福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2018年6月号 月報
あさかぜ基金だより~壱岐ひまわり基金法律事務所に行ってきました!
月報記事
あさかぜ基金法律事務所 弁護士 古賀 祥多(69期)
あさかぜ所員の古賀です。4月20日、壱岐ひまわり基金法律事務所に事務所見学に行ってきました。
壱岐ひまわり基金法律事務所とは
壱岐ひまわりのある長崎県壱岐市は、福岡市から北東80キロメートルに位置する壱岐島と周辺の4つの有人島、19の無人島で構成された人口約2万7000人の市です。
壱岐では、平成18年10月に法テラス壱岐法律事務所が設置されましたが、1つの法律事務所があるだけでは、弁護士が当事者双方の代理人となることができないため、相手方となった人は島外で弁護士に依頼するほかない状況でした。平成22年1月29日に、壱岐ひまわり基金法律事務所が開所したことから、必要があれば、いずれの当事者も、いつでも島内の弁護士に依頼することができるようになりました。
このように、離島における法テラス7号事務所、ひまわり基金法律事務所は、地域のリーガルサービスの拠点と位置づけられています。
壱岐への上陸
この度、私は、ひまわり基金法律事務所への赴任に先立ち、同事務所のことをより深く知るため、事務所見学に行くこととしました。
午前10時、博多港からフェリーに乗船し、島の南東部に位置する郷ノ浦港に向かいました。博多から郷ノ浦までは、2時間20分かかります。私は、本を読んだり、船内を回りながら、ゆっくりと船旅を楽しみました。その日はそれほど悪天候でもなかったため、船は揺れず、穏やかな船旅となりました。
郷ノ浦港に到着後、歩いて壱岐ひまわり基金法律事務所へ向かいました。郷ノ浦港から事務所までは徒歩10分程度です。事務所周辺に到着したときは、ちょうど昼休みの時間でしたので、時間調整も兼ねて、事務所周辺にある食堂で昼食をとることにしました。
昼食メニューをみると、「ウニ丼」という文字が目に付きました。
そうか、ウニか。壱岐はウニが名物だし、ここは奮発してウニ丼にしよう。
そう思って、私は、迷うことなくウニ丼を注文することにしました。そうして、ウニ丼を食べていると、店長さんが、「ウニは、これから先、6月、7月くらいが食べ頃になる。旬のウニは、とても甘いよ」と話してくれました。私は、その時食べたウニがとても甘く、非常においしかったので、旬の時はどれだけおいしいのだろう、と思いました。
事務所見学・周辺の散策
さて、昼食を済ませ、いよいよ目指す壱岐ひまわり基金法律事務所の事務所訪問に行きました。
壱岐ひまわり基金法律事務所は、郷ノ浦地区にあるNTT西日本壱岐営業所ビル3階にあり、長崎地方裁判所壱岐支部まで歩いて5分ほどの距離にあります。
壱岐ひまわり基金法律事務所の所長は、あさかぜ事務所において養成を受けてきた中田昌夫弁護士です。中田弁護士は、4代目の所長となります。
事務所訪問では、事務所内を見学させていただき、事務所の受任事件の概況・事件の種類等や、事務所での仕事の内容など説明を聞きました。中田弁護士の説明の中で興味深いと思ったのが、利益相反となる案件が多く、月1回で実施している社会福祉協議会での法律相談は、法テラス壱岐法律事務所の弁護士と一緒に実施しているということでした。福岡では、役所での法律相談で利益相反の問題が生じることは滅多に無いので、驚きました。離島で弁護士業務を行う難しさを考えさせられました。
その後、中田弁護士と一旦別れ、ホテルにチェックインし、事務所周辺を散策しました。郷ノ浦は、壱岐のなかでも役所が集まっている場所で、徒歩数分の圏内に警察署、裁判所、法務局があり、1時間もかからず、すべての場所を回ることができました。私は、裁判所の建物の中に入りましたが、長崎地方裁判所壱岐支部は常駐の裁判官・調査官がおらず、その日はがらんとしていました。
中田弁護士と合流するまで余裕があったので、事務所から徒歩10分くらいにある温泉に入ることにしました。長く入る時間はありませんでしたが、日頃の疲れをとることができました。
島内見学
午後5時、中田弁護士と合流し、自動車に乗って島内を見学しました。
壱岐島には、郷ノ浦、石田、勝本、芦辺の4つの集落があり、各地域に特色があります。郷ノ浦は、先に述べたとおり、役所が置かれています。石田は、流通関係の施設が集まっており、唐津行きのフェリーが出ているため、佐賀県とのつながりがあります。勝本は、漁業が盛んで、漁業関係者が多く住んでいるところで、芦辺は、発電所があり、電力会社の人が多く住んでいるとのことでした。
私たちは、郷ノ浦から出発し、石田、勝本、芦辺へと車を走らせました。壱岐は、山地が少なく平らな島で、平地が少なく耕地に乏しい対馬とは対照的です。道中は、田畑や牛舎が点在し、のどかな光景が続きました。酒蔵を見かけることもありましたが、壱岐は麦焼酎が有名とのことです。また、車も少なく、非常に運転しやすい道路だと感じました。実際、壱岐では交通事故事件が滅多にないそうです。その他、原の辻遺跡、一支国博物館の近くを通りましたが、途中下車して施設見学をする余裕はなかったので、後日の楽しみとすることにしました。
1時間くらいで、主要地域を全て回ることができました。
島内見学を終えて、夕食の時間となりました。寿司屋で特上握りを食べたのですが、ネタのなかに「壱岐牛」がありました。少しだけ熱を加え、薄くスライスされた壱岐牛が、しゃりの上に乗っていました(ローストビーフのような感じでした)。他の魚介類のネタの中に壱岐牛があるのは若干不思議な感じでしたが、いざ食べてみると、非常に柔らかく、口の中に入れると、肉の甘みがしっかりと伝わってきました。以前、壱岐ひまわりの所長引継式・披露会に出席した際、壱岐牛のローストビーフを食べたことがあり、その時もあまりのおいしさに感動しましたが、今回も、壱岐牛のおいしさに魅了されてしまいました。
島内見学が終了し、中田弁護士と別れました。私は、ホテルに戻った後、もう一回温泉に入りたいと思い、昼行った温泉に再び入浴しました。気軽に温泉に入ることができるなんて、すばらしいところだと感嘆しました。
博多へ
翌日、私は、郷ノ浦のホテルを出発し、郷ノ浦港に向かいました。途中、釣りのために壱岐に来ていた観光客がちらほら目にとまりました。釣りが趣味の方にとって、壱岐は魅力的な場所なのですね。
午前9時25分頃、私は、郷ノ浦港を出発し、高速船・ジェットフォイルで博多港に向かいました。ジェットフォイルだと、博多・郷ノ浦間は、1時間10分で移動することができます。
こうして、私の壱岐ひまわり基金法律事務所の事務所訪問は、つつがなく終了したのでした。
感想
壱岐ひまわり基金法律事務所を訪問し、離島での弁護士業務の難しさを知るとともに、壱岐の魅力を存分に体感することができ、非常に有意義なものとなりました。弁護士過疎地域に赴任するにあたり、今回の事務所訪問を活かしていきたいと思います。