福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2006年8月号 月報

法律相談センターだより

月報記事

業務事務局長 古賀 克重

1 天神センターの移転について

本年度は、10月の玄界弁護士法律相談センターの開設、9月の天神弁護士センター移転などが予定されています。今回は、近づいて参りました天神弁護士センターの移設準備状況についてご報告致します。

2 移転の経緯・場所

天神センターの移転は、市民サービスの維持・向上を目的に、司法支援センター福岡地方事務所の開設された南天神ビルへ移転するものです。昨年度の常議員会で承認されていました。

移転先の南天神ビルは、現在のサテライトビルから徒歩5分程度離れた場所に位置します。渡辺通り沿い「新川橋」信号横のビルです。

法律扶助協会部分がなくなりますので、その分手狭になりますが、賃料はかなり減額できました。現在の広々としたセンターからすると、やや狭い感じも受けますが、デザインで工夫する等して効率的な維持運営を心がけて参ります。

なお、新会館が建築された際には、法律相談センターにおける一部機能の移転も視野に入れております。

3 移転時期・無料相談会

移転日は、9月16日(土曜日)から18日(月曜日)となります。翌19日(火曜日)からは、通常通りの相談業務を再開致します。

9月28日(木曜日)には、移転先のセンター内において、お披露目パーティーをこじんまりと行う予定にもしています。

なお、この天神センターの移転を記念しまして、11月9日(木曜日)10日(金曜日)の両日、県下の相談センターにおいて、一斉無料相談会を実施することに致しました。あらためて広報させて頂きますので、その節にはご協力のほどよろしくお願い致します。

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筑後弁護士会館完成!

月報記事

松本 佳郎

筑後弁護士会館が、遂に完成しました。
筑後弁護士会館

鉄骨造4階建て、延床面積648.88・、1階に事務室、応接室外、2階に相談室3、弁護士談話室、弁護士執務室外、3階にADR委員会室1、ADR当事者待合室2、委員会室、評議委員会室外、4階には大会議室(74名収用)の堂々たるものです。

6月1日、筑後部会員による内覧、点検の後、一部修正変更の工事をへて、正式に引渡を受け、同月25日に備品等を搬入、30日に間借りしていた裁判所の一室の控室兼弁護士会室、法律相談センター(パークノヴァ)からの引っ越しを終え、7月3日から、正式に供用を開始しました。

思えば、当会館の建設は、平成12年の部会忘年会の酒席における某先生の裁判所隣の空き地に弁護士会館を建てればいいのにという無責任な、いや貴重な一言に端を発したものでした。もちろん、筑後部会員が50名を超える会員数を擁することが現実のものになっており、誰もが独自の会館の保持についてはその必要性は感じていたところでした。ただ、用地の取得は? 財源は? 会員の負担は? 建設までの手続やスケジュールは? 等々の難問が山積みであり、皆頭に描いてはいるものの言い出しっぺが火中の栗を拾うことになることにもなりかねず、誰も正面切って言い出すことはなく、何らの現実の行動には結びついてはいませんでした。従って、この瓢箪から駒の一言は、貴重な一言でした。

筑後弁護士会館

これを聞きつけたのが、次期県弁会長に決まっていた永尾先生でした。当時の春山県弁会長とともに、早速、会館建設のプロジェクトが始動しました。

しかしながら、当部会においても堺紀文会員を委員長として会館建設委員会を立ち上げたものの、当初は用地の取得すらままならず、計画は遅々として進みませんでした。他方、当部会においても上記のような有様であり会館建設のための準備資金などの積立も行っておらず、財政をどうするかの議論も詰めないままで、内部の意思統一も不十分なままで動き出したというのが実情です。

この流れが一気に加勢したのは、平成16年1月に用地取得がなってからでした。この時点において、ようやく会館建設のイメージが部会員全員に共有され始めました。

その後の経緯等については、これまで月報等でお知らせしてきたとおりです。

なお、新たに興味深い史実が判明しました。

まず、関ヶ原の戦いがあった1600年頃、本部会会館敷地には、久留米城主毛利が建立したキリスト教会堂があったことです。当時、久留米とその周辺には約7000名ほどのキリシタンが在住しており、教会堂には一人のパードレ(宣教師)と二人のイルマンが駐在していたとのことです。その後、キリシタン弾圧があり、教会堂の歴史は終焉しました。

