福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2004年7月号 月報

ITコラム 「IT化は一日にしてならず」

月報記事

田中雅敏

鴻和法律事務所は、平成九年ころからホームページを立ち上げていました。

また、同時期から、事務所内のパソコンはLANで接続し、文書管理なども、一つのサーバに集約して、相互に利用できるようにしてあるため、事務所に所属している弁護士の文書財産の共有化を図ることができるのは、大きなメリットです。

コンピュータを事務所に導入することやインターネットの利点については、すでにこれまで何度かコラムで取り上げられてきていますので、このような点はさておくとして、今回は「IT化」のデメリット、というか苦労話をいくつかしたいと思います。

コンピュータやネットワークを導入し、ホームページを設置することのもっとも大きな「苦労」は、何と言っても、「管理」の一言に尽きると思います。

事務所のLANシステムは、第一次的には事務局員が管理をし、何か問題が起きた場合は、専門の業者に来てもらうことにしています。業者の方は、何か起きればその日のうちに出動してくれるため、大変重宝しているのですが、それでも、「突然サーバが落ちた(止まった)」という事態で、二〜三時間既存の文書が開けない、などということになると、非常にいらいらします。

このようなときのために、毎日のバックアップや、サブシステム(サーバが落ちても、なお影響を受けない別システムのネットワーク)の構築などが欠かせません。

ところで、このような管理以上に難しいのは、何と言っても「ホームページの更新」でしよう。

事務所のホームページは、実は、平成九年の開設以来、弁護士の人数の変更程度の更新しかしておらず、事実上、七年間更新無しという状態が続いていました。

私自身もずっと気になっていたのですが、なかなか更新する時間がとれず、更新するとしてもそのコンテンツはどうするのか、といった点が決まらないこともあって、結局、放置されていたという現状でした。

今年に入り、久しぶりに事務所のホームページをみて、いつのまにかあまりに時代遅れになっていることに愕然とし、発作的に、その週末にホームページビルダーとマニュアル本を購入し、土日の二日間の突貫工事で作り直したのが、現在のホームページです。

同時に、プロジェクトチーム(?)を編成し、コンテンツの案を考え、10人いる弁護士各自に、作成の割り振りを行いました。

しかし、結局、原稿は集まらず、その先は、またしても遅々として進んでいない状態です。あたりまえのことですが、IT化と言っても、勝手にコンピュータが原稿を書いてくれるわけではない以上、コンテンツを作る人間の努力なくして、IT化の効用は見込めないということなのでしょう。

そこで、結論。IT(情報通信技術)は、あくまで道具にすぎません。設備投資をして「IT化」を進める前に、「何をやりたいのか?」「何が発信したいのか?」を、よくよく熟考し、発信可能なコンテンツの質と量を見越した上で、環境整備を行うことを、お勧めします。

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