福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2016年4月号 月報
あさかぜ基金だより ~あさかぜQ&A~
月報記事
弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士 河野 哲志(67期)
Q.あさかぜって?
A.あさかぜ基金法律事務所は、九州弁護士会連合会が、九州内の弁護士過疎地域に赴任する弁護士を養成するために基金を作り、平成20年9月、その基金から資金を拠出し設立した都市型公設事務所です。同様の都市型公設事務所としては、北海道のすずらん基金法律事務所、東北のやまびこ基金法律事務所などがあります。
あさかぜという名称は、鉄道に造詣の深い斉藤芳朗・福岡県弁護士会前会長のアイデアで、九州を走っていた寝台特急あさかぜから名付けられたそうです。
Q.どこに行くか決まっているの?
A.九州内の弁護士過疎地域という条件以外は決まっていません。選択肢としては、(1)ひまわり基金法律事務所、(2)法テラス4号事務所、(3)日弁連偏在対応弁護士等経済的支援を受けての独立開業などがあります。
今までに15名の弁護士が、九州内の弁護士過疎地に赴任しています。
Q.ひまわりや法テラスとは違うの?
A.ひまわり基金法律事務所は、日弁連・各弁護士会が協力して設置を支援する過疎地型公設事務所です。法テラス4号事務所は、総合支援法30条1項4号にもとづき、国が設置しています。
いずれも、あさかぜからの赴任先の候補になりますが、それぞれ別組織です。
Q.どのくらい福岡にいるの?
A.大体2年くらいです。
それぞれの弁護士があさかぜで養成を受ける期間は、赴任するタイミングなどによって、変わってきます。ただし、最長でも3年以内と定められています。
Q.いま事務所に何人いるの?
A.現在、所員5名(66期1名、67期2名、68期2名)と事務局2名が所属しています。
Q.誰から指導を受けるの?
A.あさかぜは、委員会方式という運営方式を採っており、所長はいません。
各所員には、福岡県弁護士会所属の指導担当弁護士3名がそれぞれ選任されていて、共同受任などを通じて指導を受けます。そのほかにも、福岡県弁護士会の執行部経験者を中心にしたあさかぜ応援団や九弁連管内の弁護士との共同受任や事件紹介を通じて経験を積んでいます。
事務所経営に関しては、基金管理委員会と事務所運営委員会から指導・助言を受けています。月1回の割合で、事務所のメンバーのほか、運営委員会委員長や担当副会長も参加し、会議を開いています。ここでは、キャッシュフローデータに基づき、収入・支出の流れの把握に努め、経営ノウハウ等についてもアドバイスを受け、赴任地で事務所経営を行えるよう経験を積んでいます。
また、委員会活動や各種研修にも積極的に参加するようにしています。
Q.どんな事件が多いの?
A.共同受任している事件はバラエティに富んでいます。弁護士過疎地での赴任を見据え、たくさんの種類の事件を経験できるのはありがたいことです。たとえば、破産管財人や後見人には、弁護士過疎地への赴任直後から選任される可能性があるからです。
単独で受任する事件では、刑事、債務整理、離婚などが多い印象です。
Q.赴任したらずっと司法過疎地にいるの?
A.弁護士過疎地に赴任した後の選択肢は弁護士それぞれの自由です。
ひまわり基金法律事務所の任期は2~3年(延長可能)となっていて、選択肢としては、その地で自分の事務所として定着したり、別の弁護士に引き継いで独立したりすることが考えられます。
定着できるかどうかについては、単純に経営上の問題だけではなく、生活圏が限られ人間関係が密接になるとともに、事件処理数が増える毎に事件関係者・利益相反関係が増えてしまうといった難しい問題があったりします。
任期終了後、九州各地で独立開業することも多く、指導担当弁護士に誘われてその弁護士の事務所に入所したケースもあります。