福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)
2007年8月号 月報
都市型公設事務所を知っていますか?
月報記事
大神昌憲(総務事務局長)
1 都市型公設事務所・連絡協議会及びシンポジウムの開催
私は,平成19年6月29日,日弁連会館において開催された「第4回都市型公設事務所等連絡協議会」(日弁連主催)及び都市型公設事務所シンポジウム(東京弁護士会主催)に参加しました。私は都市型公設事務所については全くの初心者で,一体どのようなものなのか,興味津々で参加いたしました。
2 全国9事務所
都市型公設事務所は,現在,全国で9事務所あるようです。
- 弁護士法人東京パブリック法律事務所(平成14年6月開設)
- 弁護士法人北千住パブリック法律事務所(平成16年4月開設)
- 弁護士法人渋谷パブリック法律事務所(平成16年9月開設)(以上,東京弁護士会)
- 弁護士法人渋谷シビック法律事務所(平成15年5月設立,同16年6月法人化)(第一東京弁護士会)
- 弁護士法人東京フロンティア基金法律事務所(平成13年9月開設,同14年4月法人化)(第二東京弁護士会)
- 弁護士法人大阪パブリック法律事務所(「刑事こうせつ法律事務所」と「大阪フロンティア法律事務所」が平成19年4月に統合)(大阪弁護士会)
- 弁護士法人岡山パブリック法律事務所(平成16年8月開設)(岡山弁護士会)
- 弁護士法人広島みらい法律事務所(平成18年10月開設)(広島弁護士会)
- 弁護士法人すずらん基金法律事務所(平成17年3月開設)(北海道弁護士会連合会)
の9つがそれで,弁護士法人多摩パブリック法律事務所(仮称)(東京弁護士会)は開設準備中(平成20年2月開設予定)とのことです。
3 都市型公設事務所の機能
都市型公設事務所は弁護士会が抱える様々な問題を解決すべく,多くの重要な役割を担っています。
1つめは地域の法律相談センター,権利擁護センターとしての機能です。都市の市民の法的な駆け込み寺として,一般的には受任が難しい少額の事件でも,法テラスなどと連動し,積極的に相談,受任に応じています。
2つめは刑事対応機能です。前記2-2の北千住パブリック法律事務所は,被疑者国選弁護の拡充,裁判員裁判に備え,質量ともに刑事事件に十分に対応することを主たる目的として設立されています。
3つめは若手弁護士の育成支援と過疎地への派遣の機能です。多様な事件の処理を通じて若手弁護士を鍛錬育成し,入所後1年ないし2年で過疎地の公設事務所等に派遣しています。
4つめは弁護士任官推進と判事補の弁護士経験の機能です。弁護士が任官をするためには依頼者や顧問先に迷惑を掛けぬよう抱えている事件に解決の目処をつけることが必要ですが,公設事務所に所属することにより,円滑な事件引継が可能となります。また,都市型公設事務所は事件の種類も多く,判事補が弁護士の職務を経験するうえで適していると言えます。弁護士経験を終え裁判所に戻る際も,円滑な事件引継が可能です。
5つめは,後継者養成機能です。法科大学院と連携,協力し,学生を受け入れエクスターンシップを実施するなど,法曹養成の機能があります。前記2?の渋谷パブリック法律事務所は,國學院大學内法科大学院棟1階に事務所があり,臨床法学教育(リーガルクリニック)を主たる目的として設立されています。
4 都市型公設事務所の事務所形態
都市型公設事務所の事務所形態としては,ベテラン弁護士を所長とし,中堅弁護士数名と若手弁護士多数といった弁護士構成が多いようですが,前記2-9の弁護士法人すずらん基金法律事務所の場合,所長制を採用せず,運営委員会の支援を受けながら,若手弁護士のみが事務所を運営している点に特徴があります。
5 都市型公設事務所の今後について
現在,日弁連は,弁護士偏在の解消を最優先の課題の1つとして取り組んでいることから,今後,都市型公設事務所は全国に広がっていく可能性が大きいと考えます。
実際,東北弁護士会連合会及び仙台弁護士会は,過疎対策と刑事2009年問題対応のため,都市型公設事務所の設置を検討しているとのことです。
今後,九弁連や当会でも,偏在問題等の解消のために都市型公設事務所の検討がされることになると思われます。
以上