福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)
2004年3月 1日
夫婦の姓は?
ウォーク
「早く結婚して姓を変えたい」「同窓会名簿に旧姓って書かれたい」、こんな女性の声に見られるように、女性にとって姓が変わるということは、結婚の象徴のようなものでした。
明治始め、庶民が姓を名乗るようになった後、夫婦同姓が法律上規定されたのは一八九八年(明治三一年)です。「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」に示されるとおり、妻が夫の家の姓を名乗るという夫婦同姓でした。戦後改正された現行民法では、憲法に揚げる個人の尊重と男女平等の精神のもと、夫婦の姓は、二人の協議により夫または妻の姓のいづれかを選択することになりましたが、夫婦同姓は戦前と変わりませんでした。
そして現実にも、約九八%の夫婦が夫の姓を選択しています。昨年九州弁護士会連合会では、夫婦別性についてのアンケートを行い約ニ五○○人から回答を得ましたが、その中では、約八五%の夫婦が性の選択について協議をせず、約八九%の人が、当然と思って、あるいは世間一般がそうなっているのでという理由で夫の姓を選択していました。対等な協議による選択とは程遠い数字です。
しかし一方で、結婚して戸籍名は夫の姓にするが、社会生活では「旧姓」を使う「通称使用」の女性が増加し、企業でも女性が多く働く会社を中心に、この通称使用を認める傾向にあります。それでも、パスポートや健康保険証は戸籍名でなければならず、通称使用にも限界があります。そのため最近では法律上の結婚自体をしない「非婚カップル」も少なくありません。
生まれた時から慣れ親しんできた自分の姓名。姓と名前で一人の個人を表すものなのに結婚によってなぜ変わるのでしょう。「どうしてそんなに姓にこだわるの」という疑問を持つ方もあるでしょうが、反対に九八%の男性が姓を変えていないことからすれば、男性こそ姓にこだわっているとは言えませんか。\n
女性の社会進出が進み、働く女性が五割を越え、社会参加に対する女性の意識も高くなっています。その意味では、確立した社会生活の途中で姓が変わることの不便さが、このような議論を生んだひとつの理由ではあります。しかしそれ以上に、女性だけが姓を変える結果となっていることへの疑問、そこに根強く残っている「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」という風習を敏感に感じるからではないでしょうか。女性の多くは「○○さんの娘さん」から「○○さんの奥さん」「△△ちゃんのお母さん」と呼ばれ続けます。そうではなく、○○△△という一人の個人として生きたいという女性の意識が、自分の名前、姓へのこだわりを生んでいると思います。
夫婦別性にすると、子どもの姓はどうなるのか、家族の一体感が失われるのではないかとの疑問も出されています。
ここでいう家族の一体感とは何でしょう。別性を実践している多くのカップルは、法律上の結婚という制度に支えられていないだけに、実質的な結びつきによって二人の関係が支えられていることを強調します。離婚や養子縁組などによって、血のつながりはあっても姓が異なる家族が一緒に暮らすことは珍しくありません。しかしそこに造られている家族の関係が同姓家族より薄いとは決して言えません。「家庭内離婚」などの言葉に示される形式的なまとまりや、家族が誰かに従う形での一体感ではなく、対等な個人の関係から生み出される家族の関係。これを一体感というかは別として、姓に左右されない夫婦・家族の関係を作ることこそ重要なのではないでしょうか。
子どもの姓もしかりです。現在日本弁護士会が提案している案では、夫婦の協議によって子の姓を決めるとしていますが。どちらの姓を名乗ろうとわが子に対する愛情は変わらないはずです。
夫婦同姓は、女性だけの問題だけではありません。結婚してどちらかが姓を変えなければならない夫婦同姓の制度では、二人とも姓を変えたくない場合、結婚できませんし、本当に対等に姓の選択を協議するとしたら、男性も姓の変換について真剣に悩まなければならなくなるはずだからです。
現在民法の家族法改正の中で、夫婦別姓が検討されており、選択的別性(同姓でも別性でも選択できる)制度が、有力視されています。
