福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2018年8月号 月報

あさかぜ基金だより 都市型公設あさかぜに注目してください

月報記事

会員 小林 洋介(70期)

都市型公設事務所

あさかぜ基金法律事務所は、九弁連が設置した都市型公設事務所です。都市型公設事務所は全国に十数カ所設けられており、事務所毎に色々な特色を持っています。あさかぜは、弁護士過疎地域へ派遣する弁護士の養成に特化した事務所ですが、刑事事件とりわけ裁判員裁判に力を注いでいる事務所(北千住パブリックなど)や成年後見業務を数多く行っている事務所(岡山パブリック)もあります。また、「市民の駆け込み寺」として、都市部における司法アクセスの拡充を行うことを設立理念として掲げる公設事務所もあります。

あさかぜの受任事件

あさかぜは、公設事務所であるという性質上、顧問契約を締結することはできないので、依頼者は無料法律相談の相談者が大半です。扱う事件は、いわゆる「マチ弁」が取り扱うものとなりますが、その中でも、債務整理や離婚、遺産分割、成年後見申立などの家事事件、刑事国選事件が多くを占めます。

もっとも、あさかぜは弁護士過疎地域への弁護士派遣を目的とした養成事務所であるため、養成期間の2年ほどの間に幅広い事件を経験できるような体制が用意されています。具体的には、福岡県弁護士会所属の先生方(あさかぜ応援団)から事件の紹介を受けて共同受任したり、県外の先生方やあさかぜ出身の先生から事件の紹介を受けたりしています。共同受任事件・紹介事件では、建物明渡請求、交通事故、労働、消費者、強制執行、刑事告訴などを受任することができ、事件の種類はバラエティに富んでいます。このようにして、私たち所員は、養成期間中に数多くの類型の事件を受任し、来るべき弁護士過疎地域への赴任に向けて研鑽を積んでいます。

事務所会議

あさかぜでは、毎月1回、九弁連の管理委員会と福岡県弁の運営委員会の先生方を交えた会議を開催しています。この会議では、事務所の毎月の経営状況、紹介事件や共同受任事件の進捗状況、公設事務所をめぐる日弁連や九弁連での議論状況について報告がなされたりします。

私は、所員の中で最も期が若いので、議事録作成を担当しています。会議中は、ひたすら議論に耳を傾けつつ、漏れがないようメモを取り、それを基にパソコンで議事録を作成します。入所し立てのころは、そもそも会議でのやり取りが理解できず、メモを取るのも一苦労でしたが、最近は、議論の内容を理解することができるようになり、議事録作成もずいぶん速くなりました。

事務所の運営

あさかぜでは、事務所運営に関連する業務が色々あります。私が入所して最初にしたのは、弁護士法人の変更登記でした。弁護士法人であるあさかぜは、所員の交代があると変更登記をしなければなりません。私は、過去の申請書類を参照したり、法務局へ問い合わせたりしながら、登記の申請を行いました。

また、あさかぜでは、最も期の若い弁護士が修習生の採用担当者となり、新規登録弁護士の採用活動を行います。私は、ひまわりナビへの求人情報の掲載や、ロースクールへの採用案内の送付を行ったほか、あさかぜの仕組みや業務のイメージが伝わりやすいように採用案内の改訂を行いました。採用案内はあさかぜのホームページからも見ることができるので、ぜひ見てください。

そのほかにも、事務局の就業規則の作成など、労務管理についても、所員が担当する必要があります。

さいごに

近年、弁護士の就職状況が大幅に好転したこともあってか、全国的に公設事務所や法テラスへの新規登録弁護士の応募が減っているということです。私としては、公益弁護士への関心が薄れてきていることに危機感も感じます。

現在、弁護士会の活動の成果によってゼロワン地域は解消され、弁護士過疎問題はいったん解決したといわれていますが、地域によっては、利益相反などの問題から弁護士が定着することが困難な事務所もあり、たとえば壱岐・対馬のような事務所には定期的に弁護士を派遣する必要があります。

また、弁護士数がゼロではないものの、女性弁護士がゼロの地域が多数あります。離婚問題、DV問題などでは、男性に対して恐怖心をもっていて、女性弁護士にしか相談することができない人が少なくないのですが、女性弁護士がゼロであれば、法律相談のハードルが高くなってしまいます。このような事態を避けるため、女性弁護士ゼロの地域を少なくすることはとても大切なことです。

あさかぜ所員として、過疎地域における弁護士の存在意義とその重要性について、一人でも多くの人に関心を持ってもらえたら嬉しく思います。

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