福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)
2018年4月号 月報
犯罪被害者の支援条例制定へ! ~犯罪者支援シンポジウム「犯罪被害者支援条例を考える(第2回)」~
月報記事
会員 德永 由華(64期)
1 犯罪被害者支援条例で支援が具体化!
2017年12月19日、アクセス良好の天神ビル会議室にて福岡県弁護士会主催シンポジウム「犯罪被害者支援条例を考える(第2回)」が開催されました。同年7月の第1回に引き続き、半年もしないうちに同じタイトルで第2回を開催するということからも、犯罪被害者支援条例が福岡県で制定される機運が非常に高まっていることがお分かりいただけると思います。ちょうどシンポジウムから1か月後の今年1月19日、西日本新聞朝刊一面でも、"早ければ今年3月に福岡県議会へ犯罪被害及び性被害の2本立てで被害者支援条例案が提出される"旨の報道もあったところです。
そもそも第1回のシンポジウムは、2004年に犯罪被害者等基本法(以下「基本法」といいます。)が制定され、2013年3月に「福岡県犯罪被害者取組指針(2017年4月改定)」が策定されたものの、未だ犯罪被害者及びその家族又は遺族(以下「犯罪被害者等」といいます。)に対する支援が十分であるとはいえない現状を踏まえ、充実した犯罪被害者等に対する支援のための福岡県条例制定に向けた啓蒙活動の一環として開催されたものです。
当日は、多数の市民や役場の被害者支援担当者のほか、当会会員も参加し、テレビ・新聞などのマスコミも多数参加する中、会議室は程良い緊張感に包まれました。
当会会長作間功弁護士の挨拶により開会となる予定でしたが、あいにく、急用で出席は叶わなかったものの、丁寧なメッセージを寄せていただき、当日司会だった私が代読しました。作間会長のメッセージは、第1回シンポジウムに引き続き、弁護士会が日本最大の人権NGOとして、立法活動を支えることは法律の専門家集団としても大きな意義があることに触れるなど、大変力強いものでした。
2 第1部 犯罪被害者支援条例の解説
第1回シンポジウムでも好評だった当委員会副委員長林誠弁護士の犯罪被害者支援条例についての解説は、基本法及び地方自治法から、地方公共団体が犯罪被害者等に対する具体化支援の役割を担うべきであることを確認したうえ、基本条例のみでは担当窓口が継続される保証はなく、担当者次第で支援が細切れになってしまい、現実には犯罪被害者等の方々が役所へ問合せに行ってもたらい回しにされ長時間待たされた挙句「分る者がおりません」と言われたとのエピソードも交え、犯罪被害者支援条例の必要性が指摘されました。
第1回シンポジウムパネリストの佐藤悦子氏の尽力により、大分県でも佐賀県に続いて犯罪被害者支援条例が制定され、内容としても市町村が支援金支給し、県が助成することを含めて制定されるなど、充実した条例が制定されたと報告がなされました。特に、福岡県は性犯罪認知件数が全国第3位、人口割合では第2位と件数・犯罪率とも特に高いため、犯罪被害者支援条例制定が急務であるとのことでした。
また、神奈川県の犯罪被害者支援条例等の実例を交え、現実的で、かつ犯罪被害者等が求める条例モデル案を叩き台にして、あるべき福岡県の犯罪被害者支援条例について丁寧に講義がなされました。
3 パネルディスカッション
後半は、犯罪被害者遺族2名と当会会員で児童相談所常勤弁護士の久保健二会員、当委員会委員長の藤井大祐会員、同前委員長の世良洋子会員をコーディネーターとしてパネルディスカッションが行われました。
