福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2010年2月号 月報
法律事務所のエコ(その1)
月報記事
会 員 後 藤 富 和(55期)
1 地球温暖化 第52回人権擁護大会では、地球温暖化の危険から将来世代を守ることが大きなテーマとなりました。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、産業革命以後の気温上昇を2℃以内に抑えるために、先進国において二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を1990年比で2020年までに25~40%削減、2050年までに80%削減することが必要と警告しています。日弁連は意見書や人権大会宣言を通して、国に対し温室効果ガスの排出総量規制などを求めてきました。麻生政権下では2005年比15%減(1990年比にすると8%減)という低い目標で誤魔化そうとしましたが、鳩山新政権は1990年比25%削減を打ち出しており、温室効果ガス削減が現実の課題となってきました。この課題は、政府や産業界だけではなく、私たち弁護士にも突き付けられています。そこで、法律事務所でも地球温暖化防止に向けた取組ができないかと考え、うちの事務所では様々な実践をはじめました。
2 まずは知ることから 温室効果ガスの削減に取り組むのであれば、まず、現状でどのくらい排出しているのかを知ることが必要です。 大橋法律事務所の2009年1月から7月までのCO2排出量は、電力・交通・廃棄物の合計で2285kgとなります(環境省の計算式)。仮に同じペースで1年間排出したとすると年間排出量は3917kgとなります。平均的一般家庭の年間排出量が6500kgといわれていますので、事業所としては少ない量に抑えることができていると思います。ちなみに、ヒノキ1本の年間CO2吸収量が約25kgといわれていますので、うちの事務所の活動によるCO2を吸収するためには156本のヒノキが必要ということになります。
3 削減努力、カーボンオフセット、グリーン電力 エアコンの温度をこまめに調整したり(思い切ってエアコンを使わず窓を開けるという選択もあり)、近距離の移動に自転車を利用したりすることでCO2の排出は大幅に削減できます。そのコツは我慢をしないということです。暑いのを我慢するのではなく、エアコンが効きすぎて上着を羽織って仕事している状態を不自然と感じられるかどうかだと思います。 それでも、削減できない部分は残ります。そのような場合に、事業により排出したCO2を別の活動で吸収し相殺する考え方をカーボンオフセットと言います。例えば、飛行機を利用したことで排出したCO2を植林によって相殺する全日空のカーボンオフセットプログラムなどがその例です。 また、電力を石油・石炭など化石燃料による発電に頼るのではなく、発電時にCO2を発生しないと考えられている風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギーに転換することで電力消費によるCO2排出を大幅に削減することも考えられます。しかし、小規模な事業所が独自に太陽光発電や風力発電システムを備えることは困難です。そこで、考え出されたのがグリーン電力証書システムです。これは、自然エネルギーにより発電された電力の環境付加価値を証書化し、証書の購入を通じて消費者(事業所)が自然エネルギーによる発電コストを負担することで、事業所で使用する電力を自然エネルギーに由来するものとみなすことができるという制度です。野村証券本社ビル、銀座のソニービル、羽田空港、全国6か所のZEPP(ライブハウス)などでこの制度が利用されています。 大橋法律事務所でも今年8月からこの制度を利用して使用電力すべてをバイオマス発電によってまかなうことが可能となりました。
4 環境マネジメントシステム(EMS)について これら環境保全に対する自主的取組を促進する制度として環境マネジメントシステムがあります。このシステムはすでに日弁連で導入され、単位会では京都弁護士会が導入しています。また、大阪の法律事務所でも導入例があります。EMSについては「その2」で述べ詳しく説明します。