福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)
2015年1月号 月報
あさかぜ基金だより 退所のご挨拶
月報記事
会 員 島 内 崇 行(65期)
1 離島の公設事務所について
あさかぜ基金法律事務所の所属弁護士の島内と申します。
九弁連管内の各地には、司法過疎地域が点在しており、司法過疎地域解消のために公設事務所が設置されています。そして、数多くの公設事務所の中でも、離島の公設事務所は、司法過疎地域解消にとって特に重要な存在です。離島は、島だけで1つの生活圏、文化圏が形成されて人の入れ替えが見込めません。離島での業務は、年月が経つにつれ、利益相反の問題が生じる案件が増加し、必ず受任できる事件数が減っていくのです。ですので、離島では、弁護士が定着することが非常に難しく、所長弁護士が短期で入れ替わっていく箱としての公設事務所が必須なのです。
その九弁連管内の離島の一つである長崎県壱岐市にも、壱岐ひまわり基金法律事務所という公設事務所があり、平成27年1月頃、現所長の松坂典洋先生が、任期満了で退任されます。さらには、長崎県対馬市の対馬ひまわり基金法律事務所において、任期満了による現所長弁護士の退任が、平成27年初頭に控えております。この2事務所は、設立当初から、短い期間で引き継ぎがなされており、今後も定着を見込むことが出来ない状況と思われます。
2 赴任のご挨拶
さて、冒頭で説明した壱岐・対馬のひまわり基金法律事務所ですが、私は、平成27年1月より、長崎県弁護士会に登録替えをし、壱岐ひまわり基金法律事務所の後任所長として赴任することになりました。私は、平成24年12月に弁護士登録しましたので、ほぼ2年間あさかぜ基金法律事務所に在籍することになりました。
ひまわり基金法律事務所の所長弁護士は、全国各地から応募を募り、その応募者の中から、各ひまわり基金法律事務所を支援する支援委員会による選考を経て、採用されます。
そして、壱岐ひまわり基金法律事務所につきましては、後任所長を選定する選定委員会が、平成26年8月22日、長崎県壱岐市で開かれました。私も、九弁連管内の司法過疎問題には九州で対処するという理念のもとに設立されたあさかぜ基金法律事務所の所員として、壱岐ひまわり基金法律事務所の後任所長に応募のうえ、選定委員会による選考手続を受けました。後任所長に応募した弁護士は、私を含め2名でしたが、私は、なんとか採用にたどり着くことが出来ました。
福岡では、前日の8月21日の深夜からバケツをひっくり返したような大雨が降り、私は、何度も緊急エリアメールの着信音に睡眠を邪魔され、寝不足のまま現地に向かうことになりました。また、当日は、大雨の影響で波が普段より高く、乗り物酔いに対する耐性が低い私は、簡単に船酔いすることになりました。
このような逆境にもかかわらず、採用にたどり着くことができたのは、偏に私が育成を受けたあさかぜ基金法律事務所に深く関わっていただいている皆様のご支援、ご協力のおかげでございます。
3 あさかぜ基金法律事務所について
私は、間もなく慣れ親しんだ福岡の地を離れ、壱岐に赴任します。壱岐(離島)での業務は、離島のひまわり基金法律事務所所長を経験された方々のお話を伺う限り、経営・私生活含め易しくはないようです。
しかし、私は、あさかぜ基金法律事務所で育成を受けた成果を存分に発揮し、これまでの所長弁護士と同様、又はそれ以上のサービスを提供できるよう、全力を尽くす所存です。
あさかぜ基金法律事務所は、所員一同、司法過疎問題解消への熱い思いを胸に抱きながら日々研鑽を積み、司法過疎地域への赴任の準備を着々と行っております。実際、当事務所は、これまでにも、多くの司法過疎地域に赴任した弁護士を輩出し、九州管内の司法過疎地域解消の大きな原動力となっております。
ですので、今後も、当事務所が九弁連管内の司法過疎地域解消のために存在し続けるため、皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いします。
災害対策委員会報告(東北大震災関連) 福島現地視察のご報告(2)
月報記事
会 員 池 上 遊(63期)
―前号からの続き―
4 3日目(11月3日)