被害者遺族の古賀敏明氏から、婚約直前のご子息が大阪で通りすがりの男2名から暴行を受けて死亡したものの、犯人は分らず、懸賞金300万円をかけご子息友人達の協力を得て探し出し、2名とも刑事裁判では実刑となったこと、しかし、民事裁判で合計8900万円の損害賠償請求を認める判決が確定したのに、ほとんど支払いはなく、時効完成前に自費で再提訴を余儀なくされ、やはり支払いはほとんどなされていないと、なんともやるせないお話がありました。また、弁護士探しにも心当たりがなくて苦労したそうです。
久保健二会員からは、児童相談所に常勤する中での児童に対する性加害の実態、認知が困難であること、被害児童が何度も同じことを聞かれて疲弊すること等の対処の困難さについて報告がありました。特に、性加害を認知した大人の対応として気をつけるべきこととして、「親が実子に性加害をするわけない」「男子は性加害の被害者にならない」等との偏見から、被害児童が勇気を出して告白しても逆に疑われる等の二次被害が生じている等の指摘がありました。
被害者遺族のもうお1人は、前回シンポジウムでも事例報告をしてくださった山本美也子氏でした。山本氏は、飲酒運転で当時高校生の息子さんを亡くされ、福岡県の飲酒運転撲滅条例制定へ尽力され、報道等でもご存じの方も多いと思います。講演活動(既に約900回にもなるそうです!)や被害者等でつながりを持つなかで、様々な犯罪被害者の方々の状況を知るようになったそうです。特に性被害では、人には言えなくとも髪をむしったり学校に早朝から遅くまでいる等のSOSは出していたケース、幼少の頃の性被害について子育てするようになって苦しめられるようになった母親等、被害に終わりはないようです。また、犯罪被害者は犯罪の性質や状況により、様々であり被害者同士であっても安易に声をかけられず、地方自治体の専門窓口による継続的な支援の必要性を指摘されました。
藤井大祐会員からは、依頼者が犯罪被害者の場合に、無保険の交通事故など損害賠償の回収が難しいケースのほか、児童に対する性加害には社会資源として一般には重要な家族に期待ができないことの深刻さを指摘され、弁護士業務の視点からも地方自治体による支援制度としての犯罪被害者等の条例による救済が必要との指摘がありました。
様々な視点から、コーディネーターの世良洋子会員が、上記のような様々なエピソードを引き出し、犯罪被害者支援活動を継続してきた同会員だからこそ、「犯罪被害者支援条例は悲願です」との言葉には非常に重みがありました。
4 おわりに
犯罪被害者やその遺族の方々は、犯罪被害に遭うまでは普通の生活を送ってきた方々ばかりです。私が、あなたが、今日、被害者になるかもしれません。また、性被害の暗数の多さは想像に難くありません。犯罪者の権利擁護を率先してきた弁護士ですが、犯罪被害者に寄り添うことも少数者の人権擁護に不可欠です。
既に、福岡県議会でも犯罪被害者支援条例の制定に動きつつありますので、ぜひ当会会員の経験や意見を反映させ、より良い被害者支援へ役立てていきたいものです。どうぞ今後とも犯罪被害者支援条例制定へのご支援、ご意見をお寄せください。
精神保健当番弁護士制度発足25周年記念公開シンポジウム 「オープンダイアローグが日本の精神科医療にもたらすもの」 ~地域精神科医療の推進に向けて~
月報記事
精神保健委員会委員 原口 圭介(63期)
1 はじめに
2018(平成30)年2月24日、福岡市中央区天神・福岡ビルにおいて、精神保健当番弁護士制度発足25周年記念公開シンポジウム「オープンダイアローグが日本の精神科医療にもたらすもの」~地域精神科医療の推進に向けて~が開催されました。
医療・福祉関係者、弁護士、当事者ら合わせて約140名が参加し、近時、注目を集めている「オープンダイアローグ」に対する関心の高さがうかがえました。
2 オープンダイアローグとは?
