福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2010年9月号 月報

給費制特集4給費制アンケート結果のご報告

月報記事

会 員 梅 野 晃 平(62期)

去る平成22年7月31日、福岡市中央市民センターにおいて、司法修習生給費制維持のための市民集会が開催されました。

ここでは、集会に先立って実施されたアンケート結果のご報告をさせていただきます。

アンケートは、福岡県内のロースクール在学生・修了生、新63期司法修習生及び新60~62期の弁護士を対象に、・借入金の額、・法曹を目指した理由、・給費制廃止について思うこと、の3点について問うもので、合計78名(借入金額については72名)の方から回答をいただきました。

1.借入金の額

(1)借入金額について回答のあった72名のうち、学部・ロースクール等を通じて何らかの借入があると答えた方は56名で、全体の77.8%(!)にのぼっています。 

時期別にみると、学部での借入があると答えた方が21名(29.7%)であるのに対し、ロースクールでの借入があると答えた方は52名(72%)となっており、ロースクールに通う過程で借入をすることとなった方が多いようです。

(2)借入があると回答した56名の借入額についてみると、

100万円未満が1名(1.8%)
100万円以上300万円未満が16名(28.6%)
300万円以上500万円未満が19名(33.9%)
500万円以上800万円が15名(26.3%)
800万円以上1,000万円未満が3名(5.4%)
1,000万円以上が2名(3.6%)

という結果で、98.2%の方が100万円以上の借入を行っており、300万円以上の方をみても69.6%と、借入のある方の大半が借入額300万円を超えているという深刻な結果が明らかになっています(グラフもご参照ください。)。

(3借入の平均額については、借入がない方も含めた72名の平均が339万円で、借入のある方56名のみで平均すると、平均借入額はなんと435万8,571円にもなります。借入金の最高額も1,100万円と巨額であり、修習中に給与が与えられていた、又はまだ修習を経ていない世代においても、既に多額の借金を負っている現状がわかります。)

2.法曹を目指した理由

(2)、(3)は自由記述式でしたが、借入のあるなしに関わらず、多数の回答が、困っている人の役に立ちたい、よりよい社会を実現したい、社会正義を実現したいといった内容を含んでおり、個別的にみても、明確な志をもって法曹を目指した回答が多くありました。

3.給費制廃止について思うこと

最後に、給費制廃止について思うことですが、貸与制となると借入額がさらに増大する見込みであることから、借金を返済しながら家族を養っていけるかといった経済的問題についての切実な不安をはじめ、多額の借金を抱えてしまったために法曹としての品位を欠いたり倫理に反する行為に走る者の出現や、借金返済に追われ公益的活動をなしえなくなること、有能な人材が経済的理由から法曹を志すことを諦めてしまうことへの懸念などが寄せられていました。

今回は紙面の関係で、具体的な回答内容について紹介をすることができませんが、アンケート結果の詳細につきましては、私含め給費制維持対策本部の事務局員が所持しておりますので、少しでも興味をもたれた方はご連絡ください。



私が司法試験に合格して、はじめて給与をもらったとき、これでもう両親に負担をかけずに済むようになった、一人立ちができたのだと、本当にうれしかったことを覚えています。私がこの活動に参加する原動力は、このときの喜びの気持ちなのだと思います。皆さんははじめて給与をもらったとき、どのように感じられたでしょうか。

私が修習生のとき、修習中に先輩から受けた恩は、その先輩に「恩返し」するのではなく、いつか後輩の修習生によくすることで「恩送り」をせよ、これまでもずっとそうしてきたのだから、と言われました。

後輩達が苦境に立たされる今、最大の「恩送り」をはじめましょう。

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