自分がいやなことを相手にも強制したくない、姓を自分の一部としてこだわり続ける、こんな自由を認めることはむつかしいことでしょうか。
夫婦別姓を認める民法改正は難航しています。法務省の法制審議会は96年に別姓を認める改正案を答申しましたが、自民党内の合意がえられず、国会提出は実現していません。今国会に向けても、自民党法務部会で議論がありましたが、見送りとなりました(2004年5月)
民暴の被害を受けたらどうするのか
ウォーク
弁護士から見た対応マニュアル
福岡県弁護士会では、社会にニーズに応じるために問題ごとの各委員会を設けています。
民事介入暴力事件に対応するためには民事介入暴\力対策委員会がありますが、同委員会に基本的対応のマニュアルをまとめてもらいました。
1 警察や弁護士に相談する
まず、警察に連絡することです。
弁護士に知り合いがいれば、その弁護士に相談することです。弁護士に知り合いがいなければ、弁護士会に相談して下さい。相談する弁護士を紹介してもらえます。
結局、一人で悩まないことです。
暴力団員は、「俺たちは警察なんか怖くないぞ」と言うのですが、真に受けてはなりません。本当は警察が怖いから、そう言うのです。捜索を受け、逮捕されることは暴\力団にとっては大打撃です。そういう意味で現代の暴力団はビジネスなのですから、彼らは警察沙汰になるかもしれないというリスクは回避しようとすると考えたほうが良いのです。
そのために、現実には、警察に相談するだけで暴力団の不当な行為が止まってしまうことも多いのです。
あるいは弁護士に相談することによって、問題が公になりそうだと言うことで、暴力団の不当な行為が止まることも多いようです。
2 間違っても他の暴力団に相談しようとなどしない
時々、暴力団員を押さえられるような他の顔役の人に頼もうかという人がおられます。
しかし、そのような人に頼られると、かえって、その依頼そのものが犯罪行為に当たってしまったり、法外な報酬を要求されてしまい、かえって困ることになります。
3 暴力団が交渉を求めてきたら、どうするのか
- 相手方の素性の確認
まず面談したら、相手方の住所、氏名や素性を確認してください。「氏名不詳某」では警察も弁護士も対応できないことが多いのです。逆に、相手方の組織まで特定できていれば、後の対応は非常にやり易いのです。
- 面談場所や方法
暴力団が交渉を求めてきたら、相手方の主張を良く聞くことです。まず、相手方の主張を聞かないと始まらないことも事実だからです。何を要求しているか分からないが、とにかく怖いというのでは警察としても動きようがないでしょう。
しかし、面談するときには一人では絶対に会わないことです。一人であるとどうしても暴力団員の迫力に負けてしまうのです。また、間違っても、暴\力団員の事務所で会うことはしないで下さい。会うとしても、ホテルや喫茶店のような公衆の目の届くところで会うべきです。暴力団の事務所で会うということは、暴\力団の要求を聞かない限り、事務所から帰してもらえず、ついには監禁されることを覚悟せざるをえないとまで言っても良いのです。そうなると、結局、一時も早く帰りたい一心で、とんでもない約束をさせられるという目にあってしまいます。
- 交渉の内容
暴力団の不当な要求は巍然と拒絶してください。期待を持たせるような曖昧な発言をしないことです。曖昧な発言をして揚げ足をとられて大変なことになった人は多いのです。
そのような曖昧な発言の揚げ足を取るのが彼らの常套手段だと考えて下さい。間違っても、後で取り消せば良いなどと安易に考えて、暴力団との約束等はしないことです。
要求を断るのは怖いと考えられるのは間違いです。確かに断ると暴力団員はすごむことが多いでしょう。しかし、すごんだり脅したりすれば、彼等は恐喝になるのです。今後は暴\力団が警察に追及される立場になるのです。怖い目に会うことが却って有利な展開につながると考えて下さい。
もし脅かされたとすれば、直ちに警察に通報することも忘れないで下さい。
4 相談窓口の連絡先は下記のとおりです
- 弁護士会は民事介入暴力対策委員会を設けて対応に勤めています\n
弁護士会への連絡先は、福岡地区であれば天神相談センター(092-741-3208)
また、北九州地区は(093-561-0360)、久留米地区は(0942-30-0144)、筑豊地区は(0948-28-7555)です。
