福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2016年12月号 月報

給費制維持緊急対策本部だより 修習手当の創設を求める院内意見交換会について (10月11日衆議院第一議員会館)

月報記事

会員 南正覚 文枝(67期)

1 平成28年10月11日、衆議院第一議員会館において「修習手当の創設を求める院内意見交換会~実現させるこの秋に~」が開催されましたので、そのご報告をさせていただきます。

2 今回の院内集会は、参議院の本会議とちょうど時間帯が重なってしまい参議院議員の出席が望めなくなったにもかかわらず、国会議員本人出席31名、秘書代理出席70名、一般出席185名、合計286名出席と、多くの方々にご出席いただきました。

集会までに寄せられた国会議員の賛同メッセージは、当日寄せられたものを加えると432通に達し、議員総数の6割を超えました。

3 集会の開会前には、これまで全国8カ所で行われたリレー市民集会の動画が上映されました。

集会はまず、中本和洋日弁連会長による開会挨拶から始まりました。

4 その後、各党を代表して国会議員の方々からの発言がありました。

自由民主党・宮崎政久議員、公明党・吉田宣弘議員、社会民主党・福島瑞穂議員、日本維新の会・河野正美議員、民進党・逢坂誠二議員、日本共産党・畑野君枝議員、それぞれの方々からご意見を頂きました。

皆さん共通して、ビギナーズの地道なあいさつ運動等の活動を称え、司法修習生への給費の実現を一刻も早く図らなければならないという強い認識を持っておられました。

そしてまた、何人もの国会議員の方が、ここにいる国会議員たちは本来全く政治的立場は異なるが、司法修習生への給費の実現という待ったなしの課題については、その立場の違いを超えて共に戦っていく必要があるという発言をしておられました。

その後、集会に出席してくださった他の国会議員の方々からも次々と、早急に給費を実現するために最後まで共にがんばりましょうといった熱いエールを頂き、会場が一体となって盛り上がっていきました。

5 国会議員の方々からのエールの合間には、70期修習予定者と大学生2名、計3名の当事者からの発言がありました。

70期修習予定者からは、これまで奨学金を借りてきたため現時点で700万円近くの借金があり、修習が貸与のままであった場合、修習終了時点で約1000万円の借金を背負うことになること、貸与を受けるため保証人を立てなければならないが世話になった両親に頼むのは心苦しく機関保証にしようと考えていること、このようなことから今年の司法修習を辞退しようかと悩んでいることなどが、語られました。

また、大学生からは、実家がそれほど裕福ではないため経済的不安が大きく、このままでは安心して法曹への道を目指せないといった悩みが語られました。

このような当事者の生の声は、集会に参加した方々の心を深く打つものがありました。

6 最後に、新里宏二司法修習費用給費制存続緊急対策本部本部長代行が、これまでの活動を振り返りつつ、「修習手当の創設を実現させ新しい法曹を育てていきましょう、もう猶予はありません!」と力強く述べ、会場は熱気に包まれた中、盛況のうちに閉会となりました。

7 このようにこの秋からの司法修習生への経済的支援の実現に向けての活動は、多くの国会議員の理解と賛同も得て、いよいよ大詰めを迎えております。

会員の皆様の変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。

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行政問題委員会だより

月報記事

行政問題委員会委員 前田 恭輔(68期)

平成28年9月10日午前10時から午後3時まで、福岡県弁護士会館において、「行政ホットライン 秋の大相談会」が行われましたのでご報告します。

1 「弁護士による行政ホットライン」について

行政問題委員会は、年10回、「弁護士による行政ホットライン」を実施しています。行政ホットラインでは、行政に対する不満や疑問について、市民の皆様から、電話または面談で相談を無料で受け付けています。相談では、税金に関する問題や生活保護に関する問題、区画整理や用地買収に関する相談など、毎回多岐にわたる相談が寄せられています。

また、年10回の行政ホットラインのうち春と秋の2回は、休日の午前11時から午後3時までの4時間で大相談会を行っています。大相談会には、普段は仕事で相談に来られない方も参加され、毎回10件前後の相談が寄せられています。

