福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2018年6月号 月報
みんな悩んでいます~「子どもの日記念無料電話相談」の現場から~
月報記事
子どもの権利委員会事務局長 森 俊輔(65期)
1 はじめに
去る2018年5月12日(土)午前10時から午後4時まで「こどもの日記念無料電話相談」を実施しました。この企画は、毎週土曜日午後0時半から午後3時半まで行っている「子どもの人権110番」の拡大版です。
子どもの人権に関する相談と謳ってはいるものの、子どもに関する相談であれば、離婚と親権に関するものから、いじめ、体罰、無戸籍問題、貧困、非行事件など様々なジャンルの相談を受け付けています。
2 閑散とした午前・嵐のような午後
当日午前は静かな滑り出し。取材に来たNHKの記者さんも"いい画"を撮ろうと意気込みますが、そんな時に限って電話が鳴らないのです。「テレビに映りたい」という私の願望が強く出過ぎたせいでしょうか。
相談担当の弁護士たちは、皆、正午のNHKニュース(九州沖縄版)効果を期待してお互いの顔を見合わせます。会場となった弁護士会館第二会議室は、どこか閑散としていました。
それがどうしたことでしょう(ここで皆さんの頭の中に「大改造!劇的ビフォーアフター」のBGMを流してください)。NHKニュースが流れ終わるや否や、プルルルルと電話が鳴り、用意していた2回線はあっという間に埋まってしまったのです。閑散とした第二会議室は、あっという間に活気溢れる電話相談会場に様変わりしました。電話機も自分の役割が果たせたからか、どこか嬉しそうです(BGM終わり)。
3 私はどうしたらいいの!?
「いじめに遭った子どもが不登校になっている。どうしたらいいのか」「家を出て知人宅で寝泊まりする娘を自宅に取り戻せないのか」「どこに相談したらいいのか分からないんです」
早急に法的な対応が必要なものもあれば、電話から得られる情報の限りでは家族同士の話し合いに委ねるほかないと思われるものもありました。ただ、ひとつ確かなことは、皆さんがそれぞれの立場から子どものことを考え、そして悩んでいるということです。だからこそ、ニュースを見て、すがる思いで電話を手に取られたのでしょう。
この日、午後4時までに合計14件の電話相談が寄せられ、うち数件は継続して面談相談等を受けることとしました。6時間だけで電話口からはいくつもの「ありがとう」が聞こえてきました。
午後4時に回線を切るとき、第二会議室には、温かな光と爽やかな皐月の風が吹き込んでいました。
4 みんな悩んでいる
行政機関も司法機関も民間でも様々な相談窓口が設けられています。それでも、どこにどうやって相談していいのか分からないまま、ひとりで悩んでいる人が大勢います。そんな方々の一助になる事ができ、子どもの人権擁護のために私たちは何をすべきか、何ができるのかを考えさせられました。
今後も広報を充実させて、「子どもの人権110番」を新たなステップに進化させていく予定です。乞うご期待。
今回、ご協力いただいた皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。