(1) ここで、オープンダイアローグについて、簡単な紹介を試みたいと思います。
オープンダイアローグは、急性期精神病における開かれた対話によるアプローチと言われます。発祥は、フィンランドの西ラップランド地方です。薬物をできるだけ使わない対話による治療法として、同地方において、1980年代から導入されました。統合失調症による入院の減少、入院治療期間の短縮などのエビデンスを蓄積し、フィンランドの同地方では、公的な医療サービスに組み込まれています。日本でも2013年頃から、これまでの精神科医療の枠を打ち破るものとして注目を集めています。
(2) その特徴をいくつか列挙しますと、
- 本人抜きではいかなる決定もなされない。
- 依頼があったら24時間以内に本人・家族を交えて初回ミーティングを開く。
- 治療対象は最重度の統合失調症を含むあらゆる精神障害をもつ人。
- 薬はできるだけ使わない。
- 危機が解消するまで、毎日でも対話をする。
- テーマは事前に準備しない。スタッフ限定のミーティングなどもない。
- もちろん幻覚妄想についても突っ込んで話す。
- 本人の目の前で専門家チームが話し合う「リフレクティング」がポイント。
- 治療チームは、クライアントの発言全てに応答する。
などです(斎藤環著+訳「オープンダイアローグとは何か」医学書院より引用)。
(3) 我々福岡県弁護士会精神保健委員会は、昨年夏、北海道浦河町「浦河べてるの家」(精神障害等を抱えた当事者の生活共同体)の研修に参加しましたが、研修の一つとしてオープンダイアローグの実践に触れ、その内容に衝撃を受けました。その高揚感冷めやらぬままに、このテーマでのシンポジウムを企画したものです。
3 基調講演
(1) シンポジウムでは、日本でのオープンダイアローグの普及を担っている「オープンダイアローグネットワークジャパン(ODNJP)から、西村秋生さん(医師/だるまさんクリニック)、矢原隆行さん(教授/熊本大学大学院社会文化科学研究科)をお招きし、オープンダイアローグの7つの原則 について、講演していただきました。
(2) 特徴的だったのが、お2人が掛け合いのように、1つずつの原則について内容を確認していくかたちで、講演をされたことです。オープンダイアローグには、厳密なマニュアルのようなものがあるわけではありません。それは単なる「技法」ではなく、その本質は、対話実践の考え方といったものです。そのようなわけで、オープンダイアローグの7つの原則についても、人によって答えは違うことがありえます。その観点から、まさに開かれた対話形式によって、答えを作り上げていくという手法が取られ、大変興味深いものでした。
(3) 下記にご紹介する7つの原則の考え方は、医療機関に限らず、福祉、教育、そして我々のフィールドである司法(特に刑事事件、家事事件、そして退院請求事件でしょうか)など、あらゆる対人支援の現場で応用することが可能と言えそうです。特に重要な⑥と⑦については、お2人の発言とともに紹介します。
① 即時対応(Immediate help)
→必要に応じて直ちに対応する。
② 社会的ネットワークの視点を持つ(A social networks perspective)
→クライアント、家族、つながりのある人々を皆、治療ミーティングに招く。
③ 柔軟性と機動性(Flexibility and mobility)
→その時々のニーズに合わせて、どこででも、何にでも、柔軟に対応する。
④ 責任を持つこと(Responsibility)
→治療チームは必要な支援全体に責任を持って関わる。
⑤ 心理的連続性(Psychological continuity)
→クライアントをよく知っている同じ治療チームが最初からずっと続けて対応する。
⑥ 不確実性に耐える(Tolerance of uncertainty)
→答えのない不確かな状況に耐える。
(西村さん)
決まらないことの苦しさに耐える。
(矢原さん)
私は「耐え」たくない。Toleranceとは、寛容とか包容。専門家が答えを出すのではない。多様な声(ポリフォニー)をそのまま置いて並べていき、必要な答えを本人が選んでいく。
(西村さん)
矢原さんの考えを教えてもらってよかった。
⑦ 対話主義(Dialogism)
→対話を続けることを目的とし、多様な声に耳を傾け続ける。
1 詳細は「精神看護」2018年3月発行(通常号)(Vol.21 No.2)の特集「オープンダイアローグ対話実践のガイドライン(医学書院)。
(西村さん)
対話を続けることが目的。
(矢原さん)
