福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2005年7月号 月報
ITコラム 〜すべては記憶の減退から〜
月報記事
森 竹彦
記憶の減退に悩む
五〇歳を過ぎて記憶の減退がひしひしと迫ってきた。何を頼まれている? それはどこまで準備した? 何をしなければならない?
何しろ弁護士が依頼を受けている“問題”は、大は訴訟事件から小はちょっとした調べ物まで、どれをどうした? あれはどうした? 克明にメモしたつもりでも、どこか抜けてしまうのではないかという不.安。
パソコンを勧められた。データベースソ\フトを使いなさい。
当時はNECのPC九八全盛時代。パソコンもソ\フトも高価だった。思い切って買った。全部で五〇万円以上。この投資が無駄になるのでは? と不安でいっぱいだった。 データベースソフト
データベース。最初に、「あなたが求めているのはデータベースソフトです」と教えて貰った。が、どうやって操作するのか判らなかった。しかしまた、データベースこそコンピュータの花形のような気がした。究極の目的=自分の事件管理をどうするか、について“先輩”はデータベースソ\フトをマスターせよ、といった。もちろんこの“先輩”はわたしよりずいぶん年下なのだ。記憶力の減退を補うためにパソコンを買ったのに、そのためにさらに新しい知識の吸収を強いられる。とんでもない話だと思うものの、やり始めると面白くもある。バッチファイルの作成。config.sys の書き換え(そういえば数号前に辻本さんが同じようなことをやっていたと書いていたな。結構面白かった)、マクロ(ソ\フトウエアの中での簡易プログラミング)の作成と進んでくると、ある程度は使いこなしが可能となってきた。
ITの活用
いま、私の事務所の事件管理はデータベースソフトによる自作のマクロ処理である(このマクロは何人かの方に提供、今も使って貰っている?)。
一台のPCをホストコンピュータとして、これにデータを蓄積、全てのPCをLANで接続、ルーター経由で光ファイバーでインターネットへ(これを全部私がやったというところが“趣味”か)。
仕事のデータを一度入力さえすれば、並べ替え、ピックアップはお手のもの。その日の仕事の進行を入力すれば報告書のプリントへ。日付順に並べなおして一覧で進行具合を管理する。金銭管理も、住所管理も。データベースソフトはこれらを連結して取り扱える(リレーショナル)ところに妙味がある。(エクセルはデータ処理が出来るソ\フトであるが、リレーショナルではない)
おかげでさらに進んだ“記憶の減退”にかなりの部分対応できていると思う。
いま、IT活用の方向は、一つは事務所内LANによる情報の一本化と集積、活用、他の一つはインターネットによる外部情報の収集・活用と情報発信であるが、はたして“活用”されているだろうか?
みんなが徒歩で歩く社会に、自動車を用いることが出来る者がはいれば、誰が勝つかは明らかだ。ITを使いこなせるかどうかもこれと同じことだろう。他方、ITといっても活用にはノウハウがずいぶんある。会員のノウハウを持ち寄って皆で生かすことも考えていいのではないだろうか。IT委員会にはぜひその方法を考えて頂きたいと希望しているのだが。