福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2006年7月号 月報

犯罪被害者相談研修

月報記事

会員  岡室 恭輔

1 去る平成18年6月14日、弁護士会館三階にて犯罪被害者相談研修が行なわれました。この研修は、資格研修と位置づけられ、受講した弁護士は、天神センターの犯罪被害者相談の担当弁護士として登録ができるほか、日本司法支援センターの犯罪被害者支援業務における犯罪被害等に関する精通弁護士として登録されることになるというものでした。

2 研修では、当会の犯罪被害者支援に関する委員会の委員長の芦塚先生の御挨拶の後、同委員会の委員の先生方によるロールプレイが行なわれました。

設定としては、それぞれ少年事件、交通事故で子供を亡くした親が弁護士に相談に来たというものでした。

ロールプレイにおいて相談を受けた弁護士は、相談者から、子供が死亡した事件の真相を知りたくて民事訴訟を提起することを考えているという相談を受けたにもかかわらず、経済的な観点から訴訟提起の是非を述べるに終始し、あるいは、弁護士が相談者の質問を遮り、自分の聞きたいことのみを聞き、後は自分に任せておけばよいという態度で相談を受けていました。

これらは、分かりやすくするために多少誇張されてはいたものの、本質的な点を捉えているものだったと思います。

それは、弁護士は何よりまず相談者の話を十分に聞かなければならないということです。そうでなければ依頼者が本当に何を期待して相談に来ているのか分からず、結果として十分な回答ができないことになります。

特に、犯罪の被害者やその家族の場合、ある日突然犯罪の被害に遭うのであり、自分がどうしたらいいかのみならずどうしたいのかさえ分からずに相談に来ることもあると思います。また、相談をしている間に考えが変わっていくこともあるそうです。したがって、30分間の相談では非常に難しいことではありますが、極力じっくり話を聞いて一緒に方向性を見出していく必要があると思います。

3 その他には、福岡県警が犯罪被害者の心のケアのための相談窓口として設けている「ミズ・リリーフ・ライン」からカウンセラーの方をお招きして講演をしていただきました。

私はこの存在をこれまで知らなかったのですが、犯罪被害に関係する人であれば、性別や被害者本人であることなどを問わずに相談でき、専門の心理カウンセラーが話を聞いてくれるのだそうです。

カウンセラーの先生のお話によりますと、犯罪被害者の心理は時間や相談を経るにつれてかなり揺れたり変化したりするそうです。このことだけでも理解していれば、我々が相談を受けた際、前回と言うことが違っていたとしても、相談者がなかなか決断をしてくれなかったとしても、それにイライラしたり相談者を責めたりせずにいられるでしょう。

私たち弁護士にとっては、法的な問題には対処できるとしても、心の問題までケアすることは容易なことではありません。したがって、相談の段階で以上のようなことを少しでも注意をした上、さらに、犯罪被害者の心のケアを専門としている機関と協力していくことが非常に重要なことだと思います。

4 私は、これまで犯罪被害者の方からの相談を受けたことはありませんでした。しかし、考えてみると、刑事事件を担当する際、多くの場合そこには被害者がいます。

そのような場合に、犯罪被害者の気持ちも考えることができれば、示談交渉においてかえって被害者を傷つけるようなこともなくなるのではないでしょうか。経験が浅く、なかなかそのようなところまで配慮できていない私は、今さらながらそんなことを思ったりしました。

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