- 財団法人暴力追放福岡県民会議も設けられています\n
相談室(092-651-8938)です。
- 勿論、各警察署の暴力団係も相談を受け付けます\n
相談するときには、それまでの事実関係のメモ等を作っておいて下さい。民事介入暴力は機敏に活動する必要が多いのですが、被害者に一から説明を受ける時間がないことも多いのです。しかも慌てて取り乱している人が多いので、話の辻褄が合わずに困ることがあります。処理を急ぐのに、話が分からないときほど大変なものはありません。自分でメモを作ってくと、記憶が曖昧になることもありませんし、記憶の整理にもなるでしょう。
犯罪被害者対策
ウォーク
被害者は何をなしうるのか
「N君、被害者がなしうる法的対策のフローチャート出来た?〆切はとっくに過ぎたけど。」
「難しいですよ編集長。被害者が法的対策としてやれるのは、刑事的(刑罰の手続)には刑事告発や被害届、民事的には損害賠償の裁判や仮処分(裁判前に迅速な仮の命令を求める手続)でしょう。フローチャートを作れって言うのは刑事裁判や民事裁判の流れを一目で見て分かる資料を作れということと同じですよ。そんな分かりやすいのがあれば苦労しません」
「ただ、被害者の法律相談を受けるカウンセラーによれば、被害を受けた人はパニック状態なので、法律手続きの説明を受けるだけでも、法律的に何が出来て何が出来ないかが分かり、自分の進むべき方向が見えてきて落ち着くと言われるんだけれどもね。」
「そのためには弁護士に直接相談するのが最も適切でしょう。だから弁護士会でも法律相談センターだけではなく、新たに被害者相談センターを設ける予定なのでしょう。」
「でも、犯罪被害者が自分の被害を訴えるのに心理的抵抗があって、相談窓口に出向くことが難しいといわれているのが問題でしょう。だから君がなるべく分かりやすい手続フローチャートを作って、この本に載せれば役に立つのに。」
「でも、犯罪被害も多種多様だから一筋縄ではいかないのですよ。刑事的にでも、分かりやすい例で言えば、強姦のような性暴力やドメスティックバイオレンスと交通事故のような交通犯罪では大きく手続きが違いますよね。被害者の対応手段も全く異なってくる。」
★ 『例えば、性暴力の場合はどうなるの。』
「性暴力やドメスティックバイオレンスは他の人の知らない所で行われるから、処罰を求めるためには被害者が加害者を告訴するか被害届けを出すのかいう判断とその手続きが重要になりますよね。その場合、相談を受ける者や告訴を受けた警察が事情を被害者に根掘り葉掘り聞くために被害者を傷つける二次被害の防止対策も大切となります。
民事的には被害者は加害者に対する損害賠償請求とその裁判ができますが、加害者に財産があるかどうかが重要です。加害者に財産がない場合、いくら裁判所が損害賠償を命じてくれても実際には取りはぐれてしまいますよね。性暴力の加害者の中には財産や資力のない人もいるでしょうから、そのような場合、裁判の手間(判決までには証拠書類を出したり、証人尋問をする必要性があり、時間がかかる。但し、第一回目の裁判に被告側が欠席したりしてなんの答弁もしないとか、請求の理由を全て認めた場合などに、直ちに判決されるのが例外である)や裁判の費用(訴訟を起こす際には規定された額の印紙を貼\り、返信や送信用の切手を予め納める必要がある)や弁護士費用をかけてまで、損害賠償を求めるかは大きな問題になるでしょう。加害者に資力があるかどうかは、殺人、傷害、窃盗などどんな犯罪被害においても民事上の救済に大きく立ちふさがる問題かもしれませんね。」
★ 『その点、たとえば交通事故であれば、どうなるの。』
「加害者が強制保険や損害保険に入っていることが多い交通事故の被害では大きく異なってきますよね。保険会社からは賠償金を取りはぐれることがありませんから。刑事的にも交通事故ならば、警察が事故処理に駆けつけますので、告訴や被害とどけなどの手続きはあまり重要ではなくなりますよ。」
★ 『その他、ストーカーの場合はどうなの。』
「ストーカーの場合は、ただ単につけ回すとか、電話をかけるとか刑事的には犯罪になりにくいといわれていますよね。
