福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2006年5月号 月報
代監って知ってますか ー3・31市民集会報告ー
月報記事
平成18年3月31日 福岡県弁護士会館3階ホールにて
会 員 村井 正昭
3月31日「代用監獄の廃止を求める市民集会」を弁護士会館3Fホールで開催しました。
主催者の心配を余所に、3Fホールが満席となる盛会となりました。
「代用監獄「拘禁二法」という言葉を知らない会員もいるのではないでしょうか。」、
会報29号に「拘禁二法に反対する市民集会」(1992年3月24日開催)の写真が掲載されています。
982年「刑事施設法」「未決拘禁施設法」が国会に上程され、併せて、警察庁が「警察拘禁施設法」を上程準備されていることが発表されました。これらの法案は、弁護人との接見交通権を著しく阻害するものであり、日弁連を先頭に、全国の弁護士会が反対の声を上げました。 既決については、刑事施設法が成立しましたが、未決に関する立法については、代用監獄の廃止を強く主張する弁護士会と代用監獄の温存、恒久化を望む法務省、警察庁との対立が続き、立法が見送られてきました。
警察に設置されている留置場が代用監獄と呼ばれるのは、明治41年、監獄法施行時に「警察署に附属する留置場はこれを刑事施設法に代用することを得」とされたことに由来するもので、明治政府の財政理由から、全ての未決を収容しうる拘置所を建設する予算がなかったために「代用」を認めたもので、将来は廃止すべきものとされていました。
私たちは、夜間休日の接見が自由なため、拘置所よりは代監が便利であり、接見を重ねることを重視しがちです。
また、接見の便利さから、取調の可視化が実現すれば、代監でも問題なしとの声もあります。
集会での4人の方の報告を聞くと、このような考えが、いかに甘いかを思い知らされました。
残念ながら、法案は衆議院を通過しました。
しかし「代監を将来に向け、廃止すべき」との付帯決議があります。
この付帯決議をテコに、引き続き、代監廃止を訴えて行く必要があります。
これが、21世紀に至るも存続し、恒久化しようというのが今通常国会に上程された「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律」であります。
警察庁は、代用監獄の恒久化から更に一歩進め、独自に、大規模な「警察留置場」を設置しようという動きを示しています。「代用監獄は冤罪の温床」と指摘されています。
捜査機関である警察が、同時に、身柄を監督し、長期間、長時間の自白強要のための取調を可能としています。
死刑再審事件は、代監の下で発生しています。
捜査機関と拘禁者の身柄を拘束する機関とを分離すべきというのは、国際的な常識であります。
今回の立法は、歴史の流れに逆行するものです。
3月31日の集会では、安田好弘弁護士、鹿児島の公職選挙法違反事件の女性被疑者に体験談を語っていただき、武内謙治九大助教授、甲木真哉会員に報告をいただきました。
安田弁護士は「弁護士の接見よりも取り調べは時間と空間を容疑者から奪い、圧倒的不利を与える」と語り出し、警察留置場の設備、監視実態を具体的に報告されました。
留置場には机もなく、筆記用具も自由に所持できません。弁護人が記録を差し入れしても、被疑者がそれを十分に検討することはできないのです。
女性体験者は、「拘置所は食事も手作り、本の貸出しもあるし、外の空気にも接することができる」と語り、警察留置場の厳しさを報告されました。