2 行政ホットライン秋の大相談会について

平成28年9月10日に、行政ホットライン秋の大相談会が開催され、弁護士10名で対応しました。当日は、遺族年金に関する相談2件、公営住宅の立退きに関する相談1件、国民健康保険料の減免に関する相談1件、ハローワークに関する相談1件、国家賠償請求に関する相談1件、火災保険に関する相談1件の計7件の相談がありました。

直ちに受任につながるものはありませんでしたが、遺族年金に関する相談及びハローワークに関する相談については、当日の面談だけでは結論が出ないものであったことから、後日、担当した弁護士が関係する法令等を調査検討の上面談を行いました。

相談者の中には、これまで長期間にわたって行政側と交渉を重ねてきた方や、行政側の対応の不適切さから強い不満を抱えている方もいらっしゃいました。そういった中でも、委員の先生方は、相談者の話を丁寧に聴き取り、具体的なアドバイスをされていました。相談者の方々は、期待した回答が得られなかった場合であっても納得した表情で相談を終えられていました。

3 今後について

行政問題委員会では、平成29年2月7日に行政事件の研修会を行う予定です。同研修会の第1部では、今年の4月に施行された改正行政不服審査法について木佐茂男九州大学名誉教授にご講演いただく予定です。また、第2部では、当委員会の委員が、「行政事件のイロハ」と題して、情報公開請求や補助金の問題など日常業務で遭遇しやすい行政事件について講演を行う予定です。日々の弁護士業務に役立つ内容になると思いますので、是非ご参加ください。

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あさかぜ基金だより

月報記事

会員 今井 洋(64期)

はじめに

あさかぜ基金法律事務所から、司法過疎地である長崎県壱岐市の法テラス壱岐法律事務所に赴任し、平成28年10月をもって、3年間の勤務を終えました。

あさかぜでは、九弁連の皆様に様々なご支援やご指導を頂き、司法過疎地での勤務を終えることができたのはその賜物と思っております。御礼を兼ねて、壱岐の実情等をご報告させて頂きます。

壱岐市のご紹介

長崎県壱岐市は、壱岐島全域がそのまま市であり、人口は2万8千人ほどです。長崎県ですが、福岡市との関係が非常に深く、福岡には、壱岐の人口を超える数の壱岐出身者やその家族がいるそうです。

島外との交通は、博多港へ高速船及びフェリーが1日10往復、唐津港へフェリーが1日5往復している他、長崎大村空港へ飛行機が1日2往復しています。

島内の公共交通機関は、バスのみですが、本数が少なく、普段の足として使うのは困難なため、ほとんどの人が自家用車で移動します。

高度経済成長期には、漁業や海運業、土木事業などを中心に活気があったようですが、現在は、どこもあまり景気が良くなく、地元紙などでは、民間の平均収入は、公務員の半分以下と言われています。

司法過疎地での業務

壱岐市は、司法過疎地とされており、当然ながら、弁護士は少なく、私以外にはひまわり基金法律事務所の弁護士が1名いるだけでした。

業務について誰かに聞きたいことがあっても、すぐに相談できる環境ではありませんが、法テラスの電話相談のほか、あさかぜ時代にお世話になった福岡の経験豊富な先生方に電話やメールで相談することができ、弁護士として勉強できるとともに、精神的にも助けられました。

弁護士業務は、幅広いうえ、最近でこそ、マニュアル本も多く出るようになりましたが、まだまだ経験が物を言うことが多いと感じます。マニュアルにない実務的な知識や、知識に留まらない意識などを教えていただけ、大変助かりました。

また、なかなか他の弁護士と話をする機会もないなか、業務で福岡や長崎市に行くと、大変温かく接して下さり、孤独感が癒やされました。

事件傾向等

あさかぜでは、指導担当の先生方と共同受任させていただく他は、自分で法律相談等で受任した債務整理や離婚などの家事事件といった扶助事件が多くを占めていました。

壱岐でも、多くは同様の扶助事件で、あさかぜでの経験が生きたと思います。

また、数は少ないですが、賃貸借や遺産分割、保全といった事件や、成年後見や破産管財、相続財産管理人といった裁判所案件もありましたが、あさかぜで指導担当の先生方と共同受任させていただいた経験が活かせました。

