福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2014年1月 1日
◆憲法リレーエッセイ◆ 危険な秘密保護法~反対の声を~
憲法リレーエッセイ
会 員 井 上 敦 史(62期)
昨年11月29日、自民党の石破茂幹事長が、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と、あまりに非常識な発言をしました。
この発言は、秘密保護法案に反対する国民のデモ活動に対するものです。
あまりにも危険性を孕んだ法案であるので、国民は反対しているということを全く理解していないのでしょう。
当会でも秘密保護法案に反対する活動を行いましたので、秘密保護法にはどのような危険があるのかとともにご報告させていただきます。
昨年12月4日、12時から天神パルコ前で、秘密保護法案に反対する街頭宣伝活動を行いました。
橋本千尋会長を先頭に、30名を超える会員が大きな声を上げ、約1000枚のビラを配って、町の皆様に秘密保護法案の危険性を訴えました。
道ゆく人々の中には、私たちが配っていたビラを受け取り、「あの法案は危険だねぇ」、「頑張って」、「どういったところが危険なのですか」と話された人もいるほど、国民が関心を持っており、反対の声が大きい法案でした。
残念ながら、この法案は、強行採決となり12月6日に「秘密保護法」が成立してしまいました。
「秘密保護法」は国民主権原理の根幹を揺るがす大きな危険性を孕んでいます(秘密保護法の成立に至るまでの経緯で、すでに国民主権原理がないがしろにされているように思えますが・・・)。
この「秘密保護法」が孕んでいる大きな危険性は、以下のようなものです。
まず、「知る権利」(憲法第21条)を侵害しているという点があります。
「特定秘密」に指定されてしまうと、国民には何の情報も得ることはできません。私たちの国家で何が行われているのか、どのような方針で動こうとしているのか全く分からないようになってしまいます。その結果、私たちが国家統治に十分な情報を持って関われなくなり、「国民主権」という言葉は形骸化してしまいます。
また、ある情報を「特定秘密」に指定するのは行政機関となっているので、行政機関が自己に都合の悪い情報を秘匿できるようになります。国は情報操作をすることにより、「知る権利」を容易に侵害することができるのです。
次に、「特定秘密の対象範囲が広範で不明確だ」、という点があります。
「特定秘密」とは一体何なのか、法律に定義規定はあるものの明確には示されておらず、広範なものとなっています。
その上、「特定秘密」を取得する行為や、取得しようと話し合う行為などが処罰対象となっています。
そのため、記者が取材をしようとしたときに、実は取材の対象が「特定秘密」と指定されていたものであれば、罰せられることになってしまいます。記者は取材を萎縮するようになり、「取材の自由」、「報道の自由」を侵害することにもなっているのです。
さらに、罰せられる場合においても、「特定秘密」が明確でなく広範であるために、なぜ自分が罰せられるのか、裁判においてどのように防御すればいいのか分からない状態となってしまいます。
「特定秘密」が明確でなく広範であるために、様々な問題が生じています。
最後に、「適性評価制度」によりプライバシーが侵害されるという点があります。
「適性評価制度」は、「特定秘密」を取り扱う者を管理するために、住所歴などの人定事項だけでなく、信用状態や犯罪歴などの事項を調査して、「特定秘密」を取り扱う者としてふさわしいかどうかを判断されるというものです。
調査の対象は、本人だけでなく、家族などの周辺の者や医療機関、金融機関などまで含んでいます。
このようなセンシティブな情報を行政機関や警察が収集し、利用することにより重大なプライバシー侵害が生じるのです。
このように、秘密保護法は大きな危険性を孕んだまま成立してしまいました。
まだ今からでも遅くありません。この法律の危険性を訴えながら適用させず、廃止するよう声をあげていきましょう!!