福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2016年9月号 月報
『ジュニアロースクール2016夏 in福岡』報告
月報記事
会員 吉田 幹生(67期)
1 2016(平成28)年7月22日、西南学院大学法科大学院で行われました『ジュニアロースクール2016夏in福岡』について報告いたします。
2 ジュニアロースクールとは、中学生・高校生を対象に、法や司法制度の背景にある基本的な価値観(正義・公平等)やルールを学んでもらうイベントです。
今回のジュニアロースクールは、今年から選挙権年齢が引き下げられ、参院選などで、18歳、19歳が初めて投票したため今まで以上に関心の高まっている主権者教育をテーマとし、中高生に身近な学校の文化祭を題材に「民主主義と代表制」について考えてもらうということで行いました。
3 とある高校で、「生徒みんなで作る文化祭!」をコンセプトに、生徒の代表として、24名の実行委員による実行委員会と、1名の実行委員長をおき、実行委員会では、文化祭についてのいろいろなルールを決め、実行委員長は、そのルールにしたがって、判断・運営していくという設定のもと、以下のプログラムの内容を行いました。
(1) 第1部 ミニクイズ
最初の第1部ミニクイズは、参加者にイメージをつかみやすくしてもらい、実行委員と実行委員会の違いを理解してもらうために、「バンド発表で1つのグループが演奏する曲数を決めるのは実行委員会と実行委員長のどっち?」などのクイズを出題しました。
(2) 第2部 実行委員会、こんなルールを作っていいの?
第2部では、まず、最初に「ステージ使用は女子が優先する」などの「こんなルール作っていいの?」というようなルールを作ろうとしている実行委員会の話し合いの様子を、弁護士による寸劇で表現しました。各々の弁護士が迫真かつ体を張った演技で、参加者の心をがっちりと掴んだのではないかと思います。
その後、「こんなルール作っていいの?」というようなルールを実行委員会が作っていいのか、中高生が各班に分かれて話し合いを行いました。中高生の話し合いには弁護士が参加し、弁護士が中高生の議論をうまく引っ張って、議論を盛り上げていきました。中高生の表情を見ていると非常に活き活きして自分の意見を発表していました。また、中高生たちの率直な意見や鋭い意見も出て、見ていて頼もしく感じました。
(3) 第3部 実行委員はどうやって選ぶべき?
「実行委員はどうやって選ぶべき?」というテーマで、A案:クラス内で選挙を行って、クラス毎に2名ずつ選ぶ、B案:全校で立候補者を募り、全校で選挙を行って得票数の多い人から選ぶ、という2つの立場を各班に割り振り、論拠をまとめて発表をしてもらい、講評を行いました。中高生からは、弁護士が想定していた論拠がほぼすべて発表され、中高生の理解が深まっていると感じました。
(4) 最後に弁護士から、講評を行いました。講評の中では、第1部から第3部で考えてもらったように、代表に誰を選ぶかで、作られるルールや文化祭のよしあしも変わることを説明しました。そして、このことは、国政についても同じで、国民がルール作りの代表を選び、行政が執行すること、ルール作りは、多数決では侵害できない少数者の人権など憲法の制約を受けることなどの説明を行いました。
4 終了後に参加者に記載してもらったアンケートの内容も非常に好評でした。アンケートの中には、「寸劇が分かりやすくて良かった。」という意見があり、体を張った甲斐があって良かったです。
5 最後に、今後、中高生に限らずに、「主権者教育」や「法教育」の視点がいろいろな場所で取り入れられていければいいと思います。