福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2004年4月 1日

法律相談センターの展開

ウォーク

〜市民のよき法律アドバイザーをめざして〜

HOW TO 法律相談  天神弁護士センターから

1 センターでの相談内容として圧倒的に多いのは多重債務関係についてであり、ついで離婚や相続等の家事問題が多いので、これらを具体例に引きながら、効果的に法律相談を受けるためのアドバイスをしましょう。

これはセンターでの相談に限らず、法律相談を受ける場合の全てに当てはまることです。

2 法律相談センターを訪れる際の留意点

まず、事前に電話予約をしてもらうことになります。そのときに予\め事前の注意などがあると思いますので、説明を聞いておいて下さい。

限られた時間の中で的確な回答を出していくためには、事件の内容を明らかにする書類(契約書、登記)などを持ってきてもらうことが必要です。実際交渉や裁判となった場合にこのような証拠は必ず必要となりますから、相談のときに集めておいて損にはなりません。ただし、いきなり全てを用意することは困難な場合がありますので、自分が持っている限りの関係書類を持ってきてください。これについては次のページに個別事件後とに必要書類の例を書き出してみました。

特に注意してほしいことが「時間厳守」です。センターでは、1人の担当弁護士が1日5、6人の相談者の方の話を次々と聞くことになるのですが、最初の相談者の方が10分遅刻すれば、後の5人も10分ずつ時間がずれ込んでいくことになるのです。予約時間の10分前には法律相談センターの方へ来ていただくことを守っていただければ、相談がスムーズにいくことになります。

3 事前の注意点

  1. 多重債務関係

    誰に、いつ、どれくらい借りたのかが分かるような書類が必要です。特に、多重債務者の方の場合は、事前に債権者の一覧表(債権社名・住所・債権額など)を作成し、併せて収入関係や家族関係を明らかにする書類を持ってきてもらえると話がスムーズに進みやすくなります。

  2. 離婚

    離婚には(1)当事者間での協議中、(2)調停中、(3)裁判中と段階があるので、それぞれに応じた書類が必要になります。(1)の場合は交渉内容を整理したメモ、(2)の場合は調停の経過や具体内容を示す書類(裁判所に双方が出した書類など)(3)に至っていれば(2)とあわせて調停不成立の証明書等が必要です。

  3. 相続

    不動産や銀行預金などの財産がどれくらいあるのかのメモと、誰が相続人となるのかがはっきり分かる戸籍謄本や親族関係を示したメモを事前にまとめておいていただくと便利です。

  4. 交通事故

    警察署が発行する事故証明書(県警本部で作ってもらえます)を持ってきていただければ事故の特定が容易になります。人身事故の場合は診断書も必要です。

  5. 一般民事事件

    急に裁判を起こされて、どうしてよいのか分からず困っていると言うような場合は、裁判所から送られてきた訴状と証拠書類を必ず持参してください。

    弁護士に事件を依頼せずに自分で裁判を行っている場合は、訴訟にこれまで提出されている資料は全て持ってきてください。

これらの書類の持参がなければ、相談が上手く行かず、書類を揃えてもう1回来て下さいということにもなりかねませんので、準備していただければ幸いです。

ドメスティックバイオレンスと子どもの虐待についての相談
Q ドメスティックバイオレンスとは何ですか?

ドメスティックバイオレンスとは、親密な関係にある夫や恋人から、妻やパートナーに対して振るわれる身体的・精神的暴力のことをいいます。警察庁が発表\している統計資料中のドメスティックバイオレンスの項目には日本で年間100人以上の妻が、夫から殺されていることが紹介されています。「怪我をされされた」という程度になるともっと多く、怪我をしても病院にもいかず、警察にも相談せず、となると、もっと多く、なるのです。

そういうと、会社員や公務員、自営業などなど社会で立派な生活を送っている人がそんなことするだろうか、暴力団だとか、そういう危ない人の話ではないのか、と思われる方も多いでしょう。しかし、実際には、一見普通の社会生活を送っていると思われる家庭のなかで、夫から妻に対して、ひどい暴\力が振るわれ続けているケースが少なくありません。

 Q 弁護士は何をやってくれるんでしょうか?

