福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2004年2月号 月報

弁護士過疎地域への派遣支援について

月報記事

石渡 一史

 福岡県弁護士会は、地域司法計画の一環として、弁護士過疎地域を克服する事業を積極的に支援していくことを12月2日の常議員会で決議しました。

弁護士過疎地域の問題については、今回の常議員会決議を経て、具体的に支援事務所の募集を始めることになりました。そこで、本稿を借りて、改めて、弁護士過疎地域克服の今後の計画について、会員の皆様の積極的な参加を呼びかけたいと思います。

 福岡県弁護士会は、今後、直接、間接の支援事務所を募集し、地域司法計画に従って克服すべき弁護士過疎地域(当面の地域は、八女、柳川、田川ですが、この地域には限りません。)への派遣を2004年度以降、順次実施していく予定です。派遣する弁護士については、本人が希望すれば当該地域に定着することが望ましいのは当然ですが、実際には、2年ないし3年の期間を限定した派遣が中心となると思われます。

 福岡県弁護士会が計画している、弁護士過疎地域克服のための事業の柱となるのは、直接、間接の事業支援事務所ですので、この支援事務所の役割について説明したいと思います。

1 直接支援事務所が果たすべき役割は次のとおりです。
  1. 過疎地派遣希望の司法修習生を採用する。

    受入条件については、司法修習生と面接及び協議して、採用することになります。

  2. 派遣弁護士(派遣前)に対して研修を行う。

    一定期間、事件処理や事務所経営等 の研修を行わせることになります。

  3. 派遣弁護士(派遣中)の相談に応じる。

    事件について派遣弁護士の要請があれば相談に応じ、あるいは、共同受任することになります。

  4. 派遣弁護士(派遣後)の受入先となる。

    派遣弁護士が、派遣期間満了後に、直接支援事務所への復帰を希望した場合に、その受入先となることになります。

2 間接支援事務所が果たすべき役割は次のとおりです。
  1. 派遣弁護士就職前に、直接支援事務所が作成する一般的基準研修プログラムに沿って、研修段階で共同受任する事件の種類や数量、及び、設立後の協力体制について、協議する。
  2. 派遣弁護士(派遣前)に対する研修を、直接支援事務所と共同で行う。
  3. 派遣弁護士(派遣中)を支援する。

派遣弁護士から、事件処理について要請があれば、優先的に相談に応じ、あるいは、共同受任することになります。

 もっとも、ここで述べた役割というのはあくまでイメージであり、それぞれの法律事務所が、この計画とは別に独自の構想で、弁護士過疎地域に法律事務所を開設することを妨げるものでないことはいうまでもありません。

また、以前、寄稿した際にも述べたように、ルールに基ずく社会が、地域のすみずみに行き渡るようにしたいというのが、地域司法計画の重要な柱の一つです。また、これによってリーガルサービスセンターに頼らずに公的弁護制度等、新しい改革の試みも実現していくことができるものと考えます。重ねて会員の皆様が本事業の意義を理解され、積極的に支援事務所として名乗りを挙げられることを希望するものです。

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