そこで、ストーカー本人や関係者にストーカー行為をやめるように通知をして、それでもきかないときには、本裁判には時間がかかり、被害が大きくなる可能性がありますので、周辺の徘徊などを禁じるという裁判所の仮処分をとることになるでしょう。それでも違反する時は、違反するたび賠償金を支払うように命じる仮処分をさらに申\し立てることになるのでしょう。ただ、仮処分は裁判所が迅速に命じますので、その担保として裁判所が定める供託金を納める必要があるのが本裁判とは違いますよね。」
「聞いていってみると、犯罪被害対策はケースバイケースのようだし、しかも法律的には決定的な対策がないようだね。」
「極端な話、犯罪によって人が亡くなった場合、どんな対策をとってもその人が生き返るわけでもないし、遺族の心の傷がなくなるものでもないでしょう。そのケースに応じた法的な対策が必要なことはもちろん、関係諸機関の総合的な対策が必要でしょうね。」
「そうだね。被害当初の相談窓口、心理的なカウンセラーや遺族の具体的生活を支援する社会福祉など、たくさんの総合的な対策が今後必要だし、それらを担う機関相互の協力も必要だろうね。」
2000年11月「ストーカー行為等の規制に関する法律」(ストーカー規制法」が施行されました。この規制法では、恋愛や好意感情のもつれから(一方的な思いこみも含みます)出たつきまといなどに対して、警察の警告や公安委員会の禁止命令を求めることができます。違反者には罰則の規定もあります。ストーカーは、放置すると重大な事件に発展することもあり、これまでの民事だけでの対応では被害者の安全を確保できないため、制定されたものです。(2004年5月)
公害環境委員会・曽根干潟視察
月報記事
後藤 富和
近年,自然環境の分野では,湿地とりわけ干潟の重要性とその保護の必要性が強く叫ばれているのをご存知でしょうか。
かつて干潟は,人類にとって利用価値の少ないものという認識から,開発の格好の標的になり,埋め立てられ,戦後数十年の間に日本中の干潟の約4割が失われました。そして,残った干潟も,都市化や公共事業のために,消失しようとしています。
しかし,干潟には,豊かな生態系が発達しており,そこに生息する生物の種類,個体数は極めて豊かであり,生物多様性の宝庫になっています。また,干潟の海の漁業生産量はきわめて高く,そこで獲れる魚介類は,われわれの食卓を潤してくれます。さらに,近時見直されてきているのが,干潟の浄化機能です。下水処理場にたとえると,干潟1haあたりの下水処理人口は約7000人に相当すると言われています。
国際的には,ラムサール条約やNGOの活動の高まりによって干潟の保全が訴えられてきました。
そして,わが国では,1997年4月14日,諫早湾干拓事業の水門閉め切り(通称「ギロチン」)のショッキングな映像が全国の茶の間に流れたことから,一気に干潟保全の国民意識が高まり,1998年の伊勢湾藤前干潟の干拓中止を皮切りに,東京湾三番瀬や中海干拓など,わが国の重要干潟の開発が続々と中止されていきました。
その中で,福岡県においては,北九州市小倉南区の海側に広がる「曽根干潟」が注目を集めました。曽根干潟は,絶滅危惧種を含む鳥類や底生生物,魚介類が多数生息する全国でも数少ない生き物たちの楽園としてその保護が叫ばれている干潟です。
今回,わが国に残された数少ない干潟の現状を認識し,その保護に対する行政の取り組みについてお話を伺おうと,「曽根干潟視察」を計画しました。
委員会では,昨年末から,研究者等を招き,曽根干潟の特性,保護の必要性を学習し,「よし,実際に干潟を見に行こう!」と予定した1月22日,その日,福岡県地方は,近年まれに見る大雪のため,交通は麻痺し,特に,北九州地方については,一度行ったら最後,福岡まで戻れないかもしれないという危機的な状況に見舞われてしまいました。
委員らは,双眼鏡や一眼レフカメラ,手袋,登山靴などを装備し,いつでも出発できる準備を整えていました。
しかし,状況は好転せず,「断腸の思い」で曽根干潟の視察を中止し,北九州市役所への聞き取り調査のみ行うことになりました。
北九州市役所で,「曽根干潟」の保護に取り組む関係各部署の担当者に集まってもらい,まず,干潟の価値,保全の必要性に対する市の考えと,干潟保全の具体的取組について話を聞きました。
ここで,私たちの予想を良い意味で裏切ったのは,北九州市が(意外に?)干潟の重要性や保護の必要性を認識し,その保護に積極的に取り組んでいることでした。
