福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2011年12月 1日
◆憲法リレーエッセイ◆ 筑後部会・憲法講座実行委員会 第7回 市民のための憲法講座「君が代・日の丸と憲法」(11月5日)
憲法リレーエッセイ
会 員 木 下 宗一郎(63期)
1 はじめに平成23年11月5日、福岡県弁護士会筑後部会会館において、憲法講座実行委員会の活動の一環として、第7回市民のための憲法講座「君が代・日の丸と憲法」が開催されました。
筑後部会の若手弁護士が「公立学校の卒業式の際に、日の丸を掲揚し、君が代を起立して斉唱することを強制するのは合憲か、違憲か」というテーマで、合憲派(田上晋一先生・吉田星一先生・渡辺麻以佳先生)と違憲派(塗木麻美先生・小松宏吉先生・木下宗一郎)に分かれ、討論をしました。
2 憲法講座の具体的内容など
全体の司会進行は寺田玲子先生が務められました。
そして、高峰真先生が開会の挨拶をされました。
さらに、永尾廣久先生がコーディネーターを務められるということで挨拶をされました。
また、寺田玲子先生より、特別ゲストとして久留米大学の日野田浩行教授(憲法学)に来ていただいているとの紹介がありました。
その後、田上普一先生及び塗木麻美先生より、合憲派・違憲派それぞれの主張に関するプレゼンテーションが行われました。
そして、討論が始まりました。
まず、合憲派は、国民の大多数は日の丸と君が代に対して、特別な感情を抱いておらず、スポーツの国際大会等において違和感なく用いられている、日の丸・君が代と思想良心の自由は関係ないなどという主張を行いました。これに対して、違憲派は、日の丸と君が代は過去の大日本帝国の軍国主義・全体主義のイメージから完全に抜け出せていない、特に植民地支配を受けたアジアの諸国の人々からすればそうである、日の丸・君が代と思想良心の自由は関係があるなどという主張を行いました。
次に、合憲派は、卒業式において日の丸を掲揚し君が代を斉唱するのは国際化のなかで自国のことや他国のことを考える教育の一環としての意味があるなどという主張を行いました。これに対して、違憲派は、卒業式と日の丸・君が代は関係がなく、様々な考え方のある日の丸・君が代を卒業式に持ち込むから卒業式が混乱するなどという主張を行いました。
さらに、合憲派は、国旗国歌法という法律ができているし、条例には職務命令違反の場合は懲戒処分を受けるというルールが明記されているなどという主張を行いました。これに対して、違憲派は、法律には敬えとか歌えとかまではあえて書かれていないし、思想良心の自由を侵害する条例は違憲無効であるなどという主張を行いました。
その後、参加者の市民の方々により、合憲派の主張と違憲派の主張のどちらが説得的であったか、投票が行われました。投票の結果は、合憲派17票・違憲派12票となり、合憲派の勝利となりました。
さらに、日野田浩行教授による解説がありました。
最後に、憲法講座実行委員会委員長の中野和信先生より閉式の挨拶がありました。
その後は、日野田浩行教授にもご参加いただいて、弁護士会のメンバーで打ち上げを行いました。市民の方にはアンケートを書いていただいており、打ち上げの場で回し読みがされましたが、ご意見としては、日の丸・君が代を強制しても合憲という方が相当多い状況でした。なお、アンケートの感想のところに、「弁護士ってカッコイイなと思いました」と書かれたものがあり、誰のことを指しているのかという話題で盛り上がりました。
3 最後に 会場に集まった市民の方は、若い方が多く、若い方でも憲法問題への関心が高いことを意外に思いましたが、安心もしました。
また、先輩や同期の先生方(上でお名前を挙げていない先生方が多数関与しておられます)と協働してひとつのイベントを作り上げていくという経験は貴重なものだったと感じています。