この日は祝日ということもあり、視察と言いつつ、二本松市内の酒造会社「奥の松」へ伺いました。当日は、たまたまイベントが開かれていて、無料でお酒が振る舞われていました。朝から飲み過ぎてしまいました。この後もジンギスカン(昼)や中華料理(夜)を堪能して視察らしい話がまったくないので省略します。
5 4日目(11月4日)
前日のうちに福島市内に移動し、4日目は福島県(避難者支援課)及びふくしま連携復興センターとの間で意見交換会を行いました。
福島県からは、主に県外避難者への支援(ふるさとふくしま帰還支援事業)を中心にご説明いただきました。現在でも12万4661人の避難者がいること(県内外合計、平成26年10月現在)、これら避難者に対し、地元紙、広報誌等の送付、避難者支援団体への補助事業、全国的な避難者支援中間組織への業務委託事業、県内の避難者支援中間組織(ふくしま連携復興センター)への業務委託、県外への復興支援員設置を実施していることなどをご説明いただきました。
ふくしま連携復興センターは、上記の業務委託を受け、現在は、主に避難者からの相談を受けているとのことでした。今後、避難者、避難者を支援する各種の団体、行政をつなぐ役割が期待されているようです。
以上で、今回の行程を終え、行きと逆のルートで帰福しました。
6 おわりに
私は、原発事故の年からすでに6、7回福島に行かせていただきました。
いつも気になるのは、煌々とともる東京の灯りに比較して福島の灯りの少なさです。極端な言い方かもしれませんが、福島は東京に食べられた、いつも行くたびにそんな印象を持ちます。福岡では報道されることが少ないですが、福島は復興の緒にもついていません。
現在は、政府が安全性ばかりを強調して滞在ではなく帰還を勧めること、避難者を区域によって線引きしたことによって被害が拡大再生産されています。
除染したのに線量が元に戻る、避難先で子どもたちがいじめを受ける、「避難者」と呼ばれるのが辛いと感じる、なぜ避難したのかと非難される。福島の避難者からはこのような話をよく聞きます。原発事故による被害は今も生まれ続けていますし、その意味でも原発事故は収束などしていません。
11月に新たに福島県知事となった方も原発事故の過酷さと今の厳しい現状を踏まえ、県内の全原発の廃炉を国や電力事業者に求めていくと発言されています。
私としては、今後も原発事故による被害をあるがままに見つめ、消されようとしている被害者の声を聞いて、弁護士としてどのような支援ができるのかを考えていこうと思っています。
特定秘密保護法施行直前シンポジウムのご報告
月報記事
会 員 吉 田 純 二(60期)
1 100人を超える聴衆
特定秘密保護法に対しては、国民から「知る権利」を侵害し、民主主義社会の根幹を揺るがす希代の悪法であるとの反対意見、危惧が多く聞かれ、日弁連また当会を含む全国の各弁護士会もこれまで同法の成立、施行に一貫して反対し、意見表明、街宣行動、シンポジウムなど様々な運動を行ってきました。
しかし、反対の声をよそに平成25年12月6日、同法は成立し、昨年12月10日、施行されてしまいました。その後の報道によると、外務防衛両省だけでも秘密指定が計6万件にも上る見通しとのことです。
さて、同法施行を目前にした平成26年11月8日、当会では秘密保護法について考えるべく「秘密保護法で社会はどう変わる?−この道はいつか来た道、とならないために−」とのシンポジウムを開催しました。会場の弁護士会館3階ホールは計100名を超える市民、会員、報道関係者等が来場し、熱気に満ちた雰囲気となりました。
2 田島教授の基調講演
三浦会長の挨拶の後、我が国のメディア法研究の第一人者で、同法に反対してこられた田島泰彦教授(上智大学)が「特定秘密保護法施行前に−問題点と課題を考える。」と題した基調講演をされました。
田島教授は、本法成立の経緯として約30年前の中曽根内閣時に構想され反対に遭い成立しなかったスパイ防止法、2006年の第一次安倍内閣におけるカウンターインテリジェンス(防諜活動)の強化、という流れがあったことを説明された上で、この法律の制定は、表現の自由規制、自衛軍創設、秘密情報機関(日本版CIA)、憲法改正と政府が構想しこれから展開していく流れの第一歩であると指摘されました。
同法は国家の情報の保管だけでなくその前の取得や取り扱う者の管理(適性評価制度)の段階から前のめりになって国家秘密を守ろうとするもので、これを土台として秘密国家化が増殖する。同法は原則情報の開示範囲を拡大し、例外の秘密とされる部分は最小限にしようとしている現代の国際的な民主主義の方向と逆行するものだと同法を厳しく批判されました。