若い担当者が,目を輝かせながら,生き生きと北九州市の取り組みを説明してくれました。いわく「過去の干拓を続けていると,自然環境と人間活動の共生は図れない」との観点から,これ以上の干潟の干拓を中止し,そして,側にある北九州空港の跡地についても曽根干潟の環境を意識した整備をすると熱く(外はめちゃくちゃ寒かったですが)「夢」を語ってくれました。
われわれは,良い意味で予測を裏切られました。
そうなると人間どんどん欲が出てくるもので,委員から,さらに上を行く要求がいくつも市の担当者に向けられました。
「ズグロカモメやカブトガニがウヨウヨいるというのは,たとえて言うならば,パンダやトラがひとつの場所にたくさんいるのと同じであり,わが国の中でも超1級の干潟であるから,北九州市は,もっともっと曽根干潟のことを市民にアピールすべきである。市の宣伝が足りない!」
「ラムサール条約登録についても,市民のコンセンサスが得られるよう地道にその意義について市民に訴えていくべきだ!」など,委員の要求はどんどん大きくなる一方でした。
これも,北九州市が一所懸命に干潟の保全に取り組んでおり,この人たちならまじめに取り組んでくれると思ったからでした。
私たちの要求は尽きることはなかったのですが,時間の関係で市役所をあとにすることになりました。
一歩外に出ると,すごい豪雪,途はつるつると滑るアイスバーン状態になっていました。
本来であれば,新幹線が運休するかもしれない不安があるので,さっさと博多に帰るべきなのですが,関門の「ふぐ」の魅力には逆らえず,われわれは,鹿児島本線を博多とは逆方向に進み,新年会をすることになりました。
このような状況下で,やっぱり福岡に帰ったほうが良いと言う意見を誰一人言い出さないのが不思議です。
腹いっぱい関門の幸を堪能した後,帰りは案の定,電車が動かず,停車したままの列車内で約1時間を過ごさねばなりませんでした。それでも,人間幸せなときは腹も立たないので,誰も文句を言いません。恐るべき「ふぐ」の威力です。
寒さを感じないのは,「ヒレ酒」の威力でしょう。
止まったままの列車の中でふと思いました。曽根干潟の開発中止のきっかけとなった諫早湾干拓事業がいまだに続いているのはどういうことでしょうね。
私のIT機器の買い方
月報記事
田上 尚志
思えば私が最初にコンピューターを買ったのは,1997年のことだった。ウィンドウズ98が出る少し前のことで,最初に買ったIBMのデスクトップ機だった。現在は自宅で3台目のデスクトップパソコンを使い,事務所では3代目のノートパソ\コンを使っている。この他,プリンターも買ったし,スキャナーも買った。タブレットも買ったし,CD−RもMOも外付けハードディスクも買った。
この私のコンピューター遍歴の中で,買って良かったと思ったもの,買わなきゃ良かったと思ったもの,いろいろある。そんな中で,少しばかりは買物が上手くなったのか最近はハズレはない。そこで,私なりのIT機器の選び方を紹介させて頂こうと思う。
まず,デスクトップ機だが,コンピューター好きの方なら遊んで楽しい。コンピューターグラフィックやゲームなどを楽しもうと思ったら,性能の良いデスクトップ機の方がノートパソ\コンよりも良いだろう。また,キーボードはデスクトップの方が明らかに打ちやすいので,疲れにくいのではないだろうか。
ノートパソコンを買う基準は,バッテリー駆動時間が長いこと,軽いこと,画面が見易いことの3つである。移動の際,ノートパソ\コンも持っていって出先で仕事をする。流石に喫茶店などで準備書面を書くわけにも行かないが,ITコラムの記事などなら空き時間で処理してしまえる。出先に必ずしも電源があるとは限らないので,バッテリー駆動時間は重要だ。また,ノートパソコンだけを持っていくわけではないので重いのはダメだ。できれば1キログラムを切るものが望ましい。あと,いくら軽くて小さいからといって,画面が見にくいと仕事がしづらい。できれば11.3インチ以上の画面が欲しい。
私がコンピューターを買うときは,一緒にコンピューターのディスプレイ用のフィルターを必ず買うことにしている。フィルターをつけるのとつけないのでは目の疲れが全く違う。私はフィルター無しだと1時間ほどで頭痛と吐き気がしてくるのだが,フィルターがあれば頭痛や吐き気に悩まされることもない。