治ろうが治るまいが対話を続けることが大事。対話の本質はスキルではない。フィンランドツアーを組んで学びに行くようなものでもない。
(4) 特に、「不確実性に耐える」については、弁護士が最も苦手とするところというのが参加弁護士の共通認識でした。しかし、この観点は、勝ち負けを決める必要のない成年後見業務などおいて、参考になりうると感じました。また、当事者のご家族からの発言で、「不確実性に耐える」という考え方が大きな収穫だった、気持ちが楽になったというものがありました。
4 精神保健当番弁護士25周年の歩みと取組み
(1) 続けて、福岡県弁護士会精神保健委員会委員長鐘ヶ江聖一会員より、現在、精神保健当番弁護士名簿登録者数は402名であり、概ね順調に運用されている等の報告がありました。
(2) 九州弁護士連合会精神保健に関する連絡協議会副委員長橘潤弁護士(宮崎県弁護士会)より、現在、九弁連管内のすべての単位会で精神保健当番弁護士制度が実施されている等の報告がありました。
5 パネルディスカッション
(1) 続けて、八尋光秀会員をコーディネーターとしたパネルディスカッションが、西村さん、矢原さんに加え、和田幸之さん(こころの病の患者会うさぎの会会長)、楯林英晴さん(医師/福岡県精神保健福祉センター所長)、森豊会員の5名にて行われました。
(2) 和田さんより、奥様が措置入院となった際、頼れる社会資源がなかったことのエピソードや、オープンダイアローグも入院中心の精神科医療の中で骨抜きにされる可能性があることなどが語られました。
(3) 楯林さんより、福岡県精神保健福祉センターの活動(保健所の支援、家族及び支援者の研修会、精神医療審査会、クライシスプラン、病院と地域の連携推進など)について、報告がありました。
(4) 森会員より、入院医療中心から地域生活中心へと謳った平成16年の精神保健医療福祉の改革ビジョンの実現は現状ではほど遠いこと、オープンダイアローグはその起爆剤となりえ、特に急性期の患者に対する非自発的入院治療の必要性の判断を適正な判断に変えていく契機となって、非自発的入院の減少につながりうること、などが語られました。
(5) パネルディスカッションの後半で、矢原さんより、この度、精神医療とは直接は関係のない弁護士会からオープンダイアローグについての講演依頼が来たことで、オープンダイアローグの普及を実感するとともに、ブームとして終わってしまうのではないかと心配になったとのお話がありました。日本において、どこまでオープンダイアローグの拠点を作っていけるか。あくまでフィンランドはフィンランド。土地によって文化は違い、その土地なりの実践がある、とのことでした。
6 閉会あいさつ
九州弁護士連合会精神保健に関する連絡協議会委員長野林信行会員より、閉会のあいさつとして、今日の参加者が今日学んだことを自身の現場で実践していきましょうとのことばがありました。
思うに、日本において、オープンダイアローグは、まだ緒についたばかりです。オープンダイアローグは、薬物と入院をできる限り遠ざけようとする治療法ですから、現在の精神医学界において積極的に受け入れられることは考えにくいです。しかし、オープンダイアローグの考え方を知った今日の参加者は、普及するまで、まさにその不確実性に耐え、その有効性を実践によって地道に確かめていくことが求められたと思います。
憲法学習会「自民党の『加憲』案を考える」
月報記事
憲法委員会委員 山崎 あづさ(54期)
去る3月2日、憲法学習会「自民党の『加憲』案を考える」が行われました。会員の他に市民の参加も50名ほどあり、なかなか盛況な会となりました。
今回は、日弁連憲法問題対策本部事務局の井上正信弁護士(広島弁護士会所属)を講師にお迎えしました。井上弁護士は、これまで法律雑誌等で、憲法問題(特に憲法9条、安全保障、防衛政策)に関する論文を多数執筆されているとあって、豊富な知識に基づき、わかりやすく、明快な解説をしてくださいました。以下、その内容をご紹介します。
1 こんなにある、9条加憲論の論点
○ 現在の9条加憲論の特徴は、「イメージ先行型」、「感情論」である。条文案が示されない段階なのに「9条加憲で何も変わらない」と宣伝し、「自衛隊をきちんと憲法に位置づけないと、命をかける隊員に失礼だ」と情緒的に訴えかける。
○ 9条の最大の特徴は2項にあるが、「加憲」により2項との矛盾が生じ、2項の効力が変わることになるのではないか?
○ 「何も変わらない」と言うなら、わざわざ何のために改憲するのか?
○ 政府は60年間、自衛隊合憲論を積み重ねてきているのに、自衛隊違憲論を払拭するためだけに改憲する必要があるのか?現憲法の下では自衛隊員は誇りを持てていないというのか?