また同法の予定する秘密指定・監視の仕組みについても、独立公文書管理監、内閣保全監視委員会は官僚同士が身内で監視するもので実効的な監視が期待できないこと、国会議員で構成される情報監視審査会もメンバーはほぼ与党で占められ、委員に罰則・懲戒のある守秘義務が課されるため、充分な監督が期待できないことを指摘され、いずれの監督機関も秘密指定にコミットすることができず、強制力もないため監視の実効性がないと批判されました。
3 西山太吉さんの基調講演
続いて、沖縄密約事件で有名な西山太吉さん(元毎日新聞記者)が「沖縄密約とは何であったのか−最高裁判決を経て−」と題した基調講演をされました。
西山さんは自身が原告となった沖縄密約文書に関する情報公開訴訟の最高裁判決(平成26年7月14日)までの経緯(第一審は歴史的勝訴、控訴審逆転敗訴、最高裁も控訴審を維持)を説明されました。
西山さんによれば90年代、米国政府から25年経過で開示を受けた公文書から沖縄返還交渉時日米間に密約があったことは明らかだったにも関わらず、日本政府は一貫してこれを否定し続け、文書を廃棄し、上記訴訟においても文書がないと主張してきたとのことです。上記の最高裁判決はそのような経緯から文書が廃棄された可能性が充分あると立証したにもかかわらず、原告側に現在の文書の存在の立証責任を負わせ、当時文書があったという証明ができないから敗訴となったとのことで、西山さんはこのことについて、「官僚が文書を廃棄すれば開示を免れられるという不当なことを最高裁が認めてしまっている。」と批判されていました。そしてこの判決について知る権利の重要性と秘密保護法施行後への示唆を含んだ重要なものだった。そういう観点からの報道が全くなかったとも言われていました。また、西山さんは「知る権利の保障の前提は知らせる側がいることだ。ウォーターゲート事件やベトナム戦争のペンタゴンペーパーもそうだった。この秘密保護法は知らせる側を規制するわけだから知る権利が成り立たなくなる」と警鐘を鳴らされました。
4 パネルディスカッション
その後、田島教授、西山さんに、浦川修氏(歯科医、福岡県歯科保険医協会理事)と武藤糾明会員が加わり、パネルディスカッションが行われました。浦川氏は同法が予定している秘密取扱者への精神病歴等を中心とする適性評価制度は、精神疾患者への偏見を助長し医療を受ける権利を侵害するだけでなく、医師に患者情報の提供を求めるもので医師の守秘義務という根本原則を破壊し極めて問題であるとされ、武藤会員は国際比較、歴史に照らして見て日本の秘密保護法の問題であること、立法事実もないことなどを説明しました。
更に、今回のパネルディスカッションではパネリスト以外に4つの新聞社の報道部長クラスの方々からの会場発言がありました。
ある新聞社の方は、同法に「8割賛成2割留保である」とされ、「我が国の安全保障環境は悪化しているから、勿論プライバシーや表現の自由との関係で運用に慎重さが求められるにせよ、立法は必要だと思う。必ずしも戦前に逆戻りというわけではないと思う。適性評価制度等については危険なものを取り扱う人にはそれ相応の規制があってしかるべきでいわばフグの調理師免許の様なものではないか」との意見を言われました。
他方、反対する立場の方からは、同法による規制について「メディアがチェックできず、歴史的な検証ができなくなる」「副作用が大きすぎる」「現場の取材経験では、取材対象である公務員が「秘密保護法があるからね」などと言い、施行前なのに既に萎縮効果に似た影響が出ているように感じた」などの意見がありました。
5 最後に
今回のシンポの会場の雰囲気は独特のものがあり、参加された方の多くは、「こんな重要な問題について、必要性についての国民的議論の展開も充分な説明もないまま、さっさと国会だけで決められてしまっていいのか」と怒りと危機感を感じ「何とかせねば」「何をすればよいのか」と切実な思いを持っておられたように思います。11月22日にも当会主催の集団的自衛権に関するシンポが開催されましたが、そこでも同じような雰囲気を感じ、近年あまりにも憲法の価値観が疎かにされていることについて、国民的な怒りの胎動を感じたように思いました。
