福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2003年5月号 月報

「止めよう住基ネット・住基カード」シンポジウム開催

月報記事

永田一志

皆さん、「住基ネット」という言葉を覚えておられるでしょうか。昨年の8月頃、皆さんの家に葉書で「住民票コード」(11桁の番号)なるものが送られて来ましたよね。そのころ、横浜市が住基ネットから離脱するとか、どこそこの町がつながないと決めたとか言う話が新聞やテレビ等で流されていたことをご記憶の方が多いと思います。

ただ、その後新聞もほとんど取り上げなくなり、テレビでこの問題を見ることも皆無と言っていい状態になって、皆さんも「住民票コード?」、そう言えばそんなものが来たな、でも番号なんか覚えてもいないし、何も変わっていないみたいだし、という感覚になっておられるのではないでしょうか。

ところがどっこい、この問題はまだ終わっていなかったのです。昨年稼働した住基ネットは、本来の住基ネットの一部でしかなかったのです。それが、今年8月に全面的(本格的)稼働となるのです。どういうことかと言うと、昨年8月に稼働を始めたのは、住民票に付随する個人情報を、住民票を管理する市町村から県へ、県から地方自治情報センターへ、地方自治情報センターから国の機関へコンピュータ回線で流していくという、いわば縦のラインだけでした。それが、今年の8月に「住基カード」という個人情報を載せたカードを発行することにより、一つの市町村から他の市町村へという、いわば横のラインでもコンピュータ回線で個人情報が流されるようになるのです。昨年動き出した縦のラインと今年動き出す横のラインの両方がそろって、「ネット」が完成するわけです。

しかし、縦横で情報が流れるようになれば、個人情報が流出の危険がより高くなります。また住基カードには国が決めた情報の他、発行する市町村が決めた情報を載せることができるようになっていますが、たくさんの情報を載せれば載せるほど、利便性は高まりますが、(カードからの)個人情報流出の危険性も高くなります。また、個人情報の名寄せはできないことにはなっていますが、それが行われない保証もありません。これら個人情報の流出や名寄せに対する防止策はどうでしょうか。今年再提出された個人情報保護法案(この原稿を書いている時点では衆議院で審議中ですが)も民に厳しく官に甘いといわれる基本的な問題点は改善されていないようです。また、実際の現場でのセキュリティー管理もとても十分とは言えません。(人口何千人の村にもネットにつながった端末がありますが、それを村の予\算で管理するのが非常に難しいことは想像に難くないでしょう。)

そこで、この危険な「住基ネット」を何とか停止すべく、昨年から引き続き活動をしていますが、その一環として、去る3月28日に中央市民センターでシンポジウムを開催しました。マスコミの無関心さに比例するようにとまでは行きませんが、昨年のシンポよりも少ない参加者となってしまいました。しかし、パネリストを初め、熱い議論・意見が出され、参加者の情熱は失われていないことが分かりました。今後も、住基ネットの稼働停止に向けて、再度のシンポ等を企画していますので、皆さんも是非参加、ご協力下さい。

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