福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2018年10月号 月報
養育費110番、スタートしました!
月報記事
両性の平等に関する委員会 委員長 山崎 あづさ(54期)
8月25日(土)、福岡県による「養育費110番」の第1回が行われました。当日の様子と、この新たな取り組みの内容をあわせて、ご報告いたします。
養育費の受給率向上への取り組み
ひとり親世帯の親子の生活を支える上で、養育費の経済的な支払いはとても重要です。しかし、離婚の際に言い出せなかった、金額を決めたのにその後一切貰えていない、あるいは数か月や数年で支払われなくなったなど、様々な経緯で養育費を受け取れていないケースは多々見られます。
平成28年度福岡県ひとり親世帯当実態調査によると、ひとり親(母子世帯)の平均年収は約240万円、離婚の際に養育費の取り決めをしている割合は44%、実際に養育費を受給している割合は約24%にとどまっているといいます。
こうした、ひとり親世帯が抱える養育費に関する問題などの解決を図るため、福岡県と福岡県弁護士会は、今年、2つのサービスについて協定を締結しました。
それが、「養育費110番」(弁護士による無料電話相談の開催)と、「養育費クーポン無料相談」(福岡県ひとり親サポートセンターが発行するクーポンを利用して県内17カ所にある福岡県弁護士会の法律相談センターで、60分の無料面談相談を受けられるサービス)です。
特に「養育費110番」は、ひとり親世帯の所得向上を図るための新たな事業であり、全国的にも珍しい取り組みだということです。
110番当日・・・次々と電話が!
その第1回が、8月25日(土)に行われました。
午前10時から午後4時まで、福岡県弁護士会館にて、電話4台、弁護士8名(午前・午後各4名)という体制で待機しました。
事前に新聞各紙や自治体の広報誌等で告知されていたためか、午前10時に電話回線をつないだ途端、次々と電話が鳴り、あっという間に4台とも埋まりました。相談を終えて受話器を置いたら、すぐにまた電話が・・・!時間帯にもよりますが、その後もほぼ途切れることなく電話が鳴りました。
相談の内容は、やはりご自身の抱えておられる問題についてのものが多く、事案を聞き取って、法的なアドバイスをして・・・と、通常の法律相談に近い対応が必要でした。さらに弁護士による支援が必要だと判断されるケースについては、福岡県の無料相談クーポンの対象地域にお住まいの方であれば、クーポンの利用を案内しました。
相談結果の集計
この日の相談件数は、全部で32件でした。
相談者は20歳代から70歳代まで幅広く、「娘の件です」といって電話をかけてこられている方も数名いました。お住まいの地域も、福岡市をはじめ、久留米市、筑紫野市、宗像市、八女市、行橋市など、県内全域に及んでいました。
相談内容の集計結果は、以下のとおりでした。(複数回答あり)
- 離婚問題 全般 2件
養育費の取り決め方法 4件
養育費の金額 4件 - 離婚後の問題 全般 1件
養育費の不払い 16件
養育費の金額 3件
養育費の取り決め方法 4件
その他 1件(支払いが遅れ気味) - 未婚の場合の養育費 1件
これを見ると、養育費の不払いの相談が突出して多いことがわかります。やはり、養育費の不払いが深刻な状況にあるのだと実感しました。
今後の開催について
今回、初めて開催した「養育費110番」でしたが、予想を超える電話の件数でした。また、内容も、どれも切実なものでした。後日、県の担当の方から、「本当にこの事業を実施してよかった」との言葉をいただきました。
「養育費110番」は、今年10月27日(土)と来年2月にも実施することが決まっています。また、少なくとも3年間は継続して実施する予定だということです。
ということは、それだけのメンバーを確保していかなければならないわけで・・・今後、110番の相談担当にご協力いただける弁護士の名簿を作成することを考えています。
みなさま、ぜひご協力をよろしくお願いいたします!