しかし、その後示された民意によれば、田島教授がおっしゃっていた流れが更に加速していく可能性が高いものと思われます。しかし、このような状況であるからこそ、諦めることなくなお一層これからの展開を厳しく注視し、立憲主義的視点から市民に分かりやすく訴えていく必要性を感じています。
武装より女装 ~集団的自衛権の市民集会に参加して~
月報記事
会 員 吉 原 育 子(64期)
1 はじめに
去る昨年11月22日、福岡県弁護士会主催の「憲法違反の集団的自衛権について考える市民集会」に参加させていただきました。
非常に熱気あふれる集会でしたので、年をまたいでその熱気をリポートさせていただきたいと思います。
2 熱気あふれる集会
集会は、福岡市・天神の都久志会館で行われました。
まず、会場に行って驚いたのは、640名弱入る会場が満席でロビーまで人があふれていたことです。参加されている方々の顔ぶれを見ましても、弁護士会以外の一般市民の方々が多く見受けられたように思います。
集会の第一部は、東京からお招きした憲法学者の青井未帆教授と小林節教授の講演でした。講演は、憲法の根本に立ち返った内容であり、かつ非常に明快な内容でした。
第二部は、パネルディスカッションが行われました。
先の講師のお2人に加え、高校生1名、大学生2名及び社会人代表として、いのうえしんぢさんがパネリストとして加わりました。
いのうえしんぢさんは、イラストレーターで、今回の集会のチラシのデザインをして下さった方です。添付の写真のとおり、人目をパッと引くデザインで、今回の集会に彩を与えてくださった立役者でもあります。
ディスカッションは学生らしい率直な意見が交わされました。
非常に耳に残ったのは、「将来、私達が戦争に参加しなければならない。」「私たちはまだ選挙権がない。」(高校生)、「集団的自衛権行使容認の閣議決定はいつの間にか決まってしまった。民主主義とはいえない。本来、憲法は権力者を抑止するものであるはずだ」(大学生)などという言葉です。今回の問題の本質をついた意見が出され、会場は熱気に包まれました。
3 武装より女装?!
会場を沸かせる名言もありました。
いのうえさんは、イラストレーターだけでなく、自らの主義・主張を奇抜なファッションでパレードやデモにて表現してきたそうです。そして、「普段から意思表示をすることが大事。」「武装より女装だ」と。
「武装より女装」の言葉に会場からはドッと笑いが起きました。小林教授も暗い話題が明るくなる、といのうえさんの言葉に共感されていました。
いのうえさんからは、表現の自由が奪われたことが戦争につながったという指摘もありました。憲法21条で保障されている表現の自由の重要性を改めて感じることのできたディスカッションでした。
4 DJパレード
熱気も冷めやらぬうちに天神を闊歩するパレードが始まりました。このパレードは、通常のパレードとは少し趣きが異なり、今どきの音楽に乗せて、若者がDJ風に「戦争反対!」「9条壊すな!」という掛け声をしながらパレードするというものでした。
ちょうど三連休の初日であったため、天神周辺の人通りはかなり多かったです。
携帯電話で写真を撮っている方を何人も見かけました。私も、当日の突然のオファーにより、なぜかよくわからないまま(?)博多ぶらぶらの衣装を着てパレードに参加しました。
5 今回の集会の大いなる意義
今回の集会とパレードの実施は非常に意義の大きいものであったと思います。「集団的自衛権」という言葉自体難しく、今、政府が何をしようとしているのか一般国民には分からないことが多いです。
しかし、だからこそ、この問題を肌で感じることが重要であると思います。そういった意味で、今回の集会は、次世代を担う高校生や大学生が参加し、またパレードも若者に向けたメッセージ性の強いものであり、市民の方々に与えたインパクトは強かったと思います。
「集団的自衛権」という言葉はどうやら昨年のユーキャンの流行語大賞を受賞したようです。しかし、一過性の話題に留まるだけでは意味がありません。 私たちや私たちの子ども・孫の世代が決して外国の戦争にいくことのないよう、さらなる活動が必要であると切に感じた市民集会でした。
「転ばぬ先の杖」(第11回) 事業者のみなさんへ~事業承継対策の必要性
月報記事
中小企業法律支援センター委員長
池 田 耕一郎(50期)
1 事業承継対策の必要性