CPUにはそれほど高度な処理能力はいらない。仕事で使うのはせいぜいワープロソ\フトや表計算ソ\フトである。CPUに一番不可をかけるのは実は子供がやるようなゲームであって,ワープロや表計算は実はコンピューターにとっては楽な仕事なのである。メモリーお金が許す限りたくさんあった方が良いが,ハードディスクは大きくなくてよい。私のコンピューターにはソ\フトがかなり入っているが,それでも10ギガバイトも使っていない。
プリンターは高いものを買った方が良いと思う。粒状感なく印刷できる写真画質プリンターを買えば,自宅で写真のカラーコピーもできる。また,去年A3まで印刷できるカラープリンターを買ったのだが,仕事でとても重宝している。とにかく,プリンターは少し張り込んだ方が良いだろう。
あるととても便利なのがスキャナーである。本や相手の準備書面を読み込んで引用したり,主張対照表を作ったり,キーボードでは打ち込めなくても,スキャナーで取り込めばOCRソ\フトで文字返還できる。
画像入りの資料はフロッピーディスクには入りきらないことも多いので,CD−RやDVDを焼けるようにしておいた方が何かと便利だ。そんなわけで,コンピューター本体,高性能プリンター,スキャナー,大規模記憶媒体が三種ならぬ四種の神器といったところ。これだけあれば最低限のSOHOにはなるだろう。
でも,羨ましいのは原田直子先生の赤いパソコン。あれって,いいよねえ。エレガントで。
最高裁判所弁論出席感想記
月報記事
松永 摂子
平成16年1月23日、上告中の刑事事件につき、最高裁判所で弁論が行われた。
最高裁の弁論に出席するというのは、おそらく最初で最後の貴重な経験。誰もが一度は行ってみたいであろう最高裁、その様子をちょっとだけお伝えしたい。
1 その前に、何で最高裁?
本件は、いわゆる路上生活者である被告人が、路上で自転車の前かご内にナイフを所持していたことから銃刀法違反で逮捕された、という単純な事案である。
単純とは言え、被告人にとって、ナイフは生活必需品。第1審弁護人(美奈川成章会員)は、無罪を主張して争っていた。
ところが、その後、予期せぬ事態に。裁判が進行するにつれ、論点整理ならぬ論点拡大の一途をたどり(訴因変更の可否、公訴権濫用、不告不理原則違反、控訴審における職権発動の限界、攻防対象論の妥当する範囲等々・・・)、とうとう最高裁で弁論が開かれる“大事件”へと発展していったのである。
2 いよいよ最高裁。
(1)最高裁は、弁論の準備に余念がない。弁護人は、美奈川成章会員、古賀康紀会員、船木誠一郎会員という錚々たるメンバーに、おまけのように私が加わっていたのだが、事前に、何名出席するのか、誰が弁論を述べるのか、法廷では上告趣意書に記載されたとおりの順番で着席せよ、弁論を述べる者は起立せよ、等々の確認・注意事項が満載である。しかも、なぜか私だけ登録期を尋ねられ、身辺調査(?)らしきことも。なかなかガードが固い。
(2)弁論が開かれたのは、第二小法廷。裁判官の背後に壁画のようなデザインが施された法廷を期待していたので、別のシンプルな法廷だと知った時の落胆は大きかったが、それでも、一面に引かれた絨毯はふかふか、天井の両側には間接照明が灯り、上品で落ち着いた雰囲気を醸し出しており、どこかの高級ホテルの会議室のよう。裁判関係者席は茶色の革張りで、正面の裁判官席方向を向いており、その座席の中央から左側にかけて、弁護人が指示されたとおりに着席する。ほどなくして、ベルボーイ(いえ、廷吏)が左側の扉から現れ、「チリン、チリン♪」と高尚なベルの音を響かせて「只今より開廷します。」と告げると、面前の観音開きの扉が自動で開き、裁判官4名がスルリと入廷された。もはや法廷ではなく、“劇場”といったところか。
難解な議論は大御所の先生方にお任せし、弁論を述べるという形式面を担当していた私は、ここで粗相があってはならないと、事前に読みの練習をしたのは言うまでもない。練習の甲斐あって無事終了し、あっという間に閉廷となった。
3 ところで被告人は・・・。
弁護人的には貴重な体験となったこの事件。が、当の被告人はというと、何で自分の事件が最高裁にまでいってしまうのか、困惑気味。ソインヘンコウ、フコクフリゲンソ\ク、コウボウタイショウロンなるものを説明しても、“ジュゲム ジュゲム ゴコウノスリキレ・・・”のようなもので、理解が得られそうにない。きっと、「そんなものはどうでもいいから、早く裁判を終わらせてくれ」というのが本音に違いない。