福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2007年9月 1日
監視カメラの設置・運用について
会員 武藤 糾明(49期)
このシンポで行われた監視カメラ規制をめぐる議論を一部ご紹介します。
福岡県の、監視カメラの設置を規制しないガイドライン方式(その後、8月に策定)について、私の方から、「公道に対する設置の規制は不要なのか。
子どもの安全を守るためと称して、一市民が小学校の校門に向けた監視カメラを設置して24時間録画し続けたらどうか。PTA会長ならよいが、小児性愛嗜好のある人ならダメと言うことになるのか。
一市民に公道の監視権が認められるものなのかどうか、感情ではなくて、論理によってルールを決めるべきではないか。」「カメラの設置者が、よいことだと思って、警察の要請のままに画像が提供されると、集会参加者の画像すら警察に集中する危険がある。現状においても、上川端商店街は、かなり頻繁に警察に画像を提供しているが、ここでは、毎年メーデー会場となる冷泉公園に向かう多数の市民も、録画している。」と問題提起をしました。
ガイドライン策定に向けた検討を行ってきた福岡県防犯カメラ活用検討会議の会長であった木村教授は、「会議は、もともと活用という結論ありきだった。8回は議論すべきだと思ったが、最初から3回で、締めきりの時期も区切られていた。監視カメラを市民が監視する仕組みが必要。」と述べました。
新潟の齋藤弁護士から、陸上自衛隊による市民監視、公安調査庁による青年法律家協会会員の宿泊者名簿請求事件など、権力批判をする国民に対する公権力による監視が強まっている現状に法律家が対処すべき必要性について会場発言をいただきました。
このシンポジウムでは、監視社会を招かないためのルール確立を求める宣言を採択しました。福岡市は、適正手続きやプライバシー権に十分配慮した条例を定めることなく、街頭への防犯カメラの設置・運用を自ら行ったり公金を支出すべきではないこと、その場所では起こっていない犯罪捜査への協力は令状に基づき行うことなどを提言しました。
福岡県のガイドラインは、広範な警察の任意捜査に応じて画像を提供できるよう定め、令状主義の観点が欠落しています。
十分な議論が行われることなく、イギリスのように、街中が、多額の税金が投入された監視カメラだらけにならないよう、市民が、法律家が、監視していく必要があります。