福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2005年8月号 月報
英国便りNo.3 大学教員のストライキ(2003年10月22日記)
月報記事
刑弁委員会の皆様、松井です。
今回は、大学のストライキについてご報告したいと思います。
9月22日、新学期が始まる日の朝、私は緊張の面持ちで大学へ向かいました。どんな人たちが同じクラスにいるのか、どんな授業があるのか、自分はうまくやっていけるのか、期待と不安が入り混じる複雑な思い。18年前の大学入学の時の気持ちが蘇ってきます。 ところが、新入生対象のオリエンテーションが行われ、さあこれから授業がはじまるというとき、「教員組合がストライキのため、明日からの授業は当面の間キャンセルされる」との通知がありました。それを聞いて喜んでいる学生もたくさんいましたが、気合を入れて臨んでいた私としては、拍子抜けの感があり、さらに、「授業料を満額払っているのに授業を受けられないなんて」との怒りも込み上げてきました。
翌日様子を見に学校に行ってみると、キャンパスでは、組合の法被のようなものを着た人たちが「オフィシャル ピケッテリング」と書かれた看板を掲げて校舎の入口に立ちふさがっており、学生たちにビラを配っていました。ビラには、大学教員組合とロンドン大学学生組合との共同宣言と題して、次のようなことが書いてありました。
「大学教員組合は、11年のあいだ凍結されたままのロンドン手当(物価の高いロンドンに勤務していることによる特別手当)の引き上げを求めて、さらなるストライキを行う。1年2134ポンド(約40万円)という額は、他の公務員に支払われている手当てをはるかに下回っている。教員組合は、これまで学生への支障を最小限にするために気を使ってきたが、経営者側は、それを逆に交渉回避のために利用してきた。このような状況のもと、学生組合も、教員組合がストライキに突入する以外に手段がないことを理解し、それを支援することにした。この紛争が11年間解決しなかった責任が、大学経営者側にあることは明らかである…」
見回してみると、前日のオリエンテーションで私たちの世話をしてくれた教官も法被を着て一生懸命ビラを配っており、「先生たちも大変なんだなあ」と思うと私の怒りもおさまってきました。
翌週、ストライキは解除されて通常の授業がはじまりました。その教官に顛末を聞いてみると、「まだ交渉中だけど、いつかは解決するさ」とのことでした。
イギリスでは、公共機関のストライキがよく行われています(公務員の争議行為も禁止されていないのでしょう)。これまで郵便局が2回ほどストで閉まっていましたし、つい先日は地下鉄がストのため止まりまりました。しかし、イギリスの人たちは、故障なども含め、公共機関が止まるということに慣れていて、文句をいう人はあまりいないようです。