福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2011年5月号 月報
京都法教育推進プロジェクト
月報記事
会 員 諌 山 佳 恵(62期)
1 「京都ですごいことをやっているから見てきて」と声をかけて戴き、平成22年10月29日、「法教育シンポジウム~未来を拓く法教育in京都~」に行って参りましたので、ご報告いたします。2 京都府内の小中高等学校では、本年6月から、このプロジェクトに基づく多様な法教育メニューが実施されています。この企画のすごいところは、「京都市教育委員会、京都府教育庁、京大法科大学院、同志社大法科大学院、立命館大法科大学院、法学部、京都地裁、京都地検、京都弁護士会、京都司法書士会、法テラス京都、京都地方法務局、京都刑務所、京都保護観察所」が参加するオール京都による取り組みである点です。
3 まず、京大の笠井教授から法教育のこれまでの動きや将来を踏まえた本プロジェクトの意義について、基調講演を頂きました。
4 立命館中学校1年生の録画授業放映
次に、その実践報告として、中学校1年生に対する法教育授業の模様が放映されましたが、生徒達の興味を引きつけた理想的な授業は、ドラマを見ているようでした。
この授業では、歴史ある京都市の街に高層マンションが建設される場面を想定し、建築の景況について、生徒達を反対派・賛成派・中立派に分けて討論した後、各派が納得できるルール作りを再討論しました。身近な問題に直面した生徒達は、これを自分の問題として考え、マンションの色や形、店舗の出店条件に至るまで、柔軟なアイデアを出していました。最後に、先生が京都市の景観保全条例を紹介したときには、市民生活におけるこの条例の役割を実感でき、また、このような授業を受けた経験がなかった私は、生き生きと議論する生徒達を羨ましく感じました。
5 立命館宇治高等学校2年生の公開授業
次に、高校2年生の刑事模擬裁判が公開され、生徒達が自作の台本に基づく証人尋問及び被告人質問を発表しました。
証人尋問では犯人の目撃状況というポイントを突いた尋問が行われ、被告人質問でも的確な尋問が行われ、見応えがありました。異議も積極的に飛び出し、手続きを充分に勉強して尋問を全て暗記するまで努力した生徒達の熱意を感じました。
6 パネルディスカッション
その後、法テラス理事の草野氏をコーディネーターとし、エッセイストの市田氏、京都弁護士会の伊藤氏、立命館宇治高校教諭の太田氏、京都市教育委員会の島本氏、嵯峨野高校の松宮氏、法務省大臣官房付丸山氏という様々な立場の方をパネリストに迎え、「法教育の普及における地域社会の役割」について議論が行われ、各機関とも、積極的に法教育に取り組む意思があること、法教育実践のために地域の専門家の力が不可欠であるという共通認識をもつことがわかりました。
7 これからの法教育
このプロジェクトによる局地的・一回的な取り組みの成果を、普遍的継続的な法教育実践にどうつなげるべきか、翌日京都弁護士会で開かれた意見交換会で話題になりました。
このプロジェクトの意義は、通常協力しない機関が一定の連携をとって法教育に取り組んだ点にあります。特に、法の専門家と教育現場の指導力が連携することによる相乗効果は大きく、弁護士会が、出前授業、裁判傍聴はもちろん、日々の業務活動を通じて、現場の教師とのパイプを拡大、強化していく必要性を感じました。
学校に弁護士が来て話をしてくれた経験は、小中高生にとって一生心に残るはずです。また、先日の裁判傍聴で引率を担当させて戴いた専門学校生達は、刑事裁判に興味津々であり、裁判の現場に足を運んでもらう契機が重要と感じました。
福岡でも、現場の教師のニーズを掘り起こし、全ての学校で当たり前に法教育が実践されるよう、これから学校現場にいって法教育に関わっていきたいと感じました。