福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2015年7月 1日

◆憲法リレーエッセイ◆ 土曜夕方の天神に立って・・・

憲法リレーエッセイ

会 員 永 尾 廣 久(26期)

6月の土曜日、夕方4時すぎ天神

6月13日(土)夕方4時すぎ天神に立っていた。ソラリアの真向いのバス停近く。そのとき、私は、福岡県弁護士会のロゴ入りの真新しいゼッケンを身につけ、手には「戦争で平和を守れるの?」という絵入りプラカードを持っていた。何のために、そんなことをしていたのか・・・。

やがて、車道上を交通警察官の先導する一群の人たちがやって来た。ハンドマイクで叫ぶ女性がいる、「戦争反対、憲法こわすな。九条守ろう、ノーモア・ウォー」。私も、一緒に声をあげる。

むし暑かったが、カンカン照りではないので、絶好のパレード日和だ。道行く人々は、何だろう、この人たちは・・・、と注視している。

車道を行進している人たちのなかに、足の悪い若い女性がいるのを見つけた。それでも、彼女は、一生けん命に歩いている。みんな真剣な表情だ。

「戦争、戦争、いらんばい」

「憲法9条でよかろうもん」

「ケンカせんでもよかろうもん」

「戦争法案、いらんばい」

その女の子が口を動かしているのにあわせて、私もこの「ぶらぶらコール」なるものを唱和した。私が40年以上も前の大学生のころには、シュプレヒコールと呼んでいた。リーダーのかけ声にあわせて「ナントカ反対」と叫ぶのだ。今では、そんなの古臭いと言われてしまう。なるほど、今の状況にあったことを言いたい。

目の前の集団が通り過ぎても、次の集団は、なかなかやって来ない。さすがに福岡・天神にはバスが多い。「切れ目ない」安全保障どころか、「安全」のためには、「切れ目」ばかりになってしまう。

次にあらわれた集団は、おばちゃんが元気だ。ハンドマイクなしにコールをする。さすがだ。前田和馬理事長が集会で言っていたように、中年女性が日本をリードしている。私も、おとなしくコールを唱和する。

いよいよ、最後の悌団がやって来た。すごい。仮面をかぶり、アフリカの民族太鼓を叩きながら行進してくる。コールもマイクを使い、本格的だ。

軽乗用車が止まり、「何をしているんですか?」と運転手の若い女性が訊いてくる。すぐさま、プラカードを示して、「戦争法案に反対して行進しているのよ」と説明する。「がんばってください」というエールが返ってきたのに、私も勇気百倍。

ようやく、解散地点の中央公園に到着した。サウンドカーには弁護士二人(後藤、栃木の両会員)も乗っていて、何やら楽しそうに踊りながら叫んでいる。

「戦争法案、いらんばい」

当会の会員でもある仁比聰平参議院議員が向こうから歩いてくる。パレードに最後まで参加したのだ。えらい。集会での挨拶も良かったけれど、パレードに最後までつきあったというので、改めて見直した。

6月の土曜日、午後1時すぎ、天神

午後1時、開場と同時に天神近くの福岡市民会館に少なからぬ人々が入っていった。午後1時半開場というのに、すごい。これは満員になると期待した。

午後1時半を過ぎると、入口は入場者が「切れ目ない」というより、なだれをうつように入ってくる。しかも、みな真剣な顔つきだ。国会で強行採決もありうるという情勢を反映しているのだ。何か楽しい催物を期待してきたという雰囲気ではない。

案内係は声を枯らして資料を配り誘導する。会場内は、市民集会がスタートした午後2時には、ほぼ満席になった。1770人収容の大ホールを弁護士会主催の市民集会で満杯にするなんて、信じられないことだ。でも、それが今、現実のものとなっている。結局、立見の人もいたので、実数で1800人が参加した。弁護士も200人の参加があった。

