福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2015年4月号 月報
あさかぜ基金だより ~壱岐ひまわり基金法律事務所引継式~
月報記事
弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士 河 野 哲 志(67期)
はじめに
1月にあさかぜ基金法律事務所に入所しました河野哲志です。
滋賀県出身で、修習まで関西で過ごしました。とある出来事から法の支配が十分でない現状を考えるようになり、また、九州を旅行し、料理と人の温かさに心動かされ、あさかぜに入所させていただきました。
さて、去る2月23日に壱岐ひまわり基金法律事務所引継式が開催されました。あさかぜ出身の松坂典洋弁護士が退任し、同じくあさかぜ出身の島内崇行弁護士が赴任されるため、後輩として引継式に出席しましたので、報告いたします。
壱岐ひまわり基金法律事務所
壱岐市は、人口2万7000人、面積138km2、福岡市から北西80kmに位置し、高速船で1時間です。海の幸が豊富で、稲作も盛んな豊かな土地です。麦焼酎発祥の地としても知られています。
壱岐ひまわり基金法律事務所は、平成22年に開設、梶永圭弁護士(現・宮崎県弁護士会)が初代所長として活躍し、平成24年、松坂弁護士に引き継がれ、今年、島内弁護士が赴任することになったものです。
引継式
引継式は、長崎県弁護士会公設事務所支援委員会の山下俊夫委員長の司会で進行し、九弁連の森雅美理事長、日弁連の山崎博副会長、長崎県弁護士会の梅本國和会長、松坂弁護士、島内弁護士が登壇されました。そして、松坂弁護士が任期中の感懐を、島内弁護士が今後の抱負を述べられました。
松坂弁護士は、平成24年相談件数303件(うち受任件数238件)、平成25年143件(76件)、平成26年103件(84件)を取り扱いました。初年度の件数が多いのは、大規模カード詐欺事件の影響です。
松坂弁護士は、争いの顕在化を好まない壱岐の島民性に配慮し、当事者の関係性が継続することを踏まえた解決を心がけたそうです。もっとも、権利の実現のため必要な場面では、法的解決について具体的なメリットを丁寧に説明し、背中を押す場面もあったとのことです。また、25回もの講演会を開き、市民への情報発信にも熱心に取り組みました。たとえば、カード詐欺事件で、高齢者が多く、人の善い島民性を狙われたという背景を踏まえ、「悪徳業者から高齢者を守る方法」をテーマに講演をしたとのことです。このような誠実かつ親身な松坂弁護士の姿勢が評判となり、口コミから受任に繋がるケースが着実に増えていったそうです。
島内弁護士は、身近に弁護士がいないことで困ったという自身の経験を踏まえ、福岡に何度も足を運ばなくても身近に弁護士がいると頼りにしてもらいたい、という思いを述べました。また、ひまわり所長ということで、気軽に話しかけてもらえることが多く、前任者が培ってきた信頼を引き継ぐことの責任を痛感したそうです。高齢や島民性に付け込むような消費者問題に対し、成年後見制度をより周知させ、市民の誤解を解くなどして、高齢者の財産管理を積極的にできるようにしたい、との具体的な抱負も述べていました。
披露会
続いて引継披露会では、壱岐市長、市議会議員、商工会議所など地元関係者、長崎地裁壱岐支部長や九州各地の公設事務所関係者が多数出席され、地元マスコミの取材もありました。松坂弁護士が、地域の方々や裁判所から信頼を得ていて、島内弁護士への期待も大きいことがうかがわれました。
披露会では、壱岐の魚介類をふんだんに使った料理も振舞われました。壱岐の料理は評判以上のものがあり、とくにブリは脂がのってとても美味しく、あっという間になくなってしまいました。
公設事務所支援委員会
披露会のあと、長崎県弁護士会の公設事務所支援委員会が開かれ、所員も許されて、出席しました。各地の公設事務所の事件処理や運営状況の報告など、赴任する際の事務所運営面で有意義な情報を得ることができました。
事務所見学
帰福便までの間、壱岐ひまわり基金法律事務所を見学しました。
松坂弁護士から、密接な人間関係での注意点などを聞き、利益相反という赴任先で必ず直面する問題について大変勉強になりました。
松坂弁護士は、ふたたび福岡県弁護士会に登録されます。私たち「あさかぜ」の所員にとっては、赴任経験者の先輩が身近に増えたことになり、大変心強く思います。
おわりに
今回、壱岐ひまわり基金法律事務所が、市民に本当に頼りにされ、法的な悩みを抱える方々にとってなくてはならない存在になっていることを実感しました。赴任に向け、先達が勝ち得た信頼を積み重ねていけるよう、さらに研鑽を続けねばならないと決意を新たにしました。
最後に、壱岐ひまわり基金法律事務所のますますの発展を祈念して、本稿を閉じたいと思います。