福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2014年2月号 月報
「難民に関する研修会」開催のご報告
月報記事
会 員 岡 部 信 政(61期)
平成25年12月9日(月)午後5時より、福岡県弁護士会館にて「難民に関する研修会」が行われましたので、ご報告します。この研修会は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からの委託を受けた日弁連との共催によるものです。福岡では昨年に続いての開催です。講師は、関聡介先生(東京弁護士会)にお越し頂きました。
実は、福岡では現在、20名の弁護士でネパール難民弁護団を組織して、9名のネパール人難民申請者を支援しています。彼らは一時期大村入管に収容されていましたが、現在仮放免(長崎県弁の先生方のご尽力がありました)され、全員が東海地区に居住しています。そして難民不認定処分につき異議申立手続き中であり、審尋(名古屋入管で!)が行われつつあります。こうした状況をふまえて応用的、実務的な内容を中心にしつつ、初心者にも分かりやすいものとなるよう、お願いをしていました。
当日は、弁護団以外からも、長崎から参加頂くなど20名程度の参加者がありました。「難民」とは何か?という基本的な問題から(ただし、論点が多く含まれています)、難民申請手続(一次・異議)における弁護活動での留意点、訴訟における諸問題など、充実した資料と、経験に基づいた講義をしていただきました。訴訟はともかく、口頭意見陳述や審尋手続きについて経験が少ない我々は、それこそ「何を聞かれるのか」「何分話す機会を与えられるのか」といったつまらないことが気になっていましたので、関先生の講義を経て不安感はかなり払拭できたように思います。
日本での行政手続での難民認定率(平成23年)は一時手続・異議手続をあわせて1.5%であり、欧米諸国はいざ知らず、韓国の12%と比較しても「異常」と評価してよい状況です。しかも、難民参与員制度がとられている異議手続において、参与員が難民該当性を認めたにも関わらず法務大臣がその判断を覆すなど、制度が骨抜きにされている問題が報道されてもいます。申請者が増大して手続が滞留し、最終判断に数年かかることもあり、その地位は非常に不安定です。人権保障、手続保障のために弁護士が積極的に関与していくことが求められている分野です。
福岡入管を抱える当会としても、このような研修を通じて、難民事件に対応可能な弁護士を増やしていく必要があるでしょう。
さて、研修後には某有名もつ鍋店にて懇親会が行われました。忘年会の季節、地元の人間は食べ飽きた(?)感もありますが、楽しく情報交換をさせて頂きました。講師の先生もたっぷり堪能されたことと思います。