福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2017年11月号 月報
必要なのは語学力ではなく、声を掛けるほんの少しの勇気である! −初めての国際会議に参加して−
月報記事
国際委員会委員 奈倉 梨莉子(68期)
(1) はじめに
去る平成29年9月18日から21日、ホテルニューオータニ東京にて、LAWASIA東京大会2017大会が開催されました。
LAWASIAとは、アジア・太平洋地域の弁護士・裁判官・検事・法学者・法律専門職等が参加する団体であり、年に一度、持ち回りで各国の法律家が一堂に会する年次大会を開催しています。ローエイシアの年次大会が日本で開催されるのは、1945年の第4回大会、2003年の第18回大会に続いて3回目とのことで、私自身、LAWASIAの登録会員ではありませんが、この度日弁連及び当会の若手支援制度を利用して、本大会への参加が叶いました。本稿では、初めて「国際会議」なるものに参加した者の目線で、その魅力を少しでもお伝えできればと思います。
(2) 公式セッション
本大会では、34の公式セッション(1セッション90分)が用意されており、各セッションでは、各国の司法制度やビジネス法、国際人権問題など各国に共通する問題をテーマに、各国のスピーカー(通常4,5名)による報告、またそれに対する他のスピーカーや受講者との間の意見交換が行われました。各セッションでは、基本的に英語が使用されますが、全てのセッションに日英同時通訳がつくため、リスニングがあまり得意でないという方も心配はありません。私は、4日間を通じ、計7つのセッションを受講致しましたが、中でも最も印象的だったのは、「移民をめぐる諸問題~とくに『家族』と『子ども』に焦点を当てて」と題するセッションを受講したときのことでした。同セッションでは、ドイツ人法曹によりスリランカにおける海外への出稼ぎ女性家事労働者の問題についての報告が行われたのですが、これに対し会場にいたスリランカ政府関係者の受講者から、ドイツ人法曹が報告のベースとした報告書の公表後スリランカにおける出稼ぎ女性家事労働者の問題は大幅に改善されており、残された子らへの支援も十分に施されているという趣旨の10分以上に亘る猛烈な反論がなされたのです。どちらの言い分が正しいのかということではなく、ある国の抱える問題点を他国から観察した場合と自国の内側から見た場合にどのように違って見えるのかを知り、またリアルタイムの情報を得ることができる点も国際会議の醍醐味の一つではないかと思います。
(3) 外国人法曹との交流
LAWASIAでは、公式セッションのほか、私のように初めて国際会議に参加した若手のためのビギナーズイントロダクションや外国人法曹のためのアクティビティ(皇居ランや大相撲秋場所の観戦等)も用意されていました。また各セッションの合間には、コーヒーブレイクの時間が30分間設けられており、このコーヒーブレイクの時間こそ、国際会議ならではの体験ができるのではないかと思います。面識のない初対面の相手からの「コーヒーにミルクは使いますか」という一言から会話が始まり、「どこの出身か」、「名刺を交換しましょう」、「専門は何か」、「どのセッションが興味深かったか」とどんどん会話は広がっていきます。当然、この間の会話には通訳はつかないため、コーヒー片手に何とか自力で会話をしなければなりません。初日には、中々コーヒーブレイクの時間に馴染めなかった私も、最終日には、臆せず自分から話しかけられるほどになりました。
また3日目の夜には、ガラディナーというパーティが開かれ、約1600名の出席者が盛装して参加しました。9~10名で1テーブルを作り、ディナーを共にします。ディナーの途中には、日本人書道家による書道パフォーマンスが行われ、大いに盛り上がりました。
(4) おわりに
今回、LAWASIAに参加して、語学力もさることながら、近くにいる見ず知らずの誰かに一言自分から話しかける勇気を持つこと(馴れが重要)、そして何よりも伝えたい「何か」(参加の目的や自身の専門性など)を持つことが大切であると感じました。いつか、本大会で出会った誰かともう一度国際会議で再会できればと夢見ています。