その後、町屋敷となり、火災があったこと、今回の発掘でその遺構が発掘されたことなどについては、以前、お知らせしたとおりです。

もう一つは、昭和11年、現在立て替えが進んでいる検察庁の敷地付近に久留米弁護士会館が建設されていたということです。記録によると、建設費と調度備品を含めた建設費は総額1,700円、これを部会の大先輩弁護士10名の寄付1,170円と他部会からの応分の負担で賄ったそうです。ちなみに、当時小さな一軒の借家を建てるのに300円から400円かかっていたとのことですから、当時の弁護士の懐具合なども窺い知れるところです。

福岡県弁護士会の会史(上巻)によると、この頃から弁護士の数が急増し、弁護士が貧窮していったことが記されています。中には、着手金ゼロ、成功報酬一割を謳った広告により客集めを始めた弁護士も現れてきたそうです。

何か咋今の状況と似ており、今後の司法改革の行方と行き着くところが気になるところです。

いずれにしても、このようにして新会館は始動しました。皆さん、是非、お立ち寄り下さい。ゆったりした談話室もありますし、遠来の先生方のための執務室(個室:パソコンを持ち込んでの作業もできます。)も用意しております。

最後になりましたが、今回の建設にあたり、部会員はもとより、久留米・筑後に縁のある他部会の先生方からも多額の寄付を頂きました。深謝に堪えないところであります。本当にありがとうございました。

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公益通報者保護制度研修

月報記事

会員 植松 功

平成18年6月23日、日弁連消費者問題対策委員会のPL・情報公開部会の部会長である山本雄大先生を講師に、公益通報者保護制度についての研修がありました。

ご承知のように、公益通報者保護法が本年4月1日に施行されておりますが、実はこの法律が成立する過程で、公益通報者のための相談窓口の充実に関し、「日本弁護士連合会に協力要請する」と名指しで国会の附帯決議がされており、現に昨年7月20日には内閣府から要請があり、これを受け日弁連も各弁護士会に「公益通報者支援制度を設置されたい」という依頼文書を出しており、我々弁護士はいわば外堀を埋められた形で公益通報者保護制度に主体的な役割を果たさねばならない事態となっているもので、その結果、我々は少なくともこの法律はきちんと知っておかなくてはならないということになっていて、今回はそのための研修だったわけです。

そこで、研修を受けてみて、私は、細かいことはさておき、徹底的にスリム化してこの法律を理解しようとすると、以下の三つのポイントに尽きるのではないかと思いましたので、紹介することとします。

1 ポイント1

この法律は、「労働者」を保護するための法律である。

要するに、公益通報者保護法というものの、公益となる情報の提供の全てを保護していこうというものではなく、あくまで公益通報をした「労働者」が解雇や労働者派遣契約の解除、不利益取扱を受けないようにしたもので、「労働者」の保護であるということです(法2条)。したがって、不当な不利益取扱等の労働問題について、労働者側が利用できる法律ができたと理解する必要があると思います。

2 ポイント2

この法律は、「こういう場合は、通報者は確実に保護される」というケースを定めているだけで、「こういう場合しか通報者は保護されない」ということではない。

つまり、この法律の狙いは、労働者が安心して通報できる範囲(竹中大臣の言葉を借りれば「安全地帯」)を明確にするということに目的があり、その範囲を外れたとしても、解雇権濫用の法理(労働基準法18条の2)のような一般法理による通報者の保護は十分に可能なのです(公益通報者保護法6条)。

3 ポイント3

この法律による保護の要件は、通報先ごとに異なる。

この法律の保護の枠組は、ポイント1の発想であるため、限定的なのですが、特に我々が注意すべきは、通報先が三つに限定され、しかもその通報先ごとに保護の要件が異なるという点です。とりわけ、我々がこれから通報しようという人の相談を受けるときは、やはりこの法律によって保護を受ける「安全地帯」であるかどうかを適切に判断したうえ、アドバイスすべきですから、この要件の理解は不可欠となりそうです。