健康法は講演で思いのたけを話すこと

原田美紀会員(北九州部会)が司会して市民集会が始まった。

斉藤芳朗会長が、弁護士法に定める弁護士の使命から、憲法違反の安全保障法制案の成立は許されないと開会宣言する。

次いで登場するのは、憲法伝道師だ。集会のメインイベントは、伊藤塾の塾長でもある伊藤真弁護士の講演だ。

私は、津田聰夫元会長(実行委員長)と一緒に福岡空港に出迎えに行き、昼食を一緒にとった。会場までの車中で伊藤弁護士に健康法をたずねた。年間240回の講演会をこなし、前日も東京都内で6時間の講演・講義をすませたばかりだという。伊藤弁護士の答えは、自分の思っていることをすっかり吐き出すこと、それに尽きるという。別に、スポーツはしていないし、その時間もとれないという。

それにしても、パワーポイントの映像をつかった話は、明快であり、歯切れがいいから理解もしやすい。集団的自衛権の行使は、これまで政府が一貫して許せないとしてきたこと。それは自衛隊が海外で武力を行使することを意味する。憲法を変えずに、自衛隊が武力行使をするのは許されない。

最後に、あせらず、あわてず、あきらめずに取り組もうとの呼びかけがなされた。まったく同感だ。

画期的なメッセージ

自民党の有力な元議員が安保法制法案に反対しているというので、弁護士会としてメッセージを要請した。すると、すぐに山崎拓元副総裁からメッセージが届いた。

「今次、安全保障法整備法案は、わが国の集団的自衛権行使を容認する解釈改憲を前提としており、従来より堅持されてきた専守防衛政策や海外派兵を認めない防衛政策の重大転換を図ろうとするものであります。これに対する正しい国民世論を喚起する意味で、国会における徹底かつ慎重な審議並びに強行採決回避を要請する必要があり、本市民集会もその方向で強くアピールされんことを期待します」

つづいて、やきもきしているうちに、古賀誠元幹事長からも届いた。

「戦後70年、我が国の安保政策の基本は憲法に則り、ひたすら専守防衛でありました。今回、その考え方が憲法の解釈をかえることによって正反対に変えられようとしています。専守防衛を捨て去り、世界のどこへでも後方支援の名のもとに、武力行使しない国が行使をできる国に変わることになります。

我が国の安全保障政策の大転換であることは間違いありません。先の大戦で父を亡くした私の思いは平和の尊さと戦争の愚かさであります。平和な国を次の世代にも未来永却に繁いでいくことこそ私に課せられた責務なのです。国会における誠実で真摯な議論を熟望し市民集会の成果を期待し、関係者各位のご尽力に敬意を表し、我が国の平和と安全を祈念しメッセージと致します」

さすが仁比弁護士・・・・

集会では、政党代表の挨拶のあと、リレートークがあった。

政党では、民主党から野田国義議員がまず挨拶した。八女市長をつとめていたこともある野田議員は弁護士会とも親しい関係にあり、労働者派遣法の改正も重大な問題だと強調した。次に登場した仁比参議院議員の話は、いつ聞いても、なるほどと思わせるもので、秀逸だった。社民党副代表の話で、戦争しない国ということで、日本に留学する学生がいるということを知った。日本の平和ブランドは大切にしたいものだ。

リレートークは、時間が足りないなかで、それを気にせず話したい人ばかりで、進行係はやきもきせざるをえなかった。若者(大学生)、子どもをもつ母親、港湾労働者の徴用問題など、二人の学者を含めて大切なことが語られた。でも、いかんせん、時間をはるかにオーバーしている。前田和馬・九弁連理事長は、そんなことを気にすることなく、安倍政権は悪徳サギ商法と同じことをしていると強調したうえ、韓国の金大中大統領(故人)の言うように、良心があるなら行動に移すべき、本日のパレードにぜひ参加してほしいと訴えた。

予定時間をはるかにオーバーして、パレード担当者には命の縮まんばかりの思いをさせてしまった。申し訳ない。

それでも、集会もパレードも大成功した。この力で平和憲法を守り抜きたい。

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