福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2015年10月 1日
◆憲法リレーエッセイ◆
憲法リレーエッセイ
会 員 佐 川 民(58期)
私が前回憲法リレーエッセイの執筆を担当してから8年が過ぎました。その間、憲法をめぐる情勢は大きく変わりましたが、私自身の生活も大きく変わりました(子持ちになりました)。それまでは、コスプレして憲法劇に参加したり、福岡県内の大学生と憲法問題についてイベントを企画したり、ご飯を食べながら夜遅くまで議論したりと自分のやりたいことを自由にやっていました。しかし、今は、可愛いわが子とのふれあいを最優先する生活を送っているために、これまでのように身軽に集会やイベントに参加することは少なくなりました。とはいえ、子どもが生まれたことで、それまで取り組んできたいろいろな問題(教育問題とか社会保障の問題等)について当事者という視点でも見ることができるようになり、これまで以上に何か取り組みたいという思いが強くなっていました。特に、安倍政権になってからの安全保障をめぐる動きは、本当に「茶色の朝」を迎えてしまうんじゃないかと思い、何かしたいという気持ちにモヤモヤさせられていました。毎日保育園で頑張っているんだから、土日は子どもたちと一緒にいてあげたいなぁ、でも、今行動しなければ後悔しそうだし・・・。
モヤモヤしていても健康に良くないので、現在、私は、子連れで参加できるような集会やイベントには子どもと一緒に行くことにしています。特に週末のパレードは、積極的に参加しています。弁護士会主催の憲法集会にも、子どもと一緒に参加し、ベビーカーを押してパレードもしました。アナ雪のコスプレをしてパレードしようと誘っているので、子どもたちも、毎回パレードを楽しみにしています。実際、集会やパレードに参加してみると、私以外にもたくさんのお父さんお母さんが子どもを連れて参加していました。集会では、いろいろな立場からの発言がありますが、やはりお母さんの発言が一番私の胸を熱くさせます。皆さん、子どものことを考えると、いてもたってもいられなくてという思いのようです。子連れで参加するようになって、ウチの子にもすぐにパレード友だちができました。「せんそー、はんたい。」「けんぽーきゅうじょうでよかろうもん。」と友だちと一緒にコールしています。
法律家的には、子どもにも思想良心の自由や表現の自由があるのだから、親の一存で子どもを集会やパレードに連れて行くことはどうなんだろうという思いもありました。でも、子どものことを考えれば考えるほど、今行動しなければという気持ちが強くなります。子どもに「どうして、『せんそーはんたい』って言うと?」と聞かれたことがありました。そのときは、「○ちゃんが大人になったときにも、今のようにみんなでご飯を食べて、ベッドでゆっくり眠れるようになって欲しいなと思っているから、『せんそーはんたい』って言うのよ。」と説明しました。今は、コールしている言葉の意味もよくわからないまま、子どもは「せんそーはんたい」と言って私と一緒にパレードして遊んでいるだけです。それでも、今の子どもが理解できる範囲で分かるように私の気持ちを説明し、どうして私がパレードするのかを子どもに伝えることは、これから先、子ども自身がこの問題について自分で考えるための一つの材料になるのではないかと考えています。
茶色の朝を迎えないために、今の私にできること。それは、子どもに私の気持ちを伝え、子どもと一緒に「せんそーはんたい」と言ってパレードすることです。そして、いつか子どもも自分で考えて「戦争反対」と言ってパレードするようになるといいなぁと思います。あ、子どもが「戦争反対」と言ってパレードしなくても毎日安心して生活できる日が来るのが、親としては一番うれしいですね。