振り返ってみると、あさかぜで経験したことは、そのまま司法過疎地の業務に役立つものだったと思います。

ただ、数年前までは、弁護士事務所の存在を広めつつ、過払い等の債務整理が業務の中心でしたが、ここ数年は、債務整理事件の占める割合が、非常に低下しました。その代わり、家事事件の占める割合が多くなり、全国的な傾向と同じです。

おわりに

壱岐での相談者には、九弁連の先生方が行っていた法律相談センターで相談したという方や先代の先生方らに相談したという方もいました。

先達の先生方が続けてこられた過疎地対策で、弁護士への信頼を培ってこられたからこそ、私も壱岐の方から多くの相談を受けることができたのだと思います。

また、壱岐は、土地柄が素晴らしく、魚介は言うに及ばず、壱岐牛あり、温泉あり、弥生時代の王都であった原の辻遺跡もあり、皆様も一度来ていただければ日々の疲れが癒されることは間違いありません。

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憲法リレーエッセイ 日本国憲法公布70周年記念講演

憲法リレーエッセイ

会員 栃木 史郎(65期)

1946年11月3日に、日本国憲法が公布されました。今年(2016年)11月3日は、憲法公布70周年となります。それを記念して、福岡県弁護士会は、11月3日、憲法の大切さをアピールするパレードを行うとともに、九州大学法学部教授の南野森先生をお招きした講演会を開催いたしました。

パレードでは、天神中央公園から講演会場である明治安田生命ビルまでの道を、憲法の大切さをアピールしながらの行進となりました。多数の市民も参加した、賑やかなものとなりました。

パレードが終了した後に南野先生による講演会が行われました。講演会場である明治安田生命ビルの大ホールは定員が446名ですが、満席となる大盛況でした。

南野先生は、元AKB48の内山奈月さんとの共著で、「憲法主義」(PHP文庫)という書籍を出版されましたが、なぜ出版を決意されたのか等出版に至る経緯を交えて、憲法とは何なのかについて、分かりやすく、ときにユーモアを交えて、お話いただきました。

お話の中で、南野先生は、憲法が憲法であるためには、国民の役割が大切であると強調しておられました。

そもそも、憲法は、権力者を縛るという13世紀のイギリスで成立したマグナ・カルタが源流となっています。当時のイギリスでは、絶対君主制の下で、国王が横暴を働き、国民の人権がないがしろにされてきました。それを是としない国民が、横暴を働く国王を縛るために、国王に対して突き付けたルールが、マグナ・カルタです。

現在の日本の憲法は、国の最高法規とされ、それに違反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しないこととされます。そして、法律や命令等が憲法に抵触しているかどうかは、最高裁判所が審査をすることとされております。

しかし、これまでの日本では、権力者によって、そのような憲法の役割が無視されるということが、度々起きていました。

その例として、刑法200条の尊属殺規定があります。

最高裁は、1973年、刑法200条が違憲であるとの判決を出しました。しかし、尊属・卑属の関係を重んじる国家観を壊すべきではないとの考えから、国会は、長い間、刑法200条を刑法典から削除しませんでした。刑法典の口語化に合わせて、1995年になってようやく、刑法200条が削除されました。

南野先生は、憲法違反とされた法律が、なぜ、20年以上も存続したのかという点について、それは国家権力に対して、憲法を遵守させる強制力がないからであるとおっしゃっていました。憲法に違反したとしても、それを取り締まる警察のような機関があるわけではなく、違憲と判断した最高裁の判決を無視しても、何らのサンクションも予定されていないのです。

しかし、国民が国家権力の動きを監視することによって、国家権力が憲法を無視する一定の歯止めになり得ます。国家権力に対して憲法の遵守を求めるためには、そして、憲法が憲法であるためには、国民が国家権力を監視する、憲法に従えと政治家に言い続けていくことが必要不可欠であるとして、講演は締めくくられました。

講演会終了後、南野先生を囲んで、懇親会が行われました。場所は、会場の明治安田生命ビルの近くの「大阪屋」という郷土料理店でした。講演会では聞くことのできなかったお話や、大学でのお話等、ざっくばらんな語り口で聞くこともできました。

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