福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2014年1月号 月報

給費制本部便り ~12.4市民集会と福岡県弁護士会の取組みの報告~

月報記事

会 員 髙 木 士 郎(64期)

1 はじめに

平成25年12月現在、司法修習生に対する経済的支援を含めた法曹養成制度のあり方は、平成25年9月17日の閣議決定により発足した法曹養成制度改革推進会議(および、内閣官房に設置された法曹養成制度改革推進室や顧問会議)において審議・検討されています。この推進会議での検討のなかで、司法修習生に対する充実した経済的支援策が盛り込まれるよう、日弁連及び各単位会では、議員要請や団体署名への協力要請など様々な働きかけを行っているところです。その一環として、12月4日に日比谷図書文化会館コンベンションホール(東京)において『司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を求める市民集会』を開催いたしましたので、現在実施中の福岡県弁護士会の取組みとあわせてご報告いたします。


2 12.4市民集会

12.4市民集会は、大盛況のうちに終わった10月30日の院内集会の盛り上がりを受けて、さらに広く市民を対象として実施されることとなったものです。ちょうど特定秘密保護法案の参議院での審議が大詰めを迎えており、国会の中も外も騒然とする状況での開催となりましたが、集会には国会議員ご本人の出席もいただくことができ、給費制問題に対する議員の関心はまだ高いことを感じました。特に、登壇してご発言くださった鈴木貴子衆議院議員(北海道)の、修習生や学生からの支援を求める声がこれほど上がっているのに、検討会議などがそれをことさら顧みようとしないのはおかしい、といったお話には会場中から共感の拍手が起きていました。

また、新66期司法修習生に対するアンケートの集計結果の分析も発表されましたが、中でも修習生の修習への意欲が下がってきていることを示すような回答が新65期に対するアンケートと比較しても増えていることが報告されました。経済的要因だけの問題ではないのかもしれませんが、貸与制のもとでの修習が与える影響がじわじわと広がり、修習制度そのものを蝕み始めているかのような薄ら寒い印象を受ける報告でした。

一方で、現在実施している、修習生に対する給費の実現等を求める要請に対する賛同の団体署名への協力要請についての報告は、これまで以上の支援の広がりを感じさせる心強いものでした。特に、医師会や農協など、従前協力をいただけてなかった団体から賛同をいただけることとなったのは、今の法曹養成のあり方、特に修習生に対する経済的支援の問題点が社会でも、危機感を持って認知されてきたことの現れではないかと感じました。


3 国会議員との面談

市民集会の当日には、市丸信敏給費制本部長代行、鐘ヶ江啓司給費制本部委員、髙木の3名で議員会館を訪ね、福岡県選出の国会議員との面談を行いました。これまで地元事務所での面談などをしてきた経緯もあってか、国会が大荒れとなり多忙を極めておられる中であるにもかかわらず、濵地雅一衆議院議員(公明)、宮内秀樹衆議院議員(自民)にはまとまった時間を取っていただき、議員ご本人と直接お話をすることができました。濵地議員は、弁護士のご出身ということもあり問題についても危機感を持っておられ、党の司法改革PTでの検討をさらに進めていきたいと心強いお言葉をいただきました。宮内議員は、先々月地元事務所で面談をした後に、給費制問題を含めた司法制度改革について情報を集められたようで、優秀な人材が法曹を目指さなくなりつつあるということに以前にも増して危機感を覚えておられるようでした。

また、三原朝彦衆議院議員(自民)、武田良太衆議院議員(自民)、遠山清彦衆議院議員(公明)は、政策秘書の方が時間を取ってくださり、しっかりとお話をすることができました。

今回の議員との面談を通じて、司法修習生への経済的支援の問題については以前にも増して国会議員のなかでも理解と共感が広がっているとの印象を受けるとともに、会長を始めとした地元議員への働きかけなどこれまで実施してきた福岡県弁護士会の地道な取組みがしっかりと根付いていることを改めて感じました。


4 団体署名への協力要請

現在、弁護士会では、司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を求める要請への協力の要請を関係諸団体に対して行っています。コンセプトは、これまで協力をお願いしていなかった団体へも支持の輪を広げていこう、というものです。

福岡県弁護士会ではこれまでに、2010年来の運動の成果の蓄積のおかげで、全国に先駆けて福岡県医師会からの賛同を頂くことができ、また、その勢い駆って、日弁連としても日本医師会から団体署名を頂くことができました。さらには、古賀前会長のご尽力で農協諸団体からも賛同をいただいております。その他にもたくさんの会員の先生方のご協力で多くの賛同の署名を得つつあります。

今後も団体署名への協力要請を続けてまいりますので、更なるご協力のほどよろしくお願いいたします。


5 終わりに

推進会議での修習生に対する経済的支援策についての検討はまさにこれから(平成25年12月17日から)です。自民党の司法制度調査会では、推進室からの修習生に対する経済的支援がこれ以上必要であるとの立法事実はない旨の報告に対し、実態をあまりにも無視するものだとの強い非難が加えられたという話があるように、法務省、最高裁が主導して進める現在の検討状況についての疑問が国会議員の間でも共有されてきているように感じます。特に、自民党の司法制度調査会(法曹養成制度小委員会)では、この3月にも法曹養成制度改革の各重要論点についての提言を出す予定とのことであり、私たちは、ここで今一度、充実した司法修習を行うために必要な、給費制も含めた環境整備のあり方について再検討すべき、との声をしっかりとあげていかなければならないと思います。
会員の皆様、お力添えのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

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