私たち弁護士が中小企業の経営者から相談を受けていますと、以前と比べて、事業承継対策の必要性を意識している方が多くなったように感じます。
しかし、「事業承継の話はまだ先」と考える経営者が依然多いのも事実です。実際、事業承継対策の必要性は認識しつつも、対策が進んでいない企業が6割もあるという調査報告もあります。
企業経営者にとって、後継者にバトンを渡す「事業承継」は重要課題の一つです。後継者へのバトンタッチがうまくいかなければ、企業の成長が止まり、業績の停滞を招くおそれがあります。最悪の場合、廃業に至るケースもあります。また、事業承継対策は、単にその経営者個人の問題ではなく、従業員やその家族の生活、地域活力を維持することにもつながります。取引先からの信用評価という観点からも、相手先企業の事業の継続性に対する不安がマイナスポイントになることは否定できません。
2 承継の方法
事業承継の方法には、一般に、(1)親族への承継(親族内承継)、(2)従業員等への承継(企業内承継)、(3)第三者への承継(社外から次期経営者を迎え入れる、M&A等)の3つがあるとされています。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の「事業承継実態調査報告書」(平成23年3月)によると、「家族・親族への承継」が40.2パーセント、「役員・従業員への承継」が14.3パーセント、「第三者への承継」が2.6パーセントという結果が出ており(「明確に決まっていない」は28.8パーセント)、中小企業経営者がまず検討するのは親族内承継のようです。他人よりも身内のほうが無理がきく、という要素があるかもしれません。
M&Aときくと、かつては、将来に向けた明るいイメージよりも「身売り」のイメージが先行していたように思われますが、最近では、経営状態がよく企業価値が高いうちに事業を譲りたいという企業経営者も増え、M&Aに対する潜在的需要が増大しているようです。買い手候補として多角経営をめざして他社の事業を引き継ぎたいという企業も増えています。
中小企業版M&Aを推進する公的機関として「福岡県事業引継ぎ支援センター」が設置されていますが、国は、さらに中小企業のM&A支援策を推進するため、中小企業向けM&Aガイドラインの策定に向けた検討を始めました。
3 まずは弁護士に相談を
事業承継対策というと、税務面が頭に浮かぶという方も多いかもしれませんが、税金対策だけでは、次期経営者に安定した経営権を確保することはできません。
個人企業であれば、企業の権利関係と個人の権利関係が明確に分離されないため、相続に関する法務面の対策が不可避です。
法人企業(株式会社)の経営者であれば、相続問題とともに、株式の分散を防ぐ方策が重要な検討課題です。少なくとも取締役の選任決議を通せる過半数の株式(議決権)を、さらに合併や会社分割などの会社の行く末を決定する重要な決議を通すことができる3分の2以上の議決権を確保できる株式を次期経営者に残したいところです。株式以外に十分な資産がない場合には、種類株式の活用も検討すべきです。株式は相続分に応じて各相続人が分割取得するのではなく、遺産分割がなされるまで全相続人が共同して相続する(いわゆる準共有)状態になり、経営を不安定にするおそれがあります。遺言書の作成を含めた対策が必須です。
日常の商売(事業)をしながらでは、なかなか腰を上げるのが難しいかもしれませんが、事業承継対策は、企業経営者にとって避けては通れないテーマです。まずは、どこから取りかかるべきか、ワンポイントアドバイスだけでも受けてはいかがでしょうか。前述したように、事業承継対策にはすべて法律問題が絡みます。弁護士に相談することで、普段は子細に検討することの少ない部分も含め、事業全体の状況を明確に把握でき、事業承継のスキームづくりが見えてきます。
福岡県弁護士会では、中小企業の事業承継対策を積極的に支援しています。
弁護士の事務所で気軽に相談できる事業者のための相談窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設していますので、ぜひ活用してください(初回面談相談無料)。
ひまわりほっとダイヤル
電話番号 0570-001-240
(申込受付時間 盆・正月、祝日を除く月曜日から金曜日の10時から16時まで(12時から13時を除く))