まず、身の安全を確保し、落ち着いた生活を確保するために、どうすればよいのかを一緒に考えて、その後離婚なども含めてご相談にのります。

家庭内で行われる暴力は、被害を受けている妻も、逃げるに逃げられないことが多いのです。多くの人は、逃げても執拗に探されたり、押し掛けてくる、見つかれば、もっとひどい目にあう、ということをとても怖く思い、逃げること自体を諦めてしまったりしています。実際、妻が自宅を出ると、実家や友人宅を探し回ったり、怒鳴り込んだりする暴\力夫も少なくありません。このような時に役立つのが「保護命令」の制度(配偶者からの暴力及び被害者の保護に関する法律10条・通常DV防止法などといわれています。)です。身の回りを整理して、必要な一定の荷物を持って家を出たい。あるいは職場や、ようやく確保した生活場所に近づいてほしくない。このような時、(1)過去に夫からの暴力について警察やDV防止センター(各県の婦人相談所など)に相談したことがあり、(2)今後、生命・身体の安全を脅かすような身体的暴力を受ける可能\性が高いときは、裁判所に申し立てて保護命令を求めることが出来ます。(1)のように警察のなどに相談したことがなくとも、これまでの暴\力の実情を書面に書いて、公証人役場で宣誓陳書を作れば大丈夫です。このような場合、裁判所は、夫に対して、「2週間、自宅から出て行け(退去命令)」、あるいは、6ヶ月間、妻の周りや職場や生活場所をうろつくな(接近禁止命令)」という内容の二種類の命令を出すことができます。

もし夫が保護命令に違反すれば、刑事罰を受けることになります。また、保護命令が出た場合には、警察も得に慎重に警備を行ってくれます。

夫の暴力が怖くて、落ち着いて今後のことを考えることもできないようなとき、まず、身の安全を確保することはとても大切です。ゆっくりと食事をし、ぐっすりと寝る。日常生活の安全を確保してから、夫との関係も含め、これからのことを考えましょう。

また、生活場所の確保や、経済的な心配は弁護士だけでは解決できない問題ですが、弁護士会は各自治体の相談窓口や支援グループとも連携を取っていますから、一緒に協力しながら、問題解決にあたります。

暴力を振るう夫と離婚したいときにも、もちろん弁護士はご相談に乗ることができます。この場合にも、離婚手続きを進めるときに、さらに暴\力を振るわれるおそれがないようにしながら、手続きを進めなければなりません。最近は、調停や離婚訴訟においても、裁判所と連絡をとり、警備を要請したりすることが必要なケースもあります。また、手続きのなかで、暴力を認めない夫も少なくありませんから、そのような時に、妻の話をきちんと裁判所に理解して貰うために、弁護士が力を発揮します。

各法律相談センターなどにご相談いただくときには、「夫の暴力について相談したい」或いは「DV防止法の保護命令を相談したい」などとあらかじめ予約の際にお伝えいただければ、手続きに詳しい弁護士の担当日に予\約できると思います。一度、ご相談ください。

子どもの虐待について心配がある時にも、弁護士が力になれる場合があります。子どもの虐待は、児童相談所や保健所、学校や保育園、幼稚園、病院などたくさんの専門機関が力をあわせて解決しようと取り組みを進めている問題です。その中で弁護士は、特に、虐待している保護者(親など)と子どもを、一定期間別に生活させる必要がある時に、親権者変更や監護権者の指定という家庭裁判所への申立のお手伝いをしたり、児童相談所と協力しながら、今後のことを一緒に考えていくことになります。

各法律相談センターなどにご相談いただく時に、「子どもの虐待について相談したい」とお伝えいただければ、詳しい弁護士の相談日に予約できると思います。

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