福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2004年2月号 月報
ちょっとだけIT病
月報記事
堀 良一
コンピュータは,わたしの体の一部である。
年々衰えていくわたしの大脳の機能は,次々にノートパソ\コンのCPUとハードディスクによって置き換えられている。
訟廷日誌はとっくの昔に捨てられ,ポケットには電子手帳のクリエが収まっている。携帯はもちろん肌身離さず持ち歩いている。
打ち合わせも相談も全部ノートパソコンでメモを取るし,スケジュールはクリエだし,ペンを使って文字を書くことは,署名以外では法廷で証言をメモるときくらいだ。そのため,ワープロ専用機時代から進んでいた「漢字が書けない病」は,ほぼ極限にまで達している。仮名を書くときも,もたもたして時間がかかる。わたしの書いた字は,もはや,わたしを担当する事務員にも読めない。
最近は,小説やコミックも,かなりパソコンやクリエで見るようになった。カバンのなかに入れているiPODには2000曲近くの音楽が入っていて,自宅のCDライブラリをほぼ持ち歩いていることになる。音楽はクリエからでも聴いている。
メールやネットは,ノートパソコンがメインだが,自宅や事務所のデスクトップからも,携帯からでもクリエからでも頻繁にアクセスしている。わたし宛のメールは,睡眠中と尋問中を除けば,どこにいようと,ほぼ30分から40分程度で確実にわたしに届く。
メーリングリストも自分が開設したものだけで7つあるから,メールは1日に100通前後届く。書いているメールの分量もかなりになる。
担当している集団事件では,もちろんメーリングリストを開設して,20名くらいの弁護団員が議論したり,情報を交換したり,書面の検討をしたりしている。相手方から提出された書面はスキャナで読み込んでOCRにかけ,ワードやPDFのファイルにして,こちらが提出した書面や資料といっしょに,ウェブ上のオンラインストレージにアップして,全員で共有している。いまや,この集団事件の弁護団員はパソコンなしにはついてこれない。
先日,弁護士会の委員会で出かけたモロッコ旅行の際には,毎晩,その日にデジカメで撮った静止画や動画をつなぎ合わせ,BGMをつけて,ムービーファイルを作っていた。海外でもホテルからネットに接続して,日本の情報をチェックし,メールを読み,気が向いたらメールを書いている。モロッコの地方都市のホテルは外線がホテルの交換を通すという古いシステムのままのところがあってネット接続ができず,おかげでその日は早寝ができた。携帯用のスピーカーも旅行カバンに入れているから,ほぼ自宅と同じ環境で音楽も楽しんだ。
西にフリーズしたパソコンがあれば,飛んでいって,あれこれ原因を究明してあげたい。東にパソ\コンを購入しようとしている人がいれば,いっしょにパソコンショップにでかけて悩みを共有してあげたい。
まだパソコンに変身した夢をみたことはないが,最近,ちょっとだけIT病が進行中であるという自覚はある。