まず、三つの通報先とは、・労務提供先もしくは当該労務提供先があらかじめ定めた者、・通報対象事実について処分権限を有する行政機関、・通報対象事実の発生もしくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者です。具体的にどのようなところが上記・〜・に該当するかは、どんな本にでも解説されているので研究いただくとして、ここでは今回の研修で紹介のあった「処分権限を有する行政機関」を調査するのに便利な内閣府ホームページ公益通報者保護制度ウェブサイト(http:/www.consumer.go.jp/koueki/kensaku.html)をお知らせしておきます。

次に、保護の要件ですが、法律第3条1号、2号、3号に規定されているので、詳しくは条文を精読していただくとして、とりあえず「・、・、・の順番で要件がどんどん厳しくなっていく、だから相談を受けたときは、ちゃんと条文を確認しよう。」ということにしておけばいいでしょう。

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ITコラム

月報記事

会員 大庭 康裕

1 はじめに

ホームページ委員会からITコラムを書いて欲しいというご依頼がありましたが、私はITに関する知識が殆どないので、最初は丁重にお断りする予定でした。しかし、その夜、スーパーサニーで買ったお豆腐1丁、ひじきと大豆とこんにゃくの煮つけなどで夕食をとりながら考察したところ、人生の夜長に興を添えるために、何か意見を述べておくのも悪くはないと思ったので、お引き受けした次第です。

2 私のIT歴

ITの代表と言えばパソコンですが、私はもともとワープロに慣れ親しんでいたせいか、パソコンがぽつぽつ普及し始めても頑固にワープロに拘っていました。携帯電話さえも贅沢品であり不必要だという意見で持っていませんでした。けれども、私が司法修習生になった頃、福岡地裁、福岡地検では既に大きなディスクトップのパソコンが導入されていました。そこで、私も後期修習に入る前にノートパソコンを購入して(当時はまだ高価でしたが)パソコンの練習を始めました。

本格的にパソコンを使用し始めたのは、修習を終えて森竹彦先生の事務所に就職してからです。森先生は知る人ぞ知るパソコンに造詣の深い方で、私にとってはまさに闇夜の光でした。

平成12年に独立して事務所を構えてからは、業務上の必要性を認識して(無料で電話機をもらえたからでもありますが)ようやく携帯電話を購入しました。また、私の事務所は狭いことから、場所を取らない薄型ディスクトップパソコンが登場し始めていたので渡りに船と導入しました。そして、弁護士のパソコンと事務局のパソコンをLANでつなぐなどして効率的な仕事を心掛ける傍ら、メールやインターネットを利用して仕事や趣味の充実を図っています。

3 ITのメリット

電子メールの普及は、他の弁護士と共同して事件を受任できる余地を大幅に拡大しました。準備書面などを添付ファイルでやり取りできるので、他の弁護士の作成した文書の訂正が容易になりました。それゆえ、わざわざ共同事務所にしなくても他の弁護士と仕事をしやすくなりました。

各種メーリングリストの存在は、私のような弁護士一人事務所を経営する者にとっては大助かりです。いろいろな大先生に事件処理上の問題点をお聞きすることができ、しかも適切な回答を得ることができるからです。

インターネットによる情報収集は、地方と中央の情報の格差を大幅に縮小したと思います。地方に居ながら東京あるいは世界各地のいろんな情報が入手できるからです。

4 ITのデメリット

パソコンにせよ携帯電話にせよ、備わっている機能を全て使いこなせる人は少ないと思いますし、技術の進歩も早過ぎます。最近、老若男女を問わず異常な行動を示す人が増えたと言われていますが、それはITに代表される種々の技術の進歩があまりに早すぎるので、とてもついていけないからではないかと思っています。

また、コンピューターウイルスにいつ侵入されるかわからないので、対策ソフトを導入し、しかも毎年更新しなければならないなど厄介です。

ウイルスではないにせよ、ジャンクメール(海賊メール)が毎回送りつけられるので削除するのに往生します。「貴方を50万円で買いたいという女性がいます。すぐご連絡を!」などというメールが何度も来ますが、「私の値段は50万円か」と苦笑しています。

そして、携帯電話が普及したことで、「弁護士は出張で連絡が取れません」などという言い訳が次第に成り立たなくなっています。どこにいても仕事に追い回される状況になっています。

5 結 論

ITそのものは我々の生活における便利な道具の一つにすぎません。これに振り回されることなく上手に付き合っていきたいものです。

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