福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2011年7月 1日
◆憲法リレーエッセイ◆「ひまわり憲法劇のこれまでとこれから」
憲法リレーエッセイ
会 員 原 田 純 子(62期)
1 ひまわり一座とは?皆様、憲法劇のひまわり一座をご存じでしょうか。「劇団ひまわり」と間違えられることも多いそうですが、全くの別団体、弁護士が中心となって、毎年5月の憲法記念日の前後に、憲法劇を行っている団体です。
始まりは1989年、憲法のすばらしさについて、おもしろく、分かりやすく、多くの方に伝えようという思いから、結成されたと聞いています。これまでに、PKO問題、改憲問題、諫早湾の開拓問題などをとりあげてきました。昨年は、ペシャワール会の医師中村哲さんをモデルに、「真の国際貢献とは?」を問う内容の劇でした。メンバーも、弁護士、会社員、学生、地元の劇団員など、総勢40人を超えております。
ところで、ひまわり一座の憲法劇をご覧になったことがなくても、昨年の給費制維持集会の寸劇、というとお分かりになる方も多いのではないでしょうか。人権擁護と社会正義の実現を目指していたのに、給費制が廃止された未来で借金返済に苦しみ、悪徳弁護士になってしまった!という寸劇で、中山篤志弁護士の見事な悪徳弁護士っぷりに笑いを誘われた記憶はございませんか?ひまわり一座は、こんなところでも活動しています。
2 今年の憲法劇
私は、昨年からひまわり一座の憲法劇に出演させていただいております。今年のテーマは、『米軍基地問題』でした。福岡県の能古島に、米軍基地が移設されることになったという設定で、平和な島を愛しながらも様々に揺れる島民たちが、最終的には、米軍基地はいらない!と一致団結して闘うという内容です。題して、「へ?能古に基地がやってきた」。解説するまでもありませんが、「辺野古(へのこ)」と「能古」をかけています。
私自身は、昨年は、舞台に出て、一言しゃべって退散、というのを2回しただけのチョイ役でしたが、今年は重役を仰せつかりました。夫の故郷である沖縄の宜野湾市で基地反対運動をしていた女性が、出産のために地元の能古島に戻っていたところ、能古島に基地移設案が持ち上がります。揺れる島民に対して、夫とともに、基地のある生活の現実を訴えるという大変重要な役柄です。
ちなみに、夫役は、迫田学弁護士。当初私は妊婦役ではなかったのですが、練習途中に脚本が変わり、出産のために途中から出番がなくなったので、私の台詞まで学先生が引き受けてくださることになりました。そのため、迫田学弁護士の台詞はとても長かったのですが(しかも沖縄出身で基地反対運動を続けてきた人として、皆さんを説得する役なので、台詞がとっても難しい。)、練習では私よりも先に台詞が入っており、頭が下がる思いでした。
それでも、私なりに、夫や夫の家族がこれまで基地に生活を脅かされてきたこと、出産のために戻って来た故郷が基地の危険に曝されていること、これから産まれてくる子どものために、自分はどういう未来を残したいと考えるのか等、自分がその女性だったらと考えながら、演じさせていただきました。役をいただいたことで、沖縄の問題を、これまでよりも少し、身近に感じることができました。
3 憲法講座
劇で米軍基地問題をとりあげるにあたって、沖縄のこと、米軍基地のことについて、年間を通じて簡単な学習会も行ってきました。「チビチリガマから日本国を問う」という沖縄の被害、基地問題を追ったDVDの上映会、そのDVDを作成された監督を招いての講演会等々...。迫田学弁護士の台詞の一部には、その学習会の中で、沖縄出身の天久泰弁護士のご講演に出てきたエピソードが使われております。そうやって、いろいろな話を見て、聞いて、演じる人たちが問題意識を深めるとともに、それを劇中にも取り込みながら、一つの劇が作られていったのです。
上演後に回収したアンケートには、迫田学弁護士の台詞が印象的だったというご意見も多く、実際にその出来事を体験した人、身近な経験としての実感を持っている人からの話は、やはり訴えかける力が全然違うんだろうな、と感じました。
4 大きな出来事
ひまわり一座の憲法劇を当初から支えてくださった、高尾豊さんが、今年の憲法劇が終わった直後に、突然、他界されました。演劇の世界に身をおきながら、平和、人権等にも高い意識を持っておられた方で、練習中にも、「この劇であなたたちが訴えたいことは何か、一人一人がよく考えなさい。それがないと伝わらない。」とよく言われました。
高尾さんの笑顔がもう見られないと思うと、本当に寂しいです。弁護士は、演劇のことには素人ですから、高尾さんという大きな存在を失って、今後どうなるんだろうという大きな不安も、当然あります。それでも、ひまわり一座は、これから上演するテーマや体制について話し合いを始め、もう来年に向かって歩き出しています。きっと、高尾さんも、あのニコニコした笑顔で、私たちを見守ってくださっていることでしょう。
最後の最後まで、ひまわり一座のメンバーと、劇のこと、そして平和について語り合って下さった高尾さん、本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈りするとともに、これからも私たちを見守ってください!とお願いをして、筆を置かせていただきます。
5 追記
筆を置いたつもりでしたが、一言忘れていました。憲法が大好きな方、憲法について改めて考えてみたい方、舞台に立って目立ってみたい方、ぜひひまわり一座にご参加ください!裏方でのご参加も大歓迎です。
来年もGWのころに劇を行いますので、ぜひ、観客としてもご来場ください。よろしくお願いいたします!