2 「何も変わらない」論への徹底批判
○ 現在の自衛隊は9条2項の下で作られた自衛隊法により規定されているが、加憲により9条の2に書き込まれる「自衛隊」は、それとは別物となり、9条の2の解釈に全て委ねられてしまう。そうして結局、9条2項はほとんど死文化してしまう。「何も変わらない」という主張は、憲法に書き込む意味を過小評価しているか、全く理解していないか、あるいは、ごまかしている、と理解するしかない。
○ 9条の2に自衛隊を書き込めば、次は、これを実行するための法律が必要となる。軍事秘密保護法、軍事法廷、安保法制のバージョンアップなど、フルスペックの軍隊を持つことが可能になる。
○ 自衛隊が憲法上の国家機関となれば、自衛隊の活動や任務と基本的人権が衝突する場面では、基本的人権が制約されることになる。
○ 9条が築いた平和な社会がどんな社会であったかを再確認しよう。9条は、自由な社会を下支えしている。なぜなら、「戦争は最大の人権侵害」である。
3 安保法制下の自衛隊の実態
○ 「専守防衛政策」が、安保法制制定後の防衛白書でも全く同じ文言で書き込まれているが、実際は、「再定義」という形で意味を変えられ、それまでの「専守防衛」とは似て非なるものとなっている。
○ 専守防衛政策の意義は、我が国が他国に対する脅威とならないことを宣言し、安心を供与することで我が国の平和と安全を図るところにある。しかし、これが揺らがされ、葬り去られる恐れがある。
4 9条改正と北朝鮮脅威論
○ 現在のマスコミ等の報道の仕方には問題がある。一度リセットしてみよう。世の「常識」に囚われず、現実・事実を踏まえて考えてみよう。
○ 抑止力を強化して平和と安全が守られるのか?「抑止」とは、互いに相手国の市民を人質に取る政策である。抑止が破れたときに犠牲になるのは、私たち国民・市民である。
○ そもそも北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器だけが脅威なのか?挑発しているのは北朝鮮だけなのか?約束を破ったのは北朝鮮だけなのか?アメリカはどうなのか?「万一日本が攻撃されたら」というが、どの国がなぜ攻撃してくるのか?その想定は現実的か?
○ 北朝鮮の脅威というのは、9条の問題ではなく、対北朝鮮政策の問題である。場当たり的に、派生した問題だけを解決しようとしても本当の解決にならない。
○ 私たちが北朝鮮の脅威に向き合うときに大前提に置くべき条件は、絶対に武力紛争にしてはならないとの強い意思である。
井上弁護士のお話は、時に細かい情勢分析や実態報告を交え、事実を踏まえて理論的な指摘を展開するものでありながら、とても熱く、パワフルなものでした。特に印象的だったのは、「絶対に武力紛争にしてはならないという強い意思」が大前提だとの言葉です。何が大切なのかという点を見失うことなく、冷静に考えていきたいと改めて思いました。
対外広報委員会だより
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対外広報委員会委員 溝江 香菜子(70期)
1 当会の無料法律相談会
当会では、2014年、2015年、2017年に天神地下街において無料法律相談会を実施しております。また、2016年は、日弁連作成の武井咲さんのポスタージャックと連動して、福岡県下のイオンモール2店舗においても無料法律相談会を行いました。
2 無料法律相談会の開催
今年も、3月11日に天神地下街の1番街イベントブースにおいて、福岡県弁護士会無料法律相談会を開催しました。
今年は12時から16時(15時半まで受付)で相談会を実施する予定でしたが、11時半前から相談者の方がいらっしゃったため、30分ほど前倒しして、11時半頃より相談会を開始しました。相談会は大変盛況で、13時から14時頃までは常に5~10人待ちの状態でした。このため、本来の5つのブースに加え、臨時ブースを2つ追加し対応させていただきました。
また、相談会と並行して、「福岡県弁護士会」という当会のロゴマークの入ったジャンパー・ベストを着用したメンバーが、法律相談センターの案内、無料相談の案内、ライジングゼファー福岡(プロバスケットボールクラブ)とのコラボカレンダーなどが入ったチラシ一式や、法律相談センターのナビダイヤル入りのティッシュなどを配布する広報活動を行いました。
また、今年も昨年に引き続き、日弁連から、武井咲さんのメモ帳、ジャフバくん(日弁連のキャラクター)の風船など、配布グッズが多数支給されました。特に、風船については、お子さん連れの通行人の方々とお話をさせていただくきっかけにもなり、大変有益なグッズでした。
