福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2013年10月号 月報
大連訪問報告 ~大連に法律相談センターはなかった
月報記事
副会長 古 賀 克 重(47期)
7月25日から28日まで大連律士協会(弁護士会)を訪問しましたので、ご報告致します。
1 大連律師協会との交流とは
大連との交流は、1992年、日中法律家協会のメンバーを主体とした福岡県弁護士会訪中団が大連を訪問したのが始まりです。その後も交流を続け、2010年2月、大連から18名を迎え、正式に当会と大連律師協会が交流提携の調印を行うに至りました。それ以来、当会と大連律師会が交互に往訪して国際交流を継続しています。
ちなみに大連律師協会の会員数は2633人、うち女性会員は1077名(42.6%)に達しており、日本よりも女性進出が進んでいるようです。一方において、大連には法律相談センターはなく、弁護士会が会員に事件を提供したり、新人弁護士をトレーニングするという発想はないようでした。
2 初日の卓話会
国際委員会及び新旧執行部から構成される訪問団20名は、7月25日に大連に到着し、そのまま宿泊先のホテルに向かいます。車窓を流れる大連の風景は、近代的なビル群と昔ながらの老朽化した建物が混在する大都市といった趣きでしょうか。
ホテル到着後は、福岡銀行大連支店及び北九州貿易協会大連事務所からもご参加頂き、夕食会兼卓話会が開催され、大連進出企業の動向等をお聞きしました。
3 日系企業・裁判所訪問
翌日は、大連ソフトバンクを訪問し、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の現場を見学したり、大連市中級人民法院を表敬訪問しました。日本統治時代の旧「関東地方法院」である裁判所1階のホールには、裁判官直筆による達筆の書や写真が飾られており、日本の裁判所よりも開放的な雰囲気です。
残念ながら裁判自体は傍聴できませんでしたが、裁判官との質疑応答が行われました。訪問団から「日本の裁判所では夜遅くまで窓の明かりが消えないが、こちらはどうですか」と質問すると、「中国も全く同じです」と笑顔が返ってきました。
4 大連律師会との法律セミナー
その後、法律セミナーが開催されました。
まず、山口銀行のU氏が、「日系企業が中国で遭遇する様々な問題」と題する講演を行いました。
U氏は、「当局の権限が大きく、担当者を知っているかでかなり違う」、「不渡が出ても当局への罰金のみで取引停止にならない」、「譲ったら負けという意識が強い」、「自社仕入企業を立ち上げ利ザヤを抜くことがある」と率直な感想を述べた上、「郷に入れば郷に従えで理解し合うことが大事。法制度も急速に整備されつつある」と締めくくりました。
また、当会の中村亮介会員が、上海留学経験を生かした流暢な中国語で「従業員の競業禁止」と題する発表も行いました。
セミナー終了後は盛大な懇親会が設けられました。私は、中国語の堪能な国際委員会の先生方に助けられ、大連律士協会の皆さんと懇談を深めることができました。
5 さらに続く国際交流
初めて足を踏み入れた中国本土は、日本との様々な違いを肌感覚で感じる機会になりました。例えば、車が行き交う3~4車線の幹線道路を、老若男女問わず、時間帯を問わず、車線と車線の間に立ち止まりつつ平気で横断していく生命力(?)には何とも驚かされました。
そして何よりも毎年の交流が、着実に実を結んでいることを実感しました。
来年度は大連律士協会から福岡に来られる予定です。興味を覚えた方はぜひ大連律士協会との国際交流を直にご体験下さい。