福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2005年8月号 月報
女性の権利110番
月報記事
山 ? あづさ
六月二七日、「女性の権利一一〇番」の電話相談が行われました。これは、日弁連両性の平等に関する委員会と全国の弁護士会との共催により、「全国一斉女性の権利(女性に対する暴力)一一〇番」として、一九九一年以降、毎年実施されいるものです。今年は、六月二三日から二九日までの「男女共同参画週間」の間に全国の弁護士会で実施され、福岡では二七日に実施されました。
当日は、午前一〇時から午後四時まで、三名ないし四名の弁護士が待機して、二本の電話回線を使って電話相談を受け付けました。この日の相談件数は、一八件でした。午前一〇時すぎと、テレビのニュースで放映された正午すぎに電話が集中し、その間は、受話器を置くとすぐ次の呼出音が鳴る、という状態でした。一件の相談にどうしても二〇分〜三〇分は時間がかかってしまうので、おそらく、何度もかけたけれども電話がつながらなかったという方もいたと思います。(その一方で、全く電話がかかってこない時間帯もありましたが…)
相談内容の内訳は、次のとおりでした(複数回答あり)。
- 夫婦・内縁・男女関係 一二件
- (うち、離婚に関するもの一一件)
- DV 三件
- セクハラ 一件
- 民事一般 四件
- その他 一件
具体的な相談内容として多かったのが、離婚の際の条件に関するものでした。「子どもの親権は取れるか」、「慰謝料や養育費は取れるか、いくら取れるか」、「借金があるが離婚するとどうなるか」というものです。電話で、しかも短時間のうちに具体的ケースについて金額まで回答するのはとても無理なので、こうした相談に対しては、離婚に関する一般的な説明と、調停・裁判といった手続の説明を行い、場合によって弁護士会の法律相談などを紹介しました。
また、「暴力を受けていて、離婚しようかどうか迷っている」という相談に対しては、気持ちが決まるまで、女性センターなどに相談して、ひとつひとつ問題を解決していくように勧めました。\n そのほか、「離婚届を出してしまったが、取り決めた条件を変えられないか」、「離婚した夫が養育費を払わないので、元夫の両親に請求できないか」などの相談がありました。
今回は、緊急性のあるDVの相談などはありませんでしたが、一件、離婚調停中に子どもを夫に奪われたというケースがあり、これは急を要するということで、待機していた弁護士の事務所に直接相談に来てもらうという対応を行いました。(こういうケースがあると、電話相談をやった甲斐があったという気分になります。)
振り返ってみると、今回は、不安や悩みや疑問を思いつくままに話すというような相談が多かったのですが、「法律相談」というと躊躇してしまう方でも「女性の権利一一〇番」だと相談しやすいというのがあるのかもしれません。こうした相談に対しては、とりあえず話を聞いて、相談者の疑問や不安がどのあたりにあるのかを確認して、それに対応する一般的な説明をして、次の相談先を紹介するなど今後どう動けばいいかの方向性を提案する、ということくらいしかできないことが多いですが、それでも、相談された方の気持ちが軽くなるのなら意味があるかな、と自分を納得させています。
また来年も「女性の権利一一〇番」を実施することになると思いますので、ご協力をお願いいたします。