3 実施結果
最終的には、72件の相談を受け付けました。
相談者の方がどのようにして今回の法律相談会を知ったかについては、アンケートに回答してくださった71名のうち、「偶然通りかかった」が38名(約54%)、「市政だよりを見て」が19名(約27%)、「インターネットor県弁HP」が4名、「新聞」が2名、「SNS」が1名という結果でした。
偶然通りかかったという方が半数以上を占めており、弁護士による法律相談に対する潜在的なニーズが大きいことを示すものだと思います。
また、市政だよりをご覧になっていらっしゃった相談者の方が予想以上に多い結果となりました。市政だよりは今後も有効な宣伝ツールとして活用していくことが望ましいと思われます。
今回、相談会に立ち会う中で、「弁護士に相談となると敷居が高く、相談できずにいたが、思い切って立ち寄ってみてよかった。」、「ずっと気にかかっていたことが、今回の相談会を通じて解決し、とてもほっとした。」といった市民の方の生の声を聞くことができました。
今後も、無料法律相談会を継続し、市民の方に当会を身近に感じていただくとともに、より多くの先生方にも参加していただき、市民の方と直接お話ししていただく機会を持っていただければと思います。
あさかぜ基金だより
月報記事
あさかぜ基金法律事務 弁護士 古賀 祥多(69期)
若林弁護士の退所
あさかぜ所員・69期の古賀です。去る2月28日、若林毅弁護士があさかぜ基金法律事務所を退所し、3月より対馬ひまわり基金法律事務所に赴任しました。若林弁護士は、私があさかぜ事務所に所属してから1年以上のあいだ、隣の席で一緒に仕事をしていて、共同で事件を担当することも多く、とてもお世話になった先輩弁護士でした。そのため、3月に入って、隣の席が空いていると、なんだか無性に寂しい限りです。
あさかぜ事務所は、九州沖縄の各県の弁護士会で構成される九州弁護士会連合会(九弁連)が、その管内の弁護士過疎地(簡単にいえば、人口あたりの弁護士の数が少ない地域のことです)に派遣する弁護士を養成するために設立した事務所で、所属する弁護士は、原則として2年間の養成期間を経て、九弁連管内の司法過疎地域に赴くことになっています。このような設立理念等からすれば、所属弁護士が事務所を離れ、各弁護士過疎地に旅立つことは当然のことです。しかし、長年お世話になった先輩弁護士が事務所を去るのは、やはり寂しいものです。
ただ、あさかぜ事務所に所属する弁護士は、弁護士過疎地における司法サービスの充実、法の支配をあまねく行き届かせるという志をもって、あさかぜ事務所に入所し、研鑽に励んでいます。そのため、過疎地への赴任は、自分の目標をかなえるための第一歩です。若林弁護士の今後ますますの活躍を期待しています。
残る所員弁護士の今後
若林弁護士が退所した現在、あさかぜ事務所には、服部晴彦弁護士、田中秀憲弁護士、小林洋介弁護士と私の計4名の弁護士が在籍しています。いずれも、ゆくゆくはあさかぜ事務所を出て、九弁連管内の弁護士過疎地に赴くことになります。
所属弁護士は、あさかぜ事務所に在籍する間、様々な事件を担当するだけでなく、あさかぜ委員会を通じて、キャッシュフローデータを意識した事務所経営、事件処理(相談の受け方、受任率の向上、依頼者とのトラブル防止など)、ホームページなどの広報、事務職員の労務管理などについても学んでいくこととなっていますが、若林弁護士も、法律事務にとどまらず、事務所経営、事件処理など多くの研鑽を積んできました(若林弁護士のあさかぜでの活動については、前月号の「あさかぜ基金だより」をご参照ください)。私も、残りの養成期間、来たるべき旅立ちの日に備えて、広く深くできる限り多くの経験を積んでいきたいと思います。
私は、あさかぜ事務所に所属して、1年4ケ月ほど経過していますので、もう1年と経たないうちに赴任する可能性が高いものと考えられます。こうして自分を振り返ると、折り返し地点を既に超えてしまっていることに、我ながら驚いてしまいます。あさかぜ事務所のOBで現在赴任している先輩弁護士を見ていると、いかにも頼もしく、私はまだまだとても及ばず心配してしまいます。あと半年少しで、本当に一人前の弁護士になれるのかどうか、いささか不安に駆られるところではありますが、あさかぜ事務所での日々の業務を通じ、事務所経営・事件処理を学び、一つ一つ積み重ねていきたいと思います。
未熟な点も多い私ですが、これからも引き続き、より一層のご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。