時代を反映したトラブルは今後も増加が予想されるので、必要な啓蒙だろうと感じます。

また、私は、今回相談担当をやるまで知らなかったのですが、福岡市・北九州市・久留米市以外の方で更なる相談が必要な方については、県内の福岡県弁護士会の法律相談センターで60分の無料面談相談が受けられるクーポン(通称:養育費クーポン)の配布をひとり親サポートセンターから受けられます。ひとり親世帯の所得向上につながる心強い取り組みだと思います。

今回の110番でも、開始時刻からすぐにお一人目の方の電話が鳴り、3台埋まるのも早かったですし、終了までコンスタントに電話が入りました。養育費やその他ひとり親の方が抱える問題の相談需要の多さを体感すると共に、毎月養育費・ひとり親110番が開催されることで支援が行われていることへの認知度も上がり、養育費等の問題解決をあきらめている方の救済に繋がっていくと感じています。

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