福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2005年7月号 月報
シリーズ仲裁人に聞く
月報記事
松村龍彦
平成一四年一二月、当弁護士会に紛争解決センターが設立され、およそ半年が経過しました。そこで、紛争解決センター運営委員会では、今後、定期的に仲裁人にインタビューし、月報に掲載することにしました。
第一回は、岩崎明弘会員にお話を伺いました。同会員は、仲裁人として、紛争解決センター設立後、初めて和解が成立した事件をご担当になられました。
Q 紛争解決センターの設立について、どのような感想をお持ちですか?
A 私は、一五年以上も前の月報に、当会でもADRを設立すべきだという意見を掲載したことがあります。
紛争の「公平な」解決機関が裁判所だけというのは裁判所にとっても荷が重いでしょうし、「紛争を公平かつ迅速に解決したい」という国民の需要に応えるには、弁護士が仲裁に当たることが不可欠だと考えていたのです。
Q 和解成立第一号事案は、どのような事件だったのでしょうか?
A 貞操権侵害を理由とする慰謝料請求事件でした。当事者双方に弁護士は就いておらず、「慰謝料の額」が主たる争点となりました。
Q 仲裁人として、どのような点に留意されたのでしょうか?
A 「公平な」専門家であることについて各当事者の信用を獲得、維持することや履行を確保することに注意しました。また、「迅速な」解決を目指して、期日を集中的に入れました。
Q 差し支えない範囲で、和解成立の経緯についてご教示下さい。
A 申立人は、相手方の処罰を望む一方で、できれば早期に解決したいという希望を抱いていました。そこで、私は、常識的な範囲内での金銭賠償で満足する他ないことを丹念に説明しました。
その結果、第二回期日で、ほぼ合意に達したのですが、解決を急ぐと、相手方が不満を覚え、履行を確保できないおそれがあったので、相手方に対し「ご納得頂いたら、次回、和解金を持参して下さい」と告げ、第三回期日を指定しました。
相手方は、第三回期日に和解金を持参し、和解成立の席上で、これを支払いました。
Q 申立てからどのくらいの期間がかかりましたか?
A 申立てから第一回期日までが二週間余り、申\立てから和解成立までが約一か月でした。
Q 随分、迅速な解決でしたね。同席調停の形はおとりになったのでしょうか?
A 事案の性質上、同席調停は行いませんでした。各当事者には別個の控室を与えて、顔を合わせることがないようにしました。もっとも、和解成立の席では、当事者を同席させ、和解の内容とくに清算条項について十分に説明しました。
Q 「和解成立第一号」ということで、ご苦労なさった点は?
A 慎重に、和解条項を作成しました。特に、仲裁費用の負担条項は前例がなく、また今後は先例にもなるので、気を遣いました。
Q 紛争解決センターの今後について、どのようなご意見をお持ちですか?
A 大いに発展させたいと考えています。そのためには、会員や利用者となり得る市民に、制度の存在、目的等について知ってもらうことが重要でしょう。
岩崎明弘会員には、ご多忙のところ、約一時間にわたってお話を頂き、誠にありがとうございました。