福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2013年12月号 月報
あさかぜだより 番外編~徳之島だより~
月報記事
鹿児島県弁護士会
会 員 小 池 寧 子(64期)
1 私は、今年の7月まであさかぜ基金法律事務所で養成を受けて、8月1日に開所しました法テラス徳之島法律事務所に赴任しました。現在、赴任してから3か月ちょっと過ぎましたが、私の徳之島での日々をご紹介いたします。
2 徳之島は鹿児島県の奄美群島のうちの一つの島で、奄美大島より更に南に位置し、距離的には沖縄本島の方が九州本土より近いです。なので、急病人等が出ると、ヘリコプターで沖縄に運ばれます。
徳之島の人口は2万5000人ほどであり、裁判所は簡易裁判所と家庭裁判所の出張所があります。ただ、簡裁の判事は、1か月に1回3日間来られるだけですし、家裁にいたっては、2か月に1回(こちらも3日間)しか期日は開かれません。どんなに急いでいても2か月に1回です。その代わり1回の調停は長く、ほぼ1日がかりです。
当然、地裁事件は、徳之島で処理することはできないので、おとなりの奄美大島にある鹿児島地方裁判所名瀬支部に行くことになります。ちなみに、名瀬に行く場合は、飛行機かフェリーで行きますが、飛行機であれば30分ほど、フェリーだと3時間かかります。
3 法テラス徳之島法律事務所は、東シナ海を望む高台にあり、事務所からキラキラと輝く海を見ることができて景色はとても綺麗です。そこで、弁護士1名、事務員2名という体制で執務にあたっています。
事務所は新規開設のため、私が初代の弁護士ということになり、現在受任している事件は、12、3件ほどでありさほど多くはありませんが、相談は結構あります。この3か月でおよそ100件の相談を受けました。相談内容として、多いのは離婚に関することかなあと思いますが、特徴的なのは土地に関する相談がとても多いということです。相続に関すること境界に関すること等様々な相談がありますが、お墓の境界線に関する相談等お墓に関する相談も結構あるので、最初に相談を受けたときには頭が真っ白になりました。今では、少しお墓に関しても詳しくなったと思います。
また、徳之島は、保徳戦争に代表するように政争が激しい地域でもあるのですが(現在は落ち着いています。)、相談にそういった政治がらみの話をされる方がとても多いです。争いになっている相手方が、「応援している政治家や政党が違うから、あいつはこんな嫌がらせをするんだ」といった具合にです。他にも、役所や農協の不正を訴える相談も多くあります。さらには、調停委員が依頼者になったり、初めての管財事件の主な任務が闘牛用の牛を売却することだったり・・・と島ならではのことが多く、その度に右往左往している毎日です。
4 このように、どうしたら良いかわからないということも多々あります。そんなときには、あさかぜにいるときに指導担当としてお世話になった先生などに電話してアドバイスを求めますが、どの先生も優しく丁寧に教えて下さり、あさかぜ出身で良かったなあと思います。島の事件は特殊なものが多く、あさかぜで関わっていた事件がそのまま参考になるということはほとんどありません。しかし、指導担当の先生と事件をご一緒させて頂くなかで、分からないことはいつでも聞いていいんだなというふうに思えている、そういう環境を作って赴任できたということが、今一番の支えになっています。
今、あさかぜや法テラスは弁護士ゼロワン地域が解消されたことなどから、その存在意義が問われることになっています。しかし、奄美大島には弁護士事務所が複数あることから、支部管内というくくりではゼロワン地域が解消されたということになっていましたが、徳之島には、私が赴任するまで弁護士はいませんでした。ですから、相談にいらっしゃった方からは、奄美では遠すぎて行けなかった、徳之島に法律事務所ができて本当に嬉しいという声をたくさん聞きます。そういう声を聞くと、まだまだ弁護士過疎が解消できたといえない地域が他にもあるのではないだろうかと思います。また、こういった地域に私のような経験の浅い弁護士が赴任する場合には、やはり、遠慮無く相談できる環境というのは必須だと思いますが、あさかぜ出身ということでその点もカバーできているというのは本当にありがたいことだと思っています。
徳之島では、目の前の事件を一つ一つ丁寧に誠実に対応していくことで、島の人たちの役に立ちたいという思いで毎日仕事をしています。これからもその気持を忘れることなく、福岡での日々に感謝しつつ、3年間頑張っていきたいと思います。
徳之島は、何にもないところですが、海はほんとうに綺麗で黒糖焼酎が美味しいです。ダイビング、釣り、焼酎が好きな方はぜひ遊びに来てください!