福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2017年8月号 月報
連続シンポジウム「地域で防ごう消費者被害in福岡」が開催されました
月報記事
消費者委員会委員 桑原 義浩(58期)
1 連続シンポジウム企画
6月17日土曜日、インペリアルパレスシティホテル福岡で、日本弁護士連合会と福岡県弁護士会の主催による連続シンポジウム「地域で防ごう消費者被害in福岡」が開催されました。この連続シンポジウムは、高齢者に対する消費者被害が増加している中で、被害の予防と救済のためには地域での連携が不可欠であることから、全国各地での開催を目指し、日弁連と各弁護士会とで主催して開催してきているものです。当職も日弁連消費者問題対策委員会副委員長ですが、某N弁護士から参加するかの確認の電話が入るほど、開催前には参加人数を気にしていたようです。結構早めに会場に行ったつもりでしたが、既に満席、椅子を持ち込んでも立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。140名ほどの参加があったようです。
2 基調講演
まず、独立行政法人国民生活センターの松本恒雄理事長から、「地域で防ごう消費者被害−『弱い消費者』をめぐって」と題する基調講演がありました。一言に「消費者」と言っても色々な人々が含まれますが、消費者の中でも特に弱く、傷つきやすい消費者として、高齢者や若年消費者がある、その被害の防止には消費者教育では限界があり、見守りネットワークなどの組織的対応が必要といった内容でした。
3 基調報告
次に、国府泰道弁護士(大阪弁護士会)から、「被害防止の手法と取組について」と題して、訪問勧誘、電話勧誘の被害状況と、その防止のための色々な工夫が紹介されました。シンポへの参加を呼び掛ける電話勧誘はいいとしても、高齢者に電話で勧誘して被害を生むことは、止めさせなければいけません。最近は迷惑電話対策装置も色々と出ています。大阪府警では、受話器を取ると「ちょっとまった!!」との手形POPが立体的に起き上がってくるなどというのもあるそうです。さすが大阪。さらには、訪問販売お断りステッカーを作成し、そのステッカーのある家に訪問勧誘すると条例違反にするような活動もされています(大阪弁護士会のステッカー参照)。これらの活動は、福岡でも取り組んでいきたいところです。
4 取組報告
その後は、色々な団体からの取組報告です。列挙していきますと(1)福岡県消費生活センターからの活動報告、(2)最近も投資詐欺事案の摘発を行った福岡県警察の取組、(3)福岡県生活協同組合連合会の篠田専務理事から、見守りネットふくおかの活動について、(4)NPO法人I'サポート新宮の井上理事長から、「あっというまに年をとる、他人事でない後見の話」、(5)苅田町の見守りネットワークと消費者の安全確保についてのご紹介、(6)佐賀大学経済学部経済法学科3年生の皆さんによる消費者教育の取組、そして(7)セブンイレブンジャパンから、「コンビニエンスストア セイフティステーション活動」について。
それぞれに大変興味深い報告でした。佐賀大学の活動は、「Consumer's Why みんな消費者」というテキストになっていて、これは消費者庁のホームページにも掲載されるほどになっています。食の安全について学んでもらうために人工イクラを作ってみよう、という市民向けの啓発企画も行われています。本物そっくりの人工イクラを知ることで、見た目だけでだまされないことを学ぶものです。実際に受けてみたいなと思いました。
5 福岡で防ごう消費者被害!
このように、各種の団体がそれぞれに、高齢者など「弱い消費者」を守り、救済しようという活動をされていることが分かりました。今後は、その団体同士が横のつながりを持って、連携をしていけば、より大きな活動になっていくものと思います。そして、その運動の盛り上がりから、これを全国規模の活動につなげて、悪質な訪問勧誘、電話勧誘を防止できるような法改正につなげていくことができれば、と思っています。そのスタートの1つとなるシンポジウムでした。
日弁連では、今後も、九州の他県でも開催していくことを考えています。参加確認の電話勧誘を受けることなく、是非、参加してみてください。