福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2012年11月号 月報

無料労働相談が始まりました 生存権の擁護と支援のための緊急対策本部労働関係部会長

月報記事

会 員 井 下   顕(52期)

1 無料労働相談が始まりました!

本年10月1日より、県内19カ所の法律相談センターにおいて、労働者側の労働相談の無料化がスタートしました(筑豊部会では、名簿登録会員事務所に順次配転されます。)。すでに、CM(アリが出てくるものです...。)もオンエアされており、各メディア媒体を通じた宣伝もされ始めています。


2 無料労働相談の制度趣旨は...

この無料労働相談の試みは、当初生存権の擁護と支援のための緊急対策本部において提起され、その後様々な議論を通じて実現されました。

不肖私、当会を代表して福岡労働局が主催する個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会に出席させていただいておりますが、福岡労働局や県の労働者支援事務所に寄せられる労働相談のうち、あっせん等の手続で解決しない労働相談の大部分が法テラスを紹介されています。ちなみに、昨年の厚労省の総合労働相談窓口に寄せられた民事個別労働紛争(解雇、雇止め、賃金未払、セクハラ・パワハラ等の相談)は約25万件、うち全国の労働局のあっせん手続で受理された件数は約6500件、全国の地裁本庁に継続した労働審判、仮処分、労働事件本訴等はすべて合計しても8000件超くらい(福岡県内では総相談件数4万件のうち、実に1万件が民事個別労働紛争で、福岡労働局のあっせん受理件数は約300件、天神センターの年間の労働相談件数も約300件です。)。実に多くの労働事件は弁護士への相談にすら行き着いていない状況にあると思われます。そして、これらの原因の一つに、労働相談の相談料が実は大きな壁になっていると思われます。解雇、雇止めによって明日の糧すら奪われた労働者は30分5,250円を出して、弁護士に相談することには相当な躊躇があることは明らかではないでしょうか。


3 無料労働相談の副次的効果も...?

当会の生存権対策本部始め関係委員会では、このように労働者の生存権を擁護・支援するという観点からこの無料化を議論してきたわけですが、この無料化には副次的な効果もあると思われます。すなわち、労働は様々な法領域の基軸となっている、労働分野にトラブルが発生したり、傷がつくと、家庭内の問題、子どもの問題、地域の問題等多くの問題に波及していく...(例えば、一家の支柱が解雇されれば、負債の問題、夫婦間の問題その他に影響が出てくると思われます。)、そうすると、無料労働相談を通じて、実は潜在化している法的ニーズが立ち現れてくるのではないかと思われますし、労働者側に無料労働相談を通じて弁護士が代理人に就いた場合、事業主側の法的ニーズも当然ながら高まってくるものと思われます。

すでに、無料労働相談の反響があちらこちらで聞かれるところですが、会員のみなさまにおかれましては、どうか、無料化の制度趣旨をお汲みとりいただき、お力